地蔵滝
Data | 住所 | 蔵王町 |
評価(5段階) | ★★★★ |
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難易度(5段階) | ◆◆◆◆◆ | |
現地へ | 百選「三階滝」の西部。蔵王エコーラインからスキー場「すみかわスノーパーク」に駐車。そこから新滝沢に入渓し沢を下っていく。道がなく崖を下る危険なルート。およそ1時間程で滝前。 | |
コメント | 百選「三階滝」が交わる澄川の本流には巨大な「不動滝」があります。 そして、その上流の新滝沢に立派な柱状節理の岩盤を従えたこの滝があります。 この3つの滝は、三階滝の展望台から一望出来ます。正面が三階滝、そこから右手を望むと不動滝、そしてその上流を辿ると地蔵滝。 見えるというだけで迫力などは皆無です。私は地蔵滝の位置を把握するために展望台に来ましたが、肉眼ではよく分かりませんでした。写真をPCの画面で拡大して確認したら地蔵滝の存在に気付いたくらいです。 三階滝の上段の滝壺にも行ってみたいですが、今回の目的は不帰の滝なので次回にお預け。 さて、メインに行く前に旅の安全をお地蔵さんに祈ろうと訪問を決めました。 「昔登山者が安全登山を祈るため、お地蔵さんを建立してこの滝で身を清めたことから地蔵滝と命名されました」という事ですから、安全祈願に最適ですよね。 先に結論を言いますと、安全祈願に行けるような安全な道はありません。むしろ危険です。ミイラ取りがミイラになるってこういう事を言うのかな、いや違いますけど、お祈りする前に自分が仏さんになってしまう可能性があるので、安易に行ってはいけません。 三階滝の展望台を去って、蔵王エコーラインを西にウネウネ走らせますと、スキー場のすみかわスノーパークにある「宮城蔵王高原ホテル」があるので、その手前にある無料駐車場に駐車。 ここの建物は冬季だけ営業なのかな? 人気がありません。 橋の下に流れる新滝沢に入渓して、沢を下降して滝前を目指す計画です。 橋から沢に下りようとしましたが、沢が見えないくらい草木が濃かったので、ホテルの左脇を進んでから沢に近付き着地しました。 沢は穏やかな形相で、水の中を歩くのが気持ち良いです。小滝ほどの段差やナメ床は沢靴のグリップがよく効きますので、水流の中を進んで降りていきます。 5m程の小滝だけは右岸から巻きましたが、それ以外は濡れながら進みました。 20分くらい降りた所で、沢が消えて視界が一気に晴れ渡りました。遠刈田温泉なのかな、遙か遠くに街並みも見えます。 沢はどこにいった?って、地蔵滝の落ち口にいるのですから水は滝となってストンと消え落ちています。落ち口付近も節理が発達した岩盤でかっこいいです。 グルリと崖に囲まれている滝です。どうやって下りようか。遡行記録では右岸とあるので私もそちらへ。 右岸の崖沿いを進みます。足を止めては、どこを下りようかと崖下を覗き込みますが、下りやすそうな斜面が、見つからない。 木々に隠れて滝の姿は見えませんが、滝の真横まで来たところで、この辺りかなと思える斜面が現れました。 というか右岸をこのまま進んでも崖は穏やかにならず、むしろもっと手が付けられない岩盤になっていたので、ここを下りるしかないと決意しました。 ここは、途中途中に太い木があり、ちょっとした段差があったりしたので何とかなるかなと思いました。 ただ、フリーで下りるには厳しいと判断して、30mロープを出して、エイト環に通して懸垂下降をしました。 懸垂下降と言っても、ストンと崖を下りる訳ではなく、枝に引っかかるロープを整理しながら、それと登り返しは出来るか確認しつつ、ゆっくりと慎重に下りました。 30mでは崖を下りるのには足りず、9mのお助けロープを枝に括り付けて更に降下。落ち葉と木の根が張る傾斜のきつい崖は終えましたが、草付きの緩い斜面が残ってしまいました。 草付きの登り返しは踏ん張りが効かず大変という苦い経験をしているので、ロープを張りたいのですが、ないのだから仕方ない。 草付きを踏むと、案の定、ドロ斜面でズルズルと滑って下ってしまいました。 帰りの事はいま考えても仕方ない。これで崖は終えたのだ。顔を上げると滝のすぐ真横に到着。駐車場を出発して70分で到着です。 朝日を満遍なく浴びている地蔵滝は輝いています。 もう1時間早く到着していればちょうど良い位置に虹がかかったでしょうが、訪問時は滝壺にギリギリ見えている感じ。ないよりはマシですし、一週間連続で働いた疲れが残っていて予定通りに来れなかったので仕方ない。 濃い青空にサンサンと煌めく飛沫、柱状摂理の茶色い岩盤も照り焼きチキンのように美味しそうな色で輝いています。 不動滝のように滝壺があるのかと思いきや、大きな岩が埋めているのか滝壺は殆どない。 岩にぶつかって飛沫を放出してますが、それほど水量は多くないのでちょっと離れればカメラも濡れずに撮影出来ます。 滝前の空間は広く、自由自在に動けるのも長所ですね。 そびえ立つ岩盤、飛び散るしぶき、開けた空間、落差は20〜30m程で大きくはないですが、この滝は間違いなく一級品です。 下から見るとどうアプローチすれば良いかよく分かります。左岸の崖はオーバーハングしていてまず無理。 右岸の滝横すぐの所は木々の生えない垂直の露出岩盤。その横は私が下りた緑がある箇所、更にその横はまたも木々がない岩盤になっています。 この緑しか下りる所はないのですね。もうちょっと楽に下りられる所があるかと思っていましたが、そこだけですか。選択に誤りがなかったのは嬉しいけれど、安全な道がないのはきついです。 登り返しは本当に大変でした。腕力もさることながらバランスがとっても大事。 草付きドロ斜面は足を上げて体重を乗せると草が剥がれて元の所に戻ってしまう。 これは、あれだ。ジョジョの奇妙な冒険のポルナレフだ。 『おれは奴の前で階段を登っていたと思ったらいつのまにか降りていた』 な… 何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった… 何度もがむしゃらにトライして、足が乗れる所を探して、お助けロープを掴んで草付きを突破。 あとはロープを辿っていくだけですが、一歩間違えればストンと落ちてしまうので、念のためスリングをプルージック結びでロープとハーネスを繋げて安全確保。 岩には落葉が堆積していて、乗ると剥がれる可能性があるので信用出来ない。葉が生えている枝や、木の根を掴んで離さず、力一杯登りました。途中、乗っていた足場がズルリと剥がれ落ちて、木の根を掴んでいる右手一本でぶら下がっている危ない状況もありました。おかげで腕が筋肉痛になりましたし、腱を傷めたようで一ヶ月以上経過した今でもペットボトルを掴んだだけで痛みを生じます。 無事にロープを回収して崖上に戻って、冷静に下りた所を見ると、ただの崖でした。 こんな所、よく下りられると判断したものだと自分の度胸に感心。 旅先で会う女性は綺麗に見える、そんな経験ありますよね。特にスキー場で見る女性は素敵に感じます。 それと一緒で、滝に出会う前は興奮していて行けるように感じちゃったんだと思います。行けたから良かったものの危険な思想ですね。今後気をつけたいと思います。 |
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他写真 | ||
訪問日 | 2012/08/10 |