不思議な滝です。
崖から突如として水が現れる潜流瀑は美しさが際立ち、どちらかというと女性的な滝が多いと思います。
しかし石狩白老の滝は、潜流から生まれた水が社台大地の壮大なる崖を飛び越えて直瀑になっています。
その切れ味や豪快さは正しく男性的。キレッキレな格好良さに魅惑的な美しさの掛け合わせ。
例えるならば、宝塚の男役のような印象を受けました。
インクラの滝、社台の滝、そしてこの石狩白老の滝。
壮大な社台台地が生んだこの三滝を、"白老三兄弟"と勝手に呼んでいます。
長男のインクラの滝は社交的で端正なガチイケメン。コンテストに参加した事から、日本滝百選に選ばれている有名人であり優等生。
次男の社台の滝は引っ込み思案。顔も悪魔と呼ばれてるくらい態度ヤバい。中々逢ってくれないレアキャラだけど、いざ目の前にすると存在感に圧倒される凄みを持っている。
そしてこの三男である石狩白老の滝は、2人のお兄さんの良いところも悪いところも影響を受けていて、カッコいいけど人見知り。怖いくらいキレイ。隠れっぱなしで表舞台にはまるで興味がないという不思議君なのです。
社台台地の三兄弟。一番最初に会ったのは勿論お兄さんであるインクラの滝で、
彼から「社台の滝っていう顔は怖いけどでっけぇ弟がいるんだ」って教えてくれた。
次男の社台の滝に逢った時には、「次は三男の石狩白老の滝にも逢いに行けよ」と言われました。
でも三男は部屋に鍵が掛かってるかのような鉄壁な防衛で中々会えず、気付けば十何年かあっさり過ぎてしまいました。
この滝の難所は三つ。
距離・熊・アレ。
まず距離ですが、道道1045号の歩き約5kmと、沢を約2km進まないと行けません。片道3〜4時間が平均かな? 長い道中になるので日没が心配になります。
次いで熊。関東でも熊は出没しますが、こちらの熊はツキノワグマより大きなヒグマ。
エンカウントしたら一撃でHPがゼロになり、ラダトームの王様から「おおBALよ! 死んでしまうとは情けない」って言われてしまう。
そして最後はアレ。アレが行動に制限をかけまくる。多くは語ることなかれ。
読めばわかるさ。
札幌のビジホを早朝の3時に出発し、現地に着いたのは5時30分頃。
この滝の起点となるのは、白老川より東にある道道86号沿いのホロケナシ駐車場公園。
ここは事前に先駆者であるsakuraiさんに教えて頂いた。情報ありがとうございます。
長い歩み、長い1日となるのは承知。気合いを入れて歩き始めます。
まずは道道86号を道道1045号入口方面へ進みますが、アレな看板がやっぱり怖くて、その手前にある旧道を進みました。
軽く笹藪を漕ぐと白老川に出て、橋脚跡が見えました。
すぐ目の前を渡渉出来れば良いのですが、深いし勢い強くて厳しい。
どこか渡りやすい所ないかなーって下流に向かっていくと瀞のような流れの弱いポイントが見つかって無事に対岸へ移動。
その先には踏み跡があって、岸上へ登っていくと道道1045号へ合流しました。
アレを通過しないで道道1045号に着いたので、気持ち的にはかなり楽でした。
閑散とした道道1045号。ここからの注意は熊でしょう。
ザックに引っ掛けてある熊鈴はカラーンコローンと鳴ってますが、歩く振動で鳴るくらいではいささか弱く感じて、鈴を手に持ってカラララコロロロといつもより多く鳴らして進みました。
途中にある橋には熊さんの立派な糞を確認。
これが不思議なのだけど、橋の長さも幅も共に真ん中の絶妙な位置にいたしてありました。
橋の中心で脱糞する獣ってどんなポリシーがあるのだろうか? これもまた縄張りの行為なのか気になる点です。
気になると言っても、杉下右京さんみたいに「僕の悪い癖」とか言ってヒグマに会いに行くことはしませんぜ。
1時間ほど歩くと看板がある二番目の分岐点。こちらも右へ。
すると遠目に堰堤が見えてくるので、ピンクテープを目印に沢まで下りると、ちょうど石狩白老の沢(ボンベツ川右俣)との出合に来ました。
今までは単調な(熊におびえながらの)道道1045号歩き。ここからは(熊におびえながらの)沢登りになるのでヘルメットを被ります。
最初は滑床。心地良い歩み。周りは紅葉してて良い景色。
渡渉を二度ほど行うと、おやおや、左岸にピンクテープが巻かれていました。
明確な踏み跡になっていて、沢から離れて岸上を進めるように示しています。
ピンクテープは先へ先へとご丁寧に沢山巻かれており、導かれるように進んでいけます。
しっかりと安全な道。ここを目指した先駆者が作ってくれた道なのでしよう。
沢登りするよりも早いし楽な道のり。有り難く乗らせて頂きました。
ただひたすらピンクテープを追いかけていき、あれよあれよと進んでいくと徐々に社台大地の崖が見えてきてビックリ。
ずっと左岸を進んで、最初の滑床以外は全く沢に戻らず靴が濡れる事なく滝が見えて来ました。
グルリと囲まれた崖を見渡していると右手にドクロのようなお顔が出現。
ゲロ吐きすぎwwww 印象的すぎて笑ってしまった。
最後も左岸のガレ場を歩み、滝前に到着。
青い滝壺と細かな粒子の飛沫がお出迎え。
「椿の花が〜〜〜」と歌っているような夢見がちな世界観。うっとりする綺麗さに「はあぁぁぁぁぁ〜〜」と溜め息が漏れる。
まだ滝には太陽が当たっていないので、滝前で寛ぐのは後でのお楽しみとして、この滝のもう一つの魅惑。落ち口を目指します。
滝前から50mくらい戻ってから、右岸のガレ場に取り付いて登っていくと安全に滝を高巻けます。
滝に近ければ近いほど傾斜はキツく、巻くにはリスクが生じます。時間短縮にはなるので、その点は個々の技量にお任せです。
ただ滝から離れるほど、時間は掛かるけどリスク無く恐怖心のない巻きが出来るでしょう。
そして落ち口へ。
ここには潜流が生んだそれはそれは美しい沼があるんですが、、、、
ない、、、
おそらく、ここ一・二ヶ月で崩落があったのでしょう。落石が青い沼を埋めてしまいました。
これを見るのも楽しみにしていたので、とても残念です。
失意ではありますが、それでも落ち口の流れや崖の迫力は健在。素晴らしい演出に目がくらみます。
崖に隠れていた太陽が時間と共に上がって来て、滝全体に光が当たり始めました。
落ち口とはお別れし、高巻いたガレ場を下り、再び滝前に立つ。
輝きを放つ宝塚。キレイ過ぎて心が溶ける。虹も現れて最高の舞台を鑑賞させて頂きました。
帰路は元来た道を戻るだけ。
往きに残した僕の足跡が、熊の足跡に上書きされていてビビる。
夢見心地で浮かれていたけど、一気に緊張感が戻った。
ガンガンに熊鈴を鳴らしまくって、熊を軽快しつつも道道1045号まで踏み跡を辿って軽快に戻る。
道道1045号の途中では寄り道。道道沿いにある枝沢を5分ほど遡る(踏み跡あり)と
湧き出している温泉の登場。
35℃くらいとぬるいですが、ガッツリ入浴させて貰いました。
最後はやはりアレを越えるのは不安だったので、往きと同じく白老川を渡って旧道から道道86号に戻って公園へ。
先駆者のお陰で、安全な道を利用させて貰い、歩みについては気楽なものでしたが、熊とアレについては常に怯えながらの行動なのでストレスは蓄積されました。
でも、滝を思い返せば、そんな恐怖は全部吹っ飛ぶ。インクラとも社台とも違う魅力、存分に堪能しました。
6:20 ホロケナシ駐車場公園 出発
6:45 白老川 渡渉
7:05 最初の分岐 右へ
7:45 第二の分岐 右へ
7:50 ボンベツ川右俣 沢登り始め
9:05 石狩白老の滝 到着
12:15 出発
13:50 沖野温泉 湯の滝
15:35 ホロケナシ駐車場公園 到着
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