行者の滝(北沢大滝)
Data | 住所 | 北杜市 |
評価(5段階) | ★★★★★ |
|
難易度(5段階) | ◆◆◆◆◆ | |
現地へ | 韮崎の西部。国道20号より県道612号に入る。しばらく進むと、[精進ヶ滝」の案内がいくつも出てくるので、そのまま従って行く。北精進ヶ滝へと向かう駐車場を横目にそのまま走行し、精進ヶ滝林道(車両進入禁止)付近で駐車し、そこから徒歩。道中は長く危険を伴う。 | |
コメント | 百選「北精進ヶ滝」の上流には大きな二つの沢があり、片一方の北沢にある巨大な滝です。落差は50mと言われていますが、左右に広がる強烈な岩盤の迫力がそれ以上の高さを感じされてくれます。 上部で岩盤に当たり段になって落ちるものの、部類は直瀑に入ると思います。その段で勢いは削られるものの、その後の落ちる水の姿は秀逸。空を舞う直瀑らしく水の形は幾重にも変化する。この水の躍動感は魅惑的で虜になってしまいます。じーっと見ていると滝水が登っているような錯覚を持つから不思議です。 放出される飛沫は微細の粒子でストレスフリーな当たり。通常は水玉も大きく体に当たるとその力強さに体力を消耗される時もありますが(それはそれで気持ちいいけど)、ここの飛沫は全く不快にならず体を撫でてくれます。 柔らかく滝壺に当たるその水音は滝独特の優しさを奏でており、この上ない心地良さに包まれます。「聞く」ではなく「聴く」、心に染み入る美しい音色です。 更に、滝前の空間も素晴らしい。簡単に言えば広場です。滝の為に設けられた平坦な特設会場で気を配らずにのんびり歩けますし、滝の色んな姿を堪能出来ます。 開放感たっぷりの見事な舞台で演舞する滝。一級のエンターテイナーで間違いありません。 ここの会場に入るにはそれはまぁ大変でした。 北精進ヶ滝は勿論の事、その後に現れる滝・滝・滝、それを全て越えないと入場出来ないのですから困難窮まりありません。 北精進ヶ滝の滝壺から高巻いて上流に降り立つのも可能でしょうが、遠望から北精進ヶ滝の全景を見るのと時間短縮を兼ねて北精進林道からのアプローチを取りました。一石二鳥って最高ですよね。 当日は北精進ヶ滝の駐車場に最短である精進ヶ滝林道が閉鎖しているようなので、仕方なく遠回りでダートな小武川沿いを走る御座石林道を走りました。 地形図を見ると分かりますが、北精進ヶ滝の左岸の真横まで実線が伸びてまして、それが精進ヶ滝林道の終点です。御座石林道との合流地点も狂いはないのでナビに目標地点をセットすれば林道入口までは容易に運んでくれます。そこまで車で行ければ良いのですが、御座石との合流点からは車両進入禁止なので徒歩になります。 林道の入口だけは登山道のように狭く、いまいち確信が持てなかったのですが、すぐ先にゲートがありその先は十分な横幅があったのでこの道で間違いないと安心して歩き始めます。 3人が横列に歩いても余裕な幅を持っている無難な林道です。落石や崩落地帯を横切る所が何度かあるのでそこだけ要注意してとにかく歩きます。 中間地点付近で地蔵大橋というそれはまあ大変立派な橋が架かっており、そこからは北精進ヶ滝登山道の橋であったり長坂の町並み、更に遠くには八ヶ岳の姿も確認できる見事な展望が広がっています。 黙々と林道を進む事50分程で林道の終点に来ました。ここから斜面を登って行きますが、その前に北精進ヶ滝を俯瞰する展望地に向かいます。林道終点から踏み跡を辿って行けばあっさり到着です。傾斜のきつい所には虎ロープが残置されてますので安心して下りれました。 北精進ヶ滝の撮影に相当時間を使ってしまいました。時を忘れる程の壮大な美観が広がっているのですから仕方ありません。 さぁここからが本番。展望地から林道終点まで戻り、そこから南西に伸びているなだらかな尾根に取り掛かります。余談ですが林道終点から50m程ゲート側に戻った地点に長ハシゴが掛かっており、そこから尾根に取り付く事も可能です。というかこちらが本筋だと思います。 尾根は広くなだらかすぎて踏み跡は乏しく、またマーキングも殆ど無いので不安になりますが、北精進ヶ滝から伸びている崖を右手に見ながらひたすら登って行きます。 およそ70〜80m程(と感じた)登った所で赤や白のテープが木に巻いてあるのを発見し、ここで登りはおしまいです。尾根はどこを見ても変わらない景色。このマーキングを見つけなければどこまでも登り続けたと思います。崖を見ながら進んでいないとどこが道か判断は難しいです。 登りが終わると明確な踏み跡を辿れます。あとは導かれるままに崖をトラバースし、チョロチョロと流れる枝沢を横切り、落ち口へと続く尾根を下ります。簡単に書いていますが、トラバースも尾根下りも登山道ではありません。砂地のザレ場を横切るのは緊張しましたし、尾根下りは急峻な所を強引に下りて行きますので気を配りました。ただ踏み跡は明確だという点は助かりました。 尾根を下り沢の音が耳に入ってきました。なんという心地良い音だろう。そして沢に着くと北精進ヶ滝の落ち口が目の前に。水が突然消えてしまう景色、ここが北精進ヶ滝の始まりの地なのだと感慨深く立ち尽くしました。 さて、ここで登山靴から沢靴に履き替えて遡行の始まりです。 沢の水は限りなく透明で、所々に砂浜が配置されてとても綺麗で、その場を歩いているだけで爽快です。しかし、沢は穏やかさとはかけ離れた険しさを持っており、それはそれは苦労しました。 小さいながら幾つもの滝を越えて行きますが、その殆どが直登出来ず、巻きの連続です。 30分程進んだ所でようやく分岐点、北沢と南沢の出合いです。南沢ではスラブ状の滝が、北沢は大きな釜を要した5M程の滝が二俣となって待ち構えています。 その北沢の大きな釜は水深もありそうで、おそらく胸くらいまで浸かるのではないかと判断出来ます。11月、紅葉もほぼ終わっているそんな時期に釜に入る気にはなれません。それにその奥にある5M滝もパッと見で登れるように思えません(沢ヤさんはそれを登っていくようですが)。 取り付いて様子を見ようなんて気も起きず、素直に巻きに入ります。左岸の岩盤は緩やかな傾斜になっており、グングンと高度を上げて5m滝を下に見ながら通過。あとはどうやって沢に戻るかが課題です。 しばらくそのまま高さを変えずに進んでいきます。切り立った崖の上にいるので簡単には下りれません。先を見ても崖が続いています。どうしたものかと悩みながら歩いていると、残置ロープを発見。 おぉ何と有り難い事か。早速ロープの強度を確認して下を見ると、下腹部がキューっと持ち上がるのが分かりました。 えっ? ここ? ただの崖です。そこにロープが垂れていて沢の流れが見えました。でも確かに崖の中では下りやすい所です。他はオーバーハングしている状態ですので。 それでももっと他に安全に下りる道はないかと20分程周辺を探索しましたが、探して見つかるのはより険しい崖だけでした。 意を決してロープを掴み、エイト環をセットして懸垂下降。安全に下りられるのは分かってますが、やはり好きにはなれません。 再び沢をジャバジャバ、遡行の開始。といっても直ぐに滝が現れて左岸で巻く。途中の滝は小さいながらも綺麗な滝で目を奪われます。 大きな滝を3つ、全て左岸で巻くと沢は様相を変えます。祭の後の静けさというか、下流域に戻ったかのように非常に穏やかで緩やかな流れ。 緊張を紐解いてリラックスして歩きます。どちらの岸も平坦な地で邪魔な薮も少ないので気軽にスピード上げて進めます。 軽快な歩みを30分程で、沢が直角に折れると共に20m滝が待ち構えています。これが最後の門番です。 そして遥か上の崖を見ると北沢大滝の落ち口が見えます。 遠くから見ても迫力はヒシヒシと伝わって来ます。あともうちょっと。長い辛い道中、それが報われる時は目の前に。 20m滝は当然ながら直登は出来ません。ここは右岸で越えます。傾斜は中々で踏ん張りの効きづらい泥斜面ですが所々に太い木々がしっかり根を張ってくれているので感謝して掴み、上を目指します。 ようやく滝と対峙。林道ゲートからは約5時間ほど掛かった計算になります。テキパキ進めれば4時間は切れると感じています。 北精進ヶ滝を巻いて、いくつもの滝を越え懸垂下降して……、頑張った甲斐がありましたよ本当に。 |
|
他写真 | ||
訪問日 | 2010/11/07 |