大正滝

Data 住所 木曽町
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ 御嶽山の東部。国道19号から県道20号、県道473号と進み、中の湯駐車場へ。そこから北へ進む登山道を利用し60分で百間小屋。百間滝の修験者用の道を辿り、崖を回り込む。かなり危険な道です。
コメント
雨の欝陶しさは先に会った百間滝が消し去ってくれました。元気を貰って出発。

目指すはその下にある3滝。本流の雄蝶滝、支流の雌蝶滝・大正滝。

登山道にある百間展望所から遠望するのが通常であり、この3滝へは道が全くありません。
よって自分で切り開くしかないです。想定としては雄蝶滝を左岸から回り込んで降下しようという事ですが、地形図上で描かれているのは崖マークだけです。危険であり困難であろうとは容易に想像出来ます。

地面がしっかり固まっていて視界が良好な晴れの時に目指したいのは山々ですが、百間滝の素晴らしさにテンションが上がっていたので、行ける所まで行ってみようと進みました。今思えば危険をより増した状況で行くべきだったのか疑問ではあります。

百間滝から修験道を戻り、最初に現れる梯で道とお別れ。雄蝶滝をグルリと囲んでいる左岸崖沿いの棚上を進んで行きます。

左手は崖を触りつつ、薮を漕いで前へ前へ。この辺りは安定的な足場です。

余り高さを変えずに、トラバースのように移動していくと、突き上げる高い岩盤が出て来るので、ここで一旦薮の中を下降します。まだこの辺りは切れ落ちている崖の上にいるので、滝下にはアプローチ出来ません。

その岩盤を回り込むとルンゼが現れます。ここは草も生えており斜度はきつくないので足元を固めつつトラバース。下を見ると切れた崖が見える為に中々緊張します。ちょうどこの辺りが雄蝶滝の正面になり滝の姿を確認出来ます。しかしまだ滝よりも上にいて近付けないもどかしさを感じます。滝を横目に離れるようにルンゼを乗り越し進みます。

次に視界に現れたのはまたもルンゼ。ここが最大の難所です。下部はまだ崖の上でストンと落ちているので沢に下りられず、またもトラバースを強いられますが、先程のルンゼとは様相が全く違います。

砂利と大岩で作られたルンゼで、傾斜は相当きついです。まともには立っていられない。
砂利がギュッと固く締まっている斜面に小石が乗っけられている状態で、乗ると小石に足を掬われてしっかりと踏めない。

大岩も厄介でちょっと重みを加えると簡単に転がり始め、下部にある崖に勢いよく吸い込まれる始末。

不安定この上ないトラバース。掴むものもなければ、足を乗せる斜面も信用出来ない。バランス崩して滑ってしまったら崖下に一直線。

斜面を思いっきり蹴り崩し、足元を固めていく。野球のピッチャーがマウンドを固める姿に似ている動き。踵をガツガツと打ち下ろしたり、サッカーボールをトゥキックするように蹴り込む時もありました。

一歩一歩足場を作りながらのトラバースは物凄く疲れます。ただでさえ雨で辟易しているのに、その中で集中を持続するのは大変で相当消耗させられました。

このルンゼを乗っ越すと崩落地のようなザレ場。下には沢が見えます。切り立った崖は先程の激悪ルンゼで終わりを告げました。

ザレ場に立つには急斜面を下りなければならず、ここは万全にロープを出し懸垂下降で着地。岩が積み重なっているだけのザレ場は踏むと沈み不安定であり落石をよく起こしますが慎重に進めば問題無し。

あとは見えている雄蝶滝を目指してまっしぐら。途中、見上げると先程のルンゼが見え、よく渡ったものだと関心する。

さぁ雄蝶滝の滝下。落差は30m程か。中腹で弾け飛ぶ姿はカッコイイ。取り囲む崖もまた圧巻、男らしさを存分に発揮しており力を貰いました。
百間滝の分岐から滝下までの所要時間は2時間20分程でした。7人での行動で一人づつロープで確保しての移動ですので、小人数でしたらもっと短い時間で到達可能だと思います。

時間もだいぶ押しているので、次の滝を目指すように頭をスイッチ。

まず先に下流奥にある大正滝へ向かいます。

ここからは沢を下りていくので沢靴でないと厳しいです。ちなみに百間と雄蝶だけなら登山靴で行きます。

沢の中を入って行き下流に向かいます。特に難所はなく進める所を進めばOK。

雌蝶滝の掛かる沢が合流しますがとりあえず後回し。そのまま沢を下りていきます。

再び右岸から沢が合流するので、この沢に入るように右に折れます。本流からそれほど離れていない大正滝の姿はすぐに確認出来ました。雄蝶滝から凡そ25分での到着です。

この3滝の中で1番素晴らしい滝です。
落差は30m程で雄蝶滝と変わりないですが、何よりも水の流れが美しいです。分岐瀑に属すると思いますが、それ程なだらかではなく落ちる勢いもあり飛沫も申し分ないです。
見る角度によって全く別の滝になるので撮影には持ってこいでありますし、近づけば迫力を肌で感じられるしで、万人に感動を与える滝だと感じました。

時間に余裕がないので、未練タラタラに背を向けて最後の雌蝶滝へ向かいます。

本流を一旦戻り、先程通り過ぎた右岸からの枝沢に入ります。

ここも難所はありませんでしたが、岩が大きくグングン高度を上げて行くので体力を相当消費します。この沢だけは息切れし何度も止まっては呼吸を整えました。

岩をよじ登ったり飛んだり、とにかく太腿を持ち上げる動作に忙しい。滝の姿は見えているものの遠い。
ゼーゼー息を吐きながら、大正滝から20〜25分程で滝下に到着。肉厚な一本の滝で、駆け落ちる水は凄まじく速く、これまた力強い。雌というよりはこれも雄の迫力を持っています。

この雌蝶滝は激悪ルンゼから遠望出来ており、それはそれは大きい滝だと感動していたのですが、実際に見えるのは他と変わらず30m程。遠望で見えていた姿とは違うので、全容は見えていないのだと思います。これを高巻けばもう一つ滝があるのだろうと想像出来ますし、左岸のガレ場を登れば越えられるだろうと判断しましたがタイムアップです。

この下段の滝でも十分に満足していたので、惜しみはせずに戻ります。
来た道を戻るのは相当の時間を要しました。ルンゼでは緊張を強いられますし、帰りはロープの回収もあるので予想よりも時間を食いました。

ルンゼを終えて、修験道に登り、登山道にある百間小屋に戻ってきた時には薄暗くなっていました。小屋でちょっと休憩してヘッドライトを装備して登山道を歩く。小屋に着いた辺りで体力の低下が著しかったので、帰路は相当しんどいものがありました。

とにもかくにも闇の中で無事に駐車場へ戻って来れ安堵に包まれました。

この滝巡りでは学ばされる事が多かったです。雨の中では予想以上に体力を削られる事が身に染みました。平静さも奪われていた状況の中、危うい点もありました。無事に帰還出来たのは奇跡とも言えるかも知れません。

滝に感謝。試練をありがとう。

6:45 中の湯駐車場出発
7:45 百間小屋
8:35〜9:20 百間滝
9:45 百間分岐
12:05〜13:00 雄蝶滝
13:25〜13:55 大正滝
14:20〜14:40 雌蝶滝
17:10 百間分岐
19:15 中の湯駐車場
(正確な時間ではありません。あくまでも概算です)
他写真
訪問日 2010/07/03

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