大井川 支流 聖沢
聖沢大滝

所在地 | 静岡県静岡市
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---|---|
お勧め度 | ★★★★★ |
難易度 | ◆◆◆◆◆ |
訪問日 | 2025/06/12 |
2025年06月12日
今回のメンバーはえだ2さんとフグさんと私の計3人。
”セイ”と聞けば、『聖』ではなく『性』を浮かべてしまう”邪”なメンバーが集まってしまって、はたして聖沢へ挑んで良いものか、いささか疑問に思いつつのアタックです。
おっとちょっと否定しておきますね。滝に対しての気持ちは清らかですよ。他は全部アカンけど。
この滝に会うまでは大変です。決して簡単ではありません。非常に疲れましたよ、本当に。
とにかく長い。その一言です。
アプローチの起点は畑ナギ第一ダムの奥にある沼平ゲート前から。
ここには15台くらいは駐車出来るスペースがあるので安心です。
しかし山奥ゆえに電波があるか不安だったので、みんなとの集合は確実に電波のある「道の駅音戯」に集合しました。
不測の事態が起きた際に、連絡取れないのは不安ですからね。
結果的にはこのゲート前はドコモの電波はバッチリ入ってました(auは圏外)。
「道の駅音戯」、まだ暗い3時に集合して、出発。
沼平ゲート前まで車を走らせますが、この林道、とにかく長すぎる。40kmほどずっとウネウネと細い道を走らされるので朝っぱらから1時間20分くらい運転させられ気が滅入りました。
静岡の南アルプスは本当にスケールが大きすぎる。
長くて大きいのはイチモツだけで十分だとある主婦が語っていたけど本当だね。
林道とスカートは短い方がいい、これは正しく格言ですよ。
空がしっかり明るくなった頃、沼平ゲート前の駐車場から出発です。
まずは登山口まで15kmほど進みます。
おおお、さっそくとんでもない距離が示されましたね。
こんな距離、徒歩ではキツすぎます。
なので自転車が絶対必要でしょう。
余談ですが、このダム湖沿いの道を進む登山には自転車以外にも向かう方法があります。
椹島の山小屋に宿泊する方は、バスを利用出来るようです。ガッツリ登山するのであれば、荷物も重いでしょうから宿泊予約して楽した方が良いと思います。
とりあえず私達は聖沢大滝までの日帰り往復なので自力で頑張ります。
ゲートの脇から自転車を通して、漕ぎまくります。
路面はずっとアスファルトなので進みやすいのは有り難い。さすがに平坦ではないのでアップダウンはあります。
自転車押して登ったり、ブイーっと下ったりの繰り返し。
そんな風に自転車のハンドルを握ってるとついつい浮かんでくるフレーズが二つ。
下りの時はゆずの曲の「この長い長い下り坂を────ゆっくりゆっくり下ってゆく」を口ずさむ。
そして登りの時には「耳をすませば」のラスト、天沢聖二のセリフで「大丈夫だ。お前を乗せて坂道のぼるって、決めたんだ!」と月島雫を後ろに乗せて頑張る姿を思い出す。
雫が「ずるい」と言って自転車を押すのもキュンと来るよね。にやけちゃう青春を羨ましく思うよ。
そうだ、思い出した。
まだ「耳をすませば」が上映される前の高校の頃。
あの時、僕は可愛い後輩の娘を後ろに乗せて、自転車で2人乗りしてたんだ。
そして坂道に差し掛かった。
ここを登れればカッコいいな、いっちょ良いトコ見せたりますかと気合いを入れた。
「下りましょうか?」後輩娘は登りに入る前に気を遣って言ってくれた。ええ子やないか。
「いや、大丈夫! 登りきるから!」
カッコつけたぜぇ。男前やでと自分に酔ってる。
オラオラと太腿に力を入れまくって漕ぎまくる。グッとスピードを上げて坂道を登り始める。この勢いならいけるぜ!
しかし、坂道は予想よりも長く、傾斜もキツい。徐々に落ちていくスピード。
あれ? イメージと違うぞと焦る。
中腹まで来た辺りで、もうスピードはゼロに近い。ちょっとフラついてるし。でも絶対に止まらないと意地になった。
そんな苦しい背中を見ている後輩娘から声が掛かった。
「やっぱり・・・下りましょうか?」
「────いや」
それを言うのが精一杯。
だってここで下ろさせたら、私が重いからダメだったのかなとか傷つけてしまう可能性があるではないか。
だから踏ん張った。そしてペダルを踏みつける。
顔が熱く、太腿がプルプルしてきた。
「やっぱ、下りて」
「あ、はい・・・」
そして気まずい空気が流れた。
────
青春だなぁ、ダサい青春だよ。
教訓、無理をしない、カッコつけるとカッコ悪いって事を学んだ瞬間だった。
そんな感傷にふけりながらも長い道中は続いていく。
登りでは天沢聖二となって「坂道のぼる!」と踏ん張って、でもすぐに駄目になって歩いて。
下りは「ブレーキいっぱい握りしめて~」と言いつつ、ゆっくりゆっくりなんかしないで猛烈なスピードを下る。その方が距離を稼げるからね。
14km辺りで赤石ダムが見えた。ここまでくればもう少し。
最後の登りは月島雫に押して貰いたいくらい疲れてたけど、坂道を自力で自転車押して上がっていった。
そして、左手に登山道の案内が現れて、ここで自転車の旅がようやく終わった。
ゲート前から2時間10分を消費していた。自転車でこれですからね。歩きなら途方もないっすわ。電動アシスト自転車が欲しいと切に願う。
ここからは登山道、その後は沢登りが待ってる。
漕いで、登って、遡るって、これってもうトライアスロンの領域じゃないかね。ハードな事やってるわと我ながら感心。
百名山の聖岳に向かう登山道だけあって、道は明確。
ただし、序盤は急勾配でしんどい登りだ。
そんな苦しい登りを30分ほど耐えると、平坦となり歩きやすくなる。
この辺りは快適な歩みなので、トークが弾んで楽しかった。
沢の音が大きくなって、グラグラな吊り橋を渡ると聖沢との出合いとなる。
滝まであと少し。あとは聖沢を遡行するだけだ。その距離500m程。漕いで歩いてきた道のりからすれば、ほんのちょっとの距離だ。
しかししかし、ここで不安が悪い方で的中となる。
それは前日の雨の影響。
前日に私が訪れた、猿棚の滝を見て欲しい。
この滝は渇水期には枯れ滝となるくらい水量が少ない滝なのだが、それが暴れるような猛烈な水量をたたき落としていたのだ。
それだけ猛烈な雨が降っていたら聖沢も増水しているのではないか、それは確かに不安ではあった。
でもね、自転車15km、登山道を1時間歩いて電波の全く入らない遠い地まで川の上流に来たのだから、ここならもう水量は落ち着いているかと期待していました。
それはとんでもない。
濁ってはいないものの、うねるような弾けるような流れに増水中であるのはよく分かった。
とりあえず右岸上は歩き易いので、沢に近付かないでも上流へと進んで行けた。
300mは進んだろうか、すると沢の奥に聖沢大滝が見えた。
おおお! デカいし、太いし、勇ましい! 素敵だ!(by 30代主婦)
遠目からでもその存在感は肌に感じられる。凄まじいパワーだ。
しかし近目にある景色にも慄くものがある。
そこは岩盤と岩盤に挟まれてスポーツジムで鍛えた主婦のウエストのようにグッと狭くなった箇所で、そこに剥き出しの白煙を放出しながら猛烈な勢いで水が駈けているではないか。
ここから先は沢の中に入らないと進めない。
先人のレポでは聖沢の遡行については何も書かれてない事から、特に難所がないのであろう。
右岸から左岸へ、対岸に渡らないとこの先へは進めない。というか対岸なら簡単に進むことが出来る。
平時であれは穏やかな沢に足をつけてジャブジャブと渡れば良い。
今日の具合は違う。猛牛だ。鼻息が荒過ぎる。
沢の中に足を入れたら、柔道家と対戦した時のように簡単に足払いされて倒されるのが目に見えている。 全く渡れる気がしない。
ここが今日のゴール。そう諦めるしかないか。
悔しいのは当然。でも滝前に行けない事ではなく、選択を誤った事に悔いが残る。
昨日からの豪雨で、この聖沢もモロに影響を受けているのは想像に容易い。
遡行出来なくて近寄れないかも知れないってのは、行く前から不安を抱いていた。
何とかなるんじゃないのと甘い見積もりで挑んでしまったのが良くない。
スパっと目指す滝を変えて、普段は水量少ない滝をチョイスするのがベストだった。
それも頭によぎってはいたが、その代替案が見つからなかった。
敗因はリサーチ不足。それが凄く悔しかったし、お二人に申し訳無かった。
しかししかし、それで諦める聖いメンバーではない。足掻くだけ足掻く。
それが3人の共通意見だ。
対岸に渡るのは不可能だけど、右岸の高巻きには可能性が残っている。
地形図を見るとグッと等高線は詰まってるけど、滝の手前にある取水堰堤に向かうようにルンゼが伸びている。
もしもそこまで行ければ、沢には近付かずに滝に接近出来るかも知れない。
いざチャレンジ開始です。
(ここからの足取りは、平時ならまるで意味のない行程になりますが、備忘録として書込みます)
目の前に見える右岸の岩壁の上に乗る事を目指す。
現れたの5m程の岩の亀裂。ここを登れれば視界が広がるかも知れない。
私は高さに躊躇したが、えだ2さんがあっさり突破。
するとその上には獣道が見えた(フンもあった)。
鹿さんが水を求めて歩いている道なのだろうから、とりあえずそれを登ってみる事にした。
そして溝が現れて、これがルンゼかと思ったけど取水堰堤よりも手前で下ろされてしまいそうなので、もう少しトラバースを継続。
その後に現れた傾斜のキツい砂利の窪みと細尾根。良い角度で下っていて堰堤の上に出れるのが見えた。
かなりの傾斜で足だけでは下りていけない危うさであり竦むものがある。
もうここしか下降ポイントはない。そして行けると選択した。
それは3人同じ意見であったが、やはり物怖じしてしまう。
しかしえだ2さんとフグさんの勢いは強い。その細尾根に伸びている立ち木をうまく利用して、確実に堰堤へと降りていく。
この人らには恐怖ってないんかな? むしろそれを楽しんでいるかのよう。
自分で道を探すときは確かに楽しいけど、この斜面は楽しめなかった。
様子を見ながらと2人は徐々に下りていくと共にルートが構築されていく。
そして無事に堰堤上に着地。見事な選択に天晴れです。マジすげー。
本来の沢登りで来れば、この堰堤上までに小滝の突破が強いられる。
小滝を直登するか、右岸にある残置ロープを利用して越えるかの二択となっている。
その残置ロープが朽ちていたら難儀するだろうなと想像していましたが、既に小滝上にいるので難所はカットした事になる。
もしも今後行かれる方が、その小滝越えが難しかった際は、この右岸高巻きルートであれば何とかなります。
ま、このルートで堰堤上に行ける技術力がある方なら、小滝も突破出来ると思いますけどね。
堰堤上から脇の堤体を利用すると、右岸の大滝手前まで来れた。
ここから、滝を真正面に捉えるには左岸の広場がベストであり、つまりは対岸へと渡渉する必要がある。 そう、やはり渡渉なんだ。
岩飛びで行けるか、堤体から下りて滝前(小垂)まで近づいてみた。
5m進めば対岸だ。たった5m。
それが無理だった。流されるビジョンが浮かぶ。消し去れない。
そこが限界だった。
ここまで片道(自転車込み)17km来たのだ。なのにあとたった5mが進めない。
それを割合にすると、99.97パーセントは達成したのに、0.03パーセントだけが残った事になる。
距離からすれば本当にほんのちょっと。なのに敗北感がハンパない。
今回の行程は、お二人の変態プレイのお陰で100点の歩みだった。しかし、それでも満点ではない。
そもそもの名前を書き間違えていたのと一緒かな。
もっともっと滝を調べよう。この悔しさと選択の誤りを二度と繰り返さないよう色んな想定を検討しなければならない。
この想いは、バイオリン職人になるとイタリアに渡った天沢聖司と同じくらい熱いのだ。
そして月島雫という素敵な女性と同じくらい素敵な滝に出逢う為に頑張るんだ。
そう誓った次第です。
帰路の細尾根の登りは怖かったなぁ。変態のお二人はサクサク登っていたけど、油断したら死ねる高度に体がうまく動かなかった。
年々、怖さが増している自分を情けなく思うよ。
高巻きを終えれば、すぐに登山道。
サクサクと歩み、あとは自転車走行。
登りの時には天沢聖司を思い出してグッと力を入れて漕ぐが、もう体力が残っていない。 早々に下りて、押して進んだ。
それでも帰りの方が下りが多いので、スピード出てる時は気持ち良くて爽快だったかな。
ちなみに道路には工事している方々が沢山いたけど、皆さん我々に気を配ってくれて、邪険にされなかったのが有り難った。
そしてゲート前に到着。お疲れ様でした~。
来年、また頑張るかな。ちゃんとリサーチしよう、体を鍛えよう。滝前でハイタッチしたいね。来年もよろしくお願いします。
・
・
・
さてさて、勘の鋭い方は読んでて気付いただろうか?
なぜ、「耳をすませば」を引用したのか?
それはね、主人公の名前には、『聖沢』が入っているからさ!
天沢聖二、ほらね!
ただそれを使いたかっただけなので、自転車漕いでる時に登りきってやるなんて毛頭も思っておりません。
嘘でした(笑)
でも後輩に「やっぱ、下りて」って言ったのは本当だよ。悲しいね!
”セイ”と聞けば、『聖』ではなく『性』を浮かべてしまう”邪”なメンバーが集まってしまって、はたして聖沢へ挑んで良いものか、いささか疑問に思いつつのアタックです。
おっとちょっと否定しておきますね。滝に対しての気持ちは清らかですよ。他は全部アカンけど。
この滝に会うまでは大変です。決して簡単ではありません。非常に疲れましたよ、本当に。
とにかく長い。その一言です。
アプローチの起点は畑ナギ第一ダムの奥にある沼平ゲート前から。
ここには15台くらいは駐車出来るスペースがあるので安心です。
しかし山奥ゆえに電波があるか不安だったので、みんなとの集合は確実に電波のある「道の駅音戯」に集合しました。
不測の事態が起きた際に、連絡取れないのは不安ですからね。
結果的にはこのゲート前はドコモの電波はバッチリ入ってました(auは圏外)。
「道の駅音戯」、まだ暗い3時に集合して、出発。
沼平ゲート前まで車を走らせますが、この林道、とにかく長すぎる。40kmほどずっとウネウネと細い道を走らされるので朝っぱらから1時間20分くらい運転させられ気が滅入りました。
静岡の南アルプスは本当にスケールが大きすぎる。
長くて大きいのはイチモツだけで十分だとある主婦が語っていたけど本当だね。
林道とスカートは短い方がいい、これは正しく格言ですよ。
空がしっかり明るくなった頃、沼平ゲート前の駐車場から出発です。
まずは登山口まで15kmほど進みます。
おおお、さっそくとんでもない距離が示されましたね。
こんな距離、徒歩ではキツすぎます。
なので自転車が絶対必要でしょう。
余談ですが、このダム湖沿いの道を進む登山には自転車以外にも向かう方法があります。
椹島の山小屋に宿泊する方は、バスを利用出来るようです。ガッツリ登山するのであれば、荷物も重いでしょうから宿泊予約して楽した方が良いと思います。
とりあえず私達は聖沢大滝までの日帰り往復なので自力で頑張ります。
ゲートの脇から自転車を通して、漕ぎまくります。
路面はずっとアスファルトなので進みやすいのは有り難い。さすがに平坦ではないのでアップダウンはあります。
自転車押して登ったり、ブイーっと下ったりの繰り返し。
そんな風に自転車のハンドルを握ってるとついつい浮かんでくるフレーズが二つ。
下りの時はゆずの曲の「この長い長い下り坂を────ゆっくりゆっくり下ってゆく」を口ずさむ。
そして登りの時には「耳をすませば」のラスト、天沢聖二のセリフで「大丈夫だ。お前を乗せて坂道のぼるって、決めたんだ!」と月島雫を後ろに乗せて頑張る姿を思い出す。
雫が「ずるい」と言って自転車を押すのもキュンと来るよね。にやけちゃう青春を羨ましく思うよ。
そうだ、思い出した。
まだ「耳をすませば」が上映される前の高校の頃。
あの時、僕は可愛い後輩の娘を後ろに乗せて、自転車で2人乗りしてたんだ。
そして坂道に差し掛かった。
ここを登れればカッコいいな、いっちょ良いトコ見せたりますかと気合いを入れた。
「下りましょうか?」後輩娘は登りに入る前に気を遣って言ってくれた。ええ子やないか。
「いや、大丈夫! 登りきるから!」
カッコつけたぜぇ。男前やでと自分に酔ってる。
オラオラと太腿に力を入れまくって漕ぎまくる。グッとスピードを上げて坂道を登り始める。この勢いならいけるぜ!
しかし、坂道は予想よりも長く、傾斜もキツい。徐々に落ちていくスピード。
あれ? イメージと違うぞと焦る。
中腹まで来た辺りで、もうスピードはゼロに近い。ちょっとフラついてるし。でも絶対に止まらないと意地になった。
そんな苦しい背中を見ている後輩娘から声が掛かった。
「やっぱり・・・下りましょうか?」
「────いや」
それを言うのが精一杯。
だってここで下ろさせたら、私が重いからダメだったのかなとか傷つけてしまう可能性があるではないか。
だから踏ん張った。そしてペダルを踏みつける。
顔が熱く、太腿がプルプルしてきた。
「やっぱ、下りて」
「あ、はい・・・」
そして気まずい空気が流れた。
────
青春だなぁ、ダサい青春だよ。
教訓、無理をしない、カッコつけるとカッコ悪いって事を学んだ瞬間だった。
そんな感傷にふけりながらも長い道中は続いていく。
登りでは天沢聖二となって「坂道のぼる!」と踏ん張って、でもすぐに駄目になって歩いて。
下りは「ブレーキいっぱい握りしめて~」と言いつつ、ゆっくりゆっくりなんかしないで猛烈なスピードを下る。その方が距離を稼げるからね。
14km辺りで赤石ダムが見えた。ここまでくればもう少し。
最後の登りは月島雫に押して貰いたいくらい疲れてたけど、坂道を自力で自転車押して上がっていった。
そして、左手に登山道の案内が現れて、ここで自転車の旅がようやく終わった。
ゲート前から2時間10分を消費していた。自転車でこれですからね。歩きなら途方もないっすわ。電動アシスト自転車が欲しいと切に願う。
ここからは登山道、その後は沢登りが待ってる。
漕いで、登って、遡るって、これってもうトライアスロンの領域じゃないかね。ハードな事やってるわと我ながら感心。
百名山の聖岳に向かう登山道だけあって、道は明確。
ただし、序盤は急勾配でしんどい登りだ。
そんな苦しい登りを30分ほど耐えると、平坦となり歩きやすくなる。
この辺りは快適な歩みなので、トークが弾んで楽しかった。
沢の音が大きくなって、グラグラな吊り橋を渡ると聖沢との出合いとなる。
滝まであと少し。あとは聖沢を遡行するだけだ。その距離500m程。漕いで歩いてきた道のりからすれば、ほんのちょっとの距離だ。
しかししかし、ここで不安が悪い方で的中となる。
それは前日の雨の影響。
前日に私が訪れた、猿棚の滝を見て欲しい。
この滝は渇水期には枯れ滝となるくらい水量が少ない滝なのだが、それが暴れるような猛烈な水量をたたき落としていたのだ。
それだけ猛烈な雨が降っていたら聖沢も増水しているのではないか、それは確かに不安ではあった。
でもね、自転車15km、登山道を1時間歩いて電波の全く入らない遠い地まで川の上流に来たのだから、ここならもう水量は落ち着いているかと期待していました。
それはとんでもない。
濁ってはいないものの、うねるような弾けるような流れに増水中であるのはよく分かった。
とりあえず右岸上は歩き易いので、沢に近付かないでも上流へと進んで行けた。
300mは進んだろうか、すると沢の奥に聖沢大滝が見えた。
おおお! デカいし、太いし、勇ましい! 素敵だ!(by 30代主婦)
遠目からでもその存在感は肌に感じられる。凄まじいパワーだ。
しかし近目にある景色にも慄くものがある。
そこは岩盤と岩盤に挟まれてスポーツジムで鍛えた主婦のウエストのようにグッと狭くなった箇所で、そこに剥き出しの白煙を放出しながら猛烈な勢いで水が駈けているではないか。
ここから先は沢の中に入らないと進めない。
先人のレポでは聖沢の遡行については何も書かれてない事から、特に難所がないのであろう。
右岸から左岸へ、対岸に渡らないとこの先へは進めない。というか対岸なら簡単に進むことが出来る。
平時であれは穏やかな沢に足をつけてジャブジャブと渡れば良い。
今日の具合は違う。猛牛だ。鼻息が荒過ぎる。
沢の中に足を入れたら、柔道家と対戦した時のように簡単に足払いされて倒されるのが目に見えている。 全く渡れる気がしない。
ここが今日のゴール。そう諦めるしかないか。
悔しいのは当然。でも滝前に行けない事ではなく、選択を誤った事に悔いが残る。
昨日からの豪雨で、この聖沢もモロに影響を受けているのは想像に容易い。
遡行出来なくて近寄れないかも知れないってのは、行く前から不安を抱いていた。
何とかなるんじゃないのと甘い見積もりで挑んでしまったのが良くない。
スパっと目指す滝を変えて、普段は水量少ない滝をチョイスするのがベストだった。
それも頭によぎってはいたが、その代替案が見つからなかった。
敗因はリサーチ不足。それが凄く悔しかったし、お二人に申し訳無かった。
しかししかし、それで諦める聖いメンバーではない。足掻くだけ足掻く。
それが3人の共通意見だ。
対岸に渡るのは不可能だけど、右岸の高巻きには可能性が残っている。
地形図を見るとグッと等高線は詰まってるけど、滝の手前にある取水堰堤に向かうようにルンゼが伸びている。
もしもそこまで行ければ、沢には近付かずに滝に接近出来るかも知れない。
いざチャレンジ開始です。
(ここからの足取りは、平時ならまるで意味のない行程になりますが、備忘録として書込みます)
目の前に見える右岸の岩壁の上に乗る事を目指す。
現れたの5m程の岩の亀裂。ここを登れれば視界が広がるかも知れない。
私は高さに躊躇したが、えだ2さんがあっさり突破。
するとその上には獣道が見えた(フンもあった)。
鹿さんが水を求めて歩いている道なのだろうから、とりあえずそれを登ってみる事にした。
そして溝が現れて、これがルンゼかと思ったけど取水堰堤よりも手前で下ろされてしまいそうなので、もう少しトラバースを継続。
その後に現れた傾斜のキツい砂利の窪みと細尾根。良い角度で下っていて堰堤の上に出れるのが見えた。
かなりの傾斜で足だけでは下りていけない危うさであり竦むものがある。
もうここしか下降ポイントはない。そして行けると選択した。
それは3人同じ意見であったが、やはり物怖じしてしまう。
しかしえだ2さんとフグさんの勢いは強い。その細尾根に伸びている立ち木をうまく利用して、確実に堰堤へと降りていく。
この人らには恐怖ってないんかな? むしろそれを楽しんでいるかのよう。
自分で道を探すときは確かに楽しいけど、この斜面は楽しめなかった。
様子を見ながらと2人は徐々に下りていくと共にルートが構築されていく。
そして無事に堰堤上に着地。見事な選択に天晴れです。マジすげー。
本来の沢登りで来れば、この堰堤上までに小滝の突破が強いられる。
小滝を直登するか、右岸にある残置ロープを利用して越えるかの二択となっている。
その残置ロープが朽ちていたら難儀するだろうなと想像していましたが、既に小滝上にいるので難所はカットした事になる。
もしも今後行かれる方が、その小滝越えが難しかった際は、この右岸高巻きルートであれば何とかなります。
ま、このルートで堰堤上に行ける技術力がある方なら、小滝も突破出来ると思いますけどね。
堰堤上から脇の堤体を利用すると、右岸の大滝手前まで来れた。
ここから、滝を真正面に捉えるには左岸の広場がベストであり、つまりは対岸へと渡渉する必要がある。 そう、やはり渡渉なんだ。
岩飛びで行けるか、堤体から下りて滝前(小垂)まで近づいてみた。
5m進めば対岸だ。たった5m。
それが無理だった。流されるビジョンが浮かぶ。消し去れない。
そこが限界だった。
ここまで片道(自転車込み)17km来たのだ。なのにあとたった5mが進めない。
それを割合にすると、99.97パーセントは達成したのに、0.03パーセントだけが残った事になる。
距離からすれば本当にほんのちょっと。なのに敗北感がハンパない。
今回の行程は、お二人の変態プレイのお陰で100点の歩みだった。しかし、それでも満点ではない。
そもそもの名前を書き間違えていたのと一緒かな。
もっともっと滝を調べよう。この悔しさと選択の誤りを二度と繰り返さないよう色んな想定を検討しなければならない。
この想いは、バイオリン職人になるとイタリアに渡った天沢聖司と同じくらい熱いのだ。
そして月島雫という素敵な女性と同じくらい素敵な滝に出逢う為に頑張るんだ。
そう誓った次第です。
帰路の細尾根の登りは怖かったなぁ。変態のお二人はサクサク登っていたけど、油断したら死ねる高度に体がうまく動かなかった。
年々、怖さが増している自分を情けなく思うよ。
高巻きを終えれば、すぐに登山道。
サクサクと歩み、あとは自転車走行。
登りの時には天沢聖司を思い出してグッと力を入れて漕ぐが、もう体力が残っていない。 早々に下りて、押して進んだ。
それでも帰りの方が下りが多いので、スピード出てる時は気持ち良くて爽快だったかな。
ちなみに道路には工事している方々が沢山いたけど、皆さん我々に気を配ってくれて、邪険にされなかったのが有り難った。
そしてゲート前に到着。お疲れ様でした~。
来年、また頑張るかな。ちゃんとリサーチしよう、体を鍛えよう。滝前でハイタッチしたいね。来年もよろしくお願いします。
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さてさて、勘の鋭い方は読んでて気付いただろうか?
なぜ、「耳をすませば」を引用したのか?
それはね、主人公の名前には、『聖沢』が入っているからさ!
天沢聖二、ほらね!
ただそれを使いたかっただけなので、自転車漕いでる時に登りきってやるなんて毛頭も思っておりません。
嘘でした(笑)
でも後輩に「やっぱ、下りて」って言ったのは本当だよ。悲しいね!
5:00 沼平ゲート前 出発
7:10 登山口 到着
8:40 聖沢吊橋
11:20 取水提上
12:10 出発
15:10 登山口
16:15 沼平ゲート前 到着
7:10 登山口 到着
8:40 聖沢吊橋
11:20 取水提上
12:10 出発
15:10 登山口
16:15 沼平ゲート前 到着