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落差120m、巨大な岩盤に冴える見事な水柱。
残念ながらこの滝は雪解け限定です。それ以外の時期はまとまった降雨後にしか期待出来ないと思います。
雪解け、普段は水量の少ない滝もこの時期は姿を変える。滝の力強さをまざまざと見せてくれる素晴らしい一時。
その凄さを求め遥々新潟までやってきました。
ここは道路から遠望も可能ですし、権現岳へ至る登山道からもその姿を確認出来ます。しかし滝下への道はありませんので、自力で近付いていくしかありません。 登山道の駐車場に到着すると、一面雪模様。ここに来るまでに道路が冬期閉鎖になってなくてホッとしましたが、見渡す限りの白い世界とは予想しておらず驚きました。 ただ積雪は20cm程なので進めると判断すると共に、音は聞こえぬまでも巨大な滝が崖を飛び越えている姿にテンションが上がり、いそいそと準備。 ザックの中にアイゼンをしまっていざ出発。 解けかけの雪はよく沈むし重い。更によく滑るので歩きづらい事この上なし。 登山道を5分も進むと急な登りが始まり、登山靴では登っていくのが困難になったのでアイゼンを装着。
踏ん張りが効くようになり快適に上がって行きます。まだ雪が残っている時期なのに微かに踏み跡が残っています。つまり山頂目指して進んだ人がいる証拠。高所はもっと雪が積もっているだろうにその熱意には頭が下がります。 登り始めてから20分程で平坦な地に着き、ここで登山道と足跡にはお別れ。後は滝を目指して突っ込むだけ。 一番の難所は沢に下りるまでであり、沢に着地さえ出来れば簡単に滝と出会えるだろうと判断をしていました。それは地形図を見て滝の下部がなだらかである事からの予測。 それをものの見事に断ち切られるとは思ってなかったです。 雪原にサクッとアイゼンの爪を突き刺し、真正面に滝を構えて進んでいきます。順調な足取り。 時折、雪に埋もれていた薮木が重みを払いのけて地表に現れます。 時は正午。快晴のその日は気温もよく上がっています。陽は雪に当たり次々と解かしていく。 結果、白い世界に埋もれていた薮木が弱まった雪を勢いよく押しのけて飛び上がる。 雪解け時期の貴重な自然の姿。クイズ番組で解答ボタンを押して出て来る札のようで面白い。冬は終わり、春に姿を変える変化の一時に自分は立ち会っている。この時の山にどんな危険が潜んでいるのか分かりません。いくらアイゼンで快適に歩行出来ていても、慎重さは失わないように進んでいきます。 葉のない木々は視界の邪魔にならず遠くまで見えます。足を前に運ぶ度に滝が大きくなっていきます。 雪面に乗って進んでいる時もあれば、埋もれている薮木を踏んでいる時もあります。 まだ冬の名残りある状態ですから安定に歩けるのでしょうが、雪が無くなると木々と葉が視界を覆い、容易には進めないだろうと判断出来ます。
デカイ、遠くからでも胸踊る大きさ。滝下で見上げたらどれほどの感動が得られるのか想像が膨らみます。 雪原の淵、滝の下部にある沢との出合い。そこで驚きと共に断念する事になります。 沢は巨大な雪渓に覆われており、水の流れは確認出来ません。つまり滝に近づくには雪渓に乗って横切らないといけない事になります。 この雪渓は踏んでも大丈夫だろうか? 一箇所だけ薄くなっているのかも知れない。見えないんだから分からない。天然の落とし穴、もしそれに落ちれば上がってこれはしない。恐怖ばかりが巡ってしまいます。耳をすませば雪渓の下には水の流れる音がします。解けた雪が流れている。今この時にも、雪は痩せていっている。 それだけでも愕然としているのに更に目を疑うものが一つ。地形図に描かれていない前衛滝の存在です。 雪渓に隠れているものの10m以上の落差はあると判断出来ます。その滝を越えない限り、白滝の真下には立てない。 周りに広がる前衛滝の岩盤。それは毎年の雪渓に磨かれて掴み所のない岩盤に仕上がっています。 雪渓の残る今、その岩盤の上に生えている木の枝を掴んで上がれば前衛滝を越えられるように想像は出来ます。 しかしいくら枝を掴めても、傾斜が厳しい。腕力勝負のごぼうの登り。途中で力尽きたら人生のゲームオーバーは明らかです。
更に、その木の根を見ると今にも均衡が崩れそうな岩が引っ掛かっています。どの木を見ても同じ条件。小さいものでバレーボール位。大きいものになるとバランスボール位。揺れればすぐに落ちてくると容易に判断出来るほと危うい。 教室のドアの上部に挟まれている黒板消しのような存在。間違いなく落ちる。しかも私目掛けて。そんな負の予感が拭い切れません。 雪渓・転落・落石、どれも危険。万が一を想定すると身震いしてしまいます。 だけど、その恐怖に打ち勝ち滝前に立てたら計り知れない程の感動を得られるのも必須。 自分にこれを越えられるのか、命を賭けて進めるのか。 30分以上その場から離れなかったと思います。雪渓を見て、滝を見て。岩盤を見て首を捻る。 「命を賭けてまで行く滝はない」私の滝仲間の言葉が鮮明に浮かびました。 葛藤はここで決着。滝に背を向けました。 歩く度に小さくなっていく雄大な水柱を振り返りつつ眺めては溜め息をつきます。 知識があれば、道具があれば、仲間がいれば…。 自分の甘さに心底腹を立てつつ、もっと技量を積んで仲間と共に再訪しようと誓いました。
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