北の俣大滝

Data 住所 須坂市
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆
現地へ 菅平高原の北部。県道349号の須坂市清掃センターの終点まで進み、そのまま直進してダート道を走行。ゲート前で駐車し川に入渓。徒歩2〜3時間。
コメント
百選の”米子大瀑布”の北側にある事から裏米子と呼ばれたり、奇妙滝のある奇妙山の北面にあるから「北奇妙」とも呼ばれています。

米子大瀑布と似た岩盤にかかる故に、見事な落差のある直瀑が落ちています。

小さな水滴になりながら、空中を遊泳し滝下へと導かれる。衝突は滝壺に落ちた時の一回だけであり、その音もミストになった滝水から発生される為に限りなく小さく優しい。

川の音とは違う、岩盤に触れながら落ちる滝の音とも違う、落ち口から宙を舞って落ちる完全な直瀑独特の静かな音。まさに癒し、それにつきます。

貝殻を耳に当てた事はありますか? 例えるならばその音に似ているかと思います。

その直瀑を生んだ岩盤は力強く、川が下流に向かう西側以外の三方は崖に覆われています。
見上げれば直立している崖は大迫力ではありますが、私達にとって苦慮する事が一つ。

ミストな滝水が壺に叩きつけられ、四方八方に飛沫をまき散らすと、滝の見えるその空間は極端に気温が下がっています。

飛沫と滝風がどこにいても降りかかってくるので、容赦なく熱が奪われます。
腰を落としてまったりとしたいものですが、それが叶わないのは残念な点です。
ま、これは贅沢な不満ですね。滝は本当に素晴らしいですから。

いつ行っても素晴らしいでしょうけれど、ギラギラと暑い日に涼を求めて訪ねるのが良いでしょう。秋に行った人はとても寒かったと言ってましたので。


この滝には案内はありません。ですが分かりやすい道中になっていますので、地形図をしっかり握って進んでいけば必ず到達出来ます。

沢に入るので登山靴では厳しいです(濡れる覚悟があるなら別)。長靴か沢靴が良いでしょう。

清掃工場を横目にダート道を進むと二俣が現れます。

右(というか真っ直ぐ)に進んで橋を渡り、やや荒れたダートを走るとゲートが現れるのでそこで駐車。詰めれば3台停められると思います。

ちなみに先ほどの二俣を左に折れると更に上流へ向かいますが、沢には急斜面を降りなければならないようですので、あまりお勧めしません。

駐車場で準備をして、いざ出発。沢まで明確な道があるので、迷わず入渓出来ます。
かと言って沢を遡行する訳ではありません。直ぐに対岸に渡ります。

案内は全くないのですが、登山道と同じくらい分かりやすい踏み跡が右岸に伸びています。
それを辿って進んでいくと、川に出て対岸に渡渉。そしてまた踏み跡を進む。それを何度となく繰り返して上流を目指します。

渡渉は膝くらいまで浸かる時もありますので、沢靴の方が気が楽に足を置けると思います。
沢は苔むした緑豊かな流れをしていて、水の中に入っていると気持ち良いです。

この沢は沢登り初心者にはうってつけですね。所々段差があってそれを直登するのは水と戯れるようで楽しいと思いますし、それに疲れたら岸に上がると踏み跡にエスケープが出来る。沢幅は広いし、岸上も平坦で休みやすい。とても良い遡行が出来るはずです。

途中、踏み跡を見失う時もあります。逆にいくつも枝分かれしてどこを進むか悩む時もありました。

左右の岸を見て、どちらが平坦かを見て上がると、大抵は踏み跡に出会えます。仮に見当たらなかったら沢を登って行くだけです。

さて闇雲に進むだけでは間違った沢に入ってしまうかもしれませんので、中盤からは注意が必要。

二俣が現れます。ここは左の沢を進みますが、もしも左岸(右側)にいて、全体を確認せずに登っていた場合、二俣に気付かず右の沢を進んでしまうかも知れませんので要注意。

二俣は3:2の割合で左の方が水量多いですし、分かりやすいので見落とす心配はないと思いますが、油断は禁物ですね。

その後もしっかりした踏み跡を辿っていきます。沢にいるより岸上にいる時間の方が長く、それ故に歩くスピードは早く時間短縮になっています。余裕があれば沢の中に入って楽しむのですが、夕方には自宅に戻ると嫁さんに約束をしたので、のんびりしている暇がありません。

これだけはっきりした踏み跡なのに、赤テープなどのマーキングが一つもないのは不思議です。

やがて二つ目の二俣が現れます。1:1の割合で、ここを右の沢に進みます。

この辺りから踏み跡は不明瞭になります。沢幅も狭くなって、草木がより高く伸びて進みづらいです。

踏み跡が見つからなければ、沢の中を進むだけです。この水を追いかければもう少しで滝に会えます。

右側の崖が聳え立ってきたら、もう少し。普通の滝なら音が聞こえる距離ですが、この滝は近付くまで聞こえません。本当にこの先に滝はあるのか? 疑問に思う程、沢の音しか聞こえず不安になりますが、そこは我慢。

ジャスト2時間、滝前に到着。沢で遊びながら進めばもうちょっと掛かります。私は殆どを岸上の踏み跡を利用して進みました。

前述したとおり、滝前は寒く休む所がないのは厳しい。
カメラを構えてはレンズについた水滴を拭うのに忙しない。鬱陶しい事この上ないですが、素晴らしい飛沫と滝の力強さなのだから仕方ない。というかこれを求めて歩んで来たのです。

踏切を通過する電車の一つの窓を追い掛け動体視力を鍛えるように、落ち口から一つの水滴を追い掛ける。
それはフワフワと揺れながらゆったりと落ちている。
すぐに滝壺に当たり、放出する飛沫と重なって見失う。
この水滴の追い掛けはゾクゾクするほど気持ち良く楽しい。

滝好きなら、流れ落ちる水を追い掛けた時があると思います。たいていは途中の岩盤にぶつかった時点で喪失してしまいます。最後まで追い続けられる滝は珍しいのです。

空中を泳ぐ直瀑だからこそ追い掛けられる。そして滝壺で弾ける。気持ち良すぎです。この遊び、分かりますかね。分からないのが普通だとは思いますけど。

右から左から、真下から、夢中で移動してはカメラを構えました。時にはカメラを置いて飛沫浴をしたり、水を追い掛けたり。至福の一時でした。

帰路はちょっと寄り道。二つ目の二俣を左に入って散策遡行。その先に崖と滝マークがあったので行ってきました。
地形図通り水線がなくなったあたりから水量はガクッと減りました、覆うような崖に着いたものの水はチョロチョロ。
満足出来る滝ではないですが、どんな滝姿なのか分かっただけスッキリしました。

他写真
訪問日 2012/07/27

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