冬は仕事が忙しいし、滝も水量少なく緑もなくて元気ないし、氷瀑は自分のコンセプトとはちょっと違うって分かったので今年の冬は完全に引きこもりました。
そんな矢先、息子の元にサンタさんがSwitchのゲーム「スプラトゥーン3」を枕元にプレゼントを置いてくれた様子。
ゲームはもうパズドラとテトリスしかやってないけど、どんなもんかスプラトゥーン3を試してみた。
これがまあ面白いこと! 負けた時の悔しさ、勝った時の爽快感、感情が揺さぶられまくる。
休みの日は没頭して6時間ぶっ通しでコントローラーを握っていたりした。
なんかもうこのままゲーマーになるのも良いんじゃねとか思っちゃったりするくらいハマってしまった。
そして春。
桜が終わり、新緑や草木が芽吹くと、やはり滝に会いたい気持ちがニョキニョキと芽を出した。
かといってさんざ家で芋虫のようにゴロゴロしていた体たらくでは滝に会う資格なんぞない。
腹を見れば段瀑(三段)が形成されつつあり、さすがにヤバいとジョギングを再開して汗を流す。
もっと翼を広げないと素晴らしい滝との出会いは生まれない。
芋虫から羽化しなければいけない。
キッカケになる滝はないか、そう危機感に襲われていた矢先、スーパー滝ヤであるTakuさんからInstagramの中で、ある滝へのガイドをしてくれると公開してくれた。
それが今の自分にドンピシャでハマる滝だった。
芋虫から羽化する為に必要な成長は、そうサナギだ。
って事で、サナギ滝に挑戦して来ました。
オツルミズ沢にあるこのサナギ滝は難関の中でも難関の部類に入る滝で、無雪期にこの滝に会えるのは、ごく限られた極めた沢ヤのみであると思っています(スプラトゥーンで言えばXパワー2500以上必要)。
だから、自分の人生のアルバムにこのサナギ滝との出会いを書き込む事はなかろうと最初から諦めていました。
それをTakuさんは切り開いていく。残雪の残る春であれば難しい沢登りは必要なく行けると言うのだ(スプラトゥーンで言えばB帯くらいの技量で行ける)
必要な道具はピッケルとアイゼン。いくらレベルが落ちていても基本の雪の装備を用意しないとさすがに到達出来ないので注意されたし。
さてアタックの日。
道の駅「ゆのたに」に到着。
ウロウロしてるとTakuさんとは違う車が隣に止まった。
参加の意を表していたタカヒロさんでした。
おおー、飛ぶ鷹(鳥)を落とす勢いで滝巡りしている宮城の猛者の登場。
初めましてのご挨拶は中々に緊張。良いオーラ持ってますね〜、滝への愛が溢れていて圧倒されます。
しばらく談笑してるとTakuさんの登場。本日はよろしくお願いします。
長い一日になる事は分かっているし、午後からは雨の予報にもなっているので早め早めの行動って事で、挨拶もそこそこにすぐに出発。
この滝はカグラ滝の上流なので、この場所については再訪となります。
広い林道終点に車を止めて着替えたり準備します。
で、この駐車場から既に滝は見えています。
うむうむ、立派な水量で落ちているのが遠くからでも分かります。しかし、どうアプローチするかはさっぱり分かりません。
これ人間が行ける所なの? やはり超越した人じゃなきゃ近付けないなとガクブルです。
震えつつも、とにかく林道歩き始め。
すぐにカグラ滝の上部が見えてくる。こちらもまた図太く前回来たときとは違う表情を見せている。こちらも行きたいけど、時間に余裕があったら寄ろう。今はサナギに集中だ。
10分くらい林道を歩くとオツルミズ沢との出合いであるオツルミズ滝が現れる。そこから20mくらい先に進んだ所にカグラ滝へのアプローチ起点がある。
てっきりサナギ滝もここから登っていくのかと思いきや、もっと大きく回り込むようだ。
オツルミズ沢から更に奥へ、南下していくと大きな堰堤が右手に見える。
それを通過した先にある草付きの斜面、ここがサナギ滝への起点となる。
はっきり言って分かりづらい。でも探すと垂れ下がった鎖が見つかるはずです。
鎖を握って急斜面の草付きを登っていく。
藪木が多くなる。よく見れば薄く踏み跡が見える。めっちゃ急斜面で足だけでは登れない。脇に伸びている藪木を掴んで両手両足しっかり筋肉を使うので酸素が足らなくなる。
休憩したくても平地なんて無いので休んだ気にならない。
所々に鎖が現れて補助してくれるのが有り難い。整備してくれた方に感謝です。
常にクライマックスのような怒涛な急斜面を登ること30分程。ようやく尾根に着いた。
目の前にはサナギ滝が近くに見えている。良い景観だ。
オツルミズ沢はガッツリ雪に覆われている。難関の沢登りをする訳ではなく雪渓に乗って進んでいく春ならではのアプローチとなる。
尾根を下るのは容易(滑りやすいけど)で、オツルミズ沢の分厚い雪の上に乗る。
一体この雪は何mの厚さなのやら。下では水が流れているはずだが全然聞こえないくらいなので、人が乗った位ではビクともしない安定さがあります。
持ってきたアイゼンを装着し、ピッケルを握ります。
カチンコチンの氷ではなく、ややシャーベット状の雪渓はあまり滑らず登り易い。
こんなに雪が降り積もったのか、と普段見れない景色に圧倒されつつ、足を出す毎に大きくなっていくサナギ滝の姿に興奮が止まらない。
前衛滝である40m滝(規模がやばいね)を越えるのが肝か。
左岸の草付き斜面から高巻くが斜度のきつい雪面を上がるのは、油断するも滑って落ちちゃうので緊張した。
先頭をいくTakuさんがロープを下ろしてサポートしてくれる。至れり尽くせりに恐縮です。
前衛滝を越え、サナギ滝の目の前にある雪渓に乗り、正面に対峙する。
絶望と恐怖に圧された。
なんだこの禍々しいオーラは・・・。
まるで相手にされていない。自分は本当に木っ端なのだと身の程を知らされた。
やはりここは庶民が来てはいけない所だと打ちのめされた。
そんな自分がこの巨瀑に出会えたこの一時を大切にしよう。
上部の段瀑から吹き上がる白煙の規模が桁違い、そこから鉄槌かのような直瀑へと変化し、下部の岩盤へ当たると同時に激しく爆発し拡散する。
その威力、凶悪そのもので怖くなる。
この滝を受け止める力はなく、出会うには未熟。
超越した者だけに許される空間、すげぇ世界を見させて頂きました。
雪渓は下りの方が怖い。慎重にゆっくり歩いて、アイゼンがちゃんと雪に噛んだのを確認してから下りていく。
難しい歩きですね。
尾根の手前まで戻ってきたらアイゼンを脱ぐ。足に血流が戻ってきて開放感ハンパない。
アイススケートのシューズ履いていた時みたいに圧迫されていたのものだから、かなりスッキリしました。
あとは急斜面。滑りやすいのでここも慎重に。ちゃんと藪を掴んでブレーキしつつ下れば大丈夫。
そして林道に戻って来ました。
6:35 林道終点 出発
7:10 林道から巻き道 登り始め
7:55 尾根に到着
8:15 オツルミズ沢 雪渓上
9:35 前衛40m滝 高巻き
10:00 サナギ滝
→カグラ滝へ
|