滝百選を終えて


父は、登山が好きで、私も子供の頃に2〜3回一緒に山に登った。
その頂上で食べた母のおにぎりが、何時も食べているおにぎりよりも数段おいしかった。
自然の中で食べるのは、これ程に美味しいものかと感動を覚えた。
だから私は山に対して抵抗はなく、むしろ好意的だった。
小学生の頃に、修学旅行で華厳の滝を訪れたときに
水飛沫の凄さに驚いたのを覚えている。それが私の人生初の滝との出会いだ。
年月が過ぎて、バイクが友になった頃、
行き先を探していた所に見つけたのが、滝だった。
全国至る所にあり、行くまでの道中も楽しい。
最初、滝とはあくまでもバイクを楽しむ為の目的地だった。
いつごろからか、滝の魅力がバイクを越えていく。
辛いときや、精神的に落ち着かないときに、滝の目の前に立つと
不思議と気持ちが安らぐことを学んだからだろうか。
やがて滝を求める為に、私はバイクに乗るようになった。
ある時、図書館に訪れた所、グリーンルネッサンス発行の
「日本滝百選」という本を見つけた。
百名山があるのは知っていたが、まさか滝にも百選があるとは知らず、
そこで全国にある勇ましい滝や、美しい滝を写真で目にし、
「是非、行ってみたい」という欲望に駆られた。
友人とのバイクのツーリングの合間に滝を見たり、
百選を我が目に収める為に全国を飛ぶようになる。
その滝を写真に収め、それを入れるファイルを買った。
写真が合計百枚入るファイル。
「これが埋まるのはいつかな? 20代の内に一杯になればいいな」
気軽に、適当に、まあ全部入る前に飽きてしまうだろう何て、
安直な気持ちで収集を始めた。
そのファイルを作成したのは20歳の頃。
9年の年月をかけて、そのファイルは百選の滝で埋まった。
29歳と9ヶ月。本当に20代で制覇してしまった。
無邪気な遊び感覚で始めた趣味は、人生の歩みの一部となった。
それまでの歩み、決して楽ではなかったが、
苦しいとか、嫌だとか思ったことは一度もなかった。
根底、滝の魅力に取り付かれている私が居たからであろう。
滝に間接して、学んだことは数知れない。
双門の滝では、遭難をして死を想像し絶望と恐怖を味わった。
諦め掛けた時、妻からプレゼントで貰った腕時計を見つめて
気力を奮い立たせ、一人ではないことの有り難さと、温もりと、
絶対に帰ると言う強い意思を身に付けた。
松見の滝では、飲料水がなくなり、
我を忘れて葉に溜まっている雫を吸ってしまうほどに、
生に対しての本能の強さを教わると共に、
準備の大切さ、下調べの大事さを体で学んだ。
自分よりも大きな岩を見ては、自分の小ささに打ちのめされ、
しかしそれを乗り越える道があることに人間の知恵と強さを知った。
滝は、私の人生の師匠と崇める。
自然の寛大さと厳しさ、自然の強大な力は、私の活力になる。
私は滝と出会うことにより、日々のストレスを昇華し、内にパワーを溜める。
これからも私の人生の中に、滝はすぐ隣にいるだろう。
百選、最後の滝、四国の「御来光の滝」に出会い達成したときに
出てきた思いは「次はどこに行こう?
」だった。
たとえ制覇しても、終わりではない。
私はこれからも滝と出会い続けるだろう。
友人に会うように。

2006年8月 作成

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