ここはあなたの常識が通じない世界。ネジがぶっ飛んでいる。
それを目の当たりにしたらどうなる?
笑っちゃう、笑うしかない。
もしもここで平静を保てる人がいるのなら、それはそれで頭のネジが外れている人なのだろう。
クリストファー・ノーラン監督作品、レオナルド・ディカプリオ主演作の『インセプション』をご存知でしょうか?
夢の中の話だから、何でも有りの世界ですが、それを映画とした表現しているのですからワクワクが止まりませんでした。めっちゃ大好きで多分10回以上は観ています。ホントお勧めです。
特に衝撃を受けたのはこのシーン↓
上方の車に注目!
(映画インセプションより) |
直角に歩く角度を変えるwww
(映画インセプションより) |
垂直に反り立つ街(壁)。そこから90度世界が変わり歩き始める所。
マトリックスだったり、インターステラーだったり、パラレルワールドの世界は面白いです。
そして、ここのヒョングリ滝。今までの概念を捨てざるを得ない。重力がねじ曲がってるとしか思えない。
だって、水が横から落ちてくるのだから(笑)
ふたつぎさんが「ここに行きたい!」と宣伝してくれて、それまで全然知らなかった私にはこのヒョングリ滝の写真を見て衝撃を受けました。
ギラッギラに照りつける太陽の元で、この滝に会えればさぞ楽しかろうと目論見、真夏の訪問で皆さんと日程の調整をしました。
台風が来て、1日ずらして(去年も台風でやられた)、決行。
まずは乳川谷の脇を走る林道に向かいます。
あずみの公園の入口手前から左折して林道に進みます。この道は狭いけれどもアスファルトであり落石などもない非常に走りやすい道。
昨今は林道の通行止めや、もう整備しないで自然に戻すような林道が多いので、この道がどこまで伸びているのか、地図上のマムシ平まで行けるのか心配しつつ、頼むから行けてくれと願いつつ走行。
それによって滝到達までの距離(難易度)が変わってきますからね。
マムシ平の手前で駐車してる松本ナンバーの車が一台。
その先を見ると林道はだいぶ荒れていたので、先行車に倣って私達も駐車。
歩き始めです。
林道は更に伸びているので、ひとまずは林道歩き。
先ほど荒れていると伝えましたが、ガッタンゴットンするダート道は100m位だけで、それを越えると普通の林道となり、終点である橋の手前まで車で行ける事が分かりました。
さて終点からは乳川谷に入りますが、崩落した橋を見つつ右岸から左岸へと渡り、岸上に行くと笹藪がちょいうざったいですが、まだ旧林道を歩けますので、その方が早く移動出来ます。
面倒ならそのまんま遡行でも別段問題ないです。
堰堤が現れて、それを右岸(明確な踏み跡有り)で越えると、沢登りの開始です。
花崗岩で形成された乳川谷は、岩と砂の集まり。そして河川の名前通り、この川は乳白色の流れです。
これがまた美しくて、美しすぎて、青と白のコントラストが素敵で、ちょっと深い淵なんかあると感嘆しちゃって足が止まってしまいます。
沢登りについては難所がある訳では無いのですが、強いて言えばこの乳川谷の美しさに我を忘れてしまうのが難点でしょう。
人魚の誘惑。とても美しい歌声で船員を惑わせる伝説と同じように、乳川谷は魔性の美しさで翻弄させられてしまいます。
ちょっと歩いては心奪われ、足を止めてカメラを構えてしまう。
マジで一向に進まない。
煩悩を捨てて遮二無二突き進めばもっと早くに滝に着けた事だろうと思いますが、我々にはそれが出来なかったので全体的に非常に遅い歩みとなりました。
堰堤越えてから50分、顕著な滝に出会います。これがF1となるのでしょうか。
左右共に磨かれた高い岸壁を持つ滝はゴルジュの雰囲気。
ちょい戻って左岸で越えられます。
この乳川谷は直進出来ないなぁと思った所には、薄いながらも踏み跡が見え、誘導してくれるのが有り難い所。
ちょっとした小滝が出て、登れなければどちらかの岸上に逃げて、藪を漕ぎつつ高巻く。
乳川谷に戻ったら美しさに魅了されてカメラを取り出す。
早く行かなければと我に返って歩みを進める。
これの繰り返し。
スピードは出ないものの、疲れはしないので行動は軽快でした。
顕著は二俣その1。これを右へ。
もう一度、二俣その2、さらに右ヘ。
乳川谷の本谷を遡っていきます。
2〜3mの小滝や、大岩に挟まれて生まれてる小滝など、見所は豊富で常に楽しい遡行。
F1は顕著だったから特定出来るけど、その先は小滝をF2と数えて良いか悩む。っていうか判断取れない。
そんなこんなで約5時間。かなりのゆっくりペース。
谷が南から西へと進行をガクンと変えるポイントに近付くと見えてきました。
最初は全景が見えず、上部だけをチラ見。
もうこの時点でワケワカメ。
上から下ではないんだ。
右から左へ滝は落ちている。
下から上に、にも見える。
この先はパラレルワールド。真っ当な感覚を捨てて、歩いていく。
もう笑うしかないっすわ。
滑り台のごとく一気に急降下させられた水が飛び跳ねるヒョングリ。
持ち上げっぷりは静岡県の釜滝に劣るのは否めない。
凄いのは跳躍力よ。7〜8mは吹き飛んでる。
あまりにも飛びすぎているから、理解の範疇を超えてしまった。
首を90度傾けると、良い塩梅の直瀑に見えてシックリ来る。
そんなに目線を傾けないといけない滝って、何ぞ? 何ぞ?
そしてこの滝の最大の魅力。それは触れ合える事。
今会えるアイドルです。握手も出来る、ハグもしてくれる。剥がし屋がいないから存分に逢瀬を楽しませてくれる。
ただし、ずっと近くにいるとめちゃ寒くなるからね。だからここは真夏がお勧めです。
次元を超越した滝は、異次元の楽しさを持っていましたよ。
帰り道は下るだけ。また長距離を歩きます。
高巻いた箇所は下るにはやや危うい所もあり、そこだけロープを出した。20mくらいをパーティーで一本用意しておけば安心かな。
荷物を防水パッキングして来たので、深い所でもお構いなくザブンと入ってちょい流されて下っていって、溺れちゃわないか怖いけど、それでも楽しみながら沢下りを満喫。
帰路、ふたつぎさんとの雑談で、このヒョングリ滝に特定の名前がないのを残念がり、ではどんな名前が良いか勝手に考えてみたところ・・・
ふたつぎさん「乳川谷だけに、母乳滝はどうかな?www」
BAL「いやいや、乳が飛びすぎっすよwww」
って会話が面白かったなぁ。
長い道中ではあるけれど、飽きさせない景観とアスレチックスのような面白い谷。
目まぐるしく展開するハラハラドキドキなSF映画、まさしく『インセプション』のように、めちゃくちゃ面白い滝巡りでした。
※ちなみに2020年度に公開した同監督作品の『TENET』はさっぱり分からなかったwww
6:50 林道 マムシ平 手前 出発
7:20 林道 終点
7:50 堰堤
8:40 F1
9:10 二俣その1
10:20 二俣その2
11:20 階段状の斜瀑
12:10 乳川谷 ヒョングリ滝
14:10 出発
19:00 林道 マムシ平 手前 到着
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