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洞窟の暗闇の中に入り、そこに浮かび上がる白く光る滝筋。
陰と陽の狭間に身を置くその空間は、複雑怪奇な感情を次々と放出させられます。
闇に対して体は強張りますが、その一方で滝の美しさに破顔してしまう。
滝の音が洞窟に反響し頭に響く。重低音は体にも振動を与え目眩の様な錯覚に陥る。その震える音に対して正気を保とうと気を張る。
緑豊かな苔や葉。滝から生まれる風によって葉は揺ら揺らと自然に任せて可愛いダンス。水滴を含んだ苔はより一層緑を輝かせ舞台の演出に花を添える。そんな生命溢れる視界に包まれると感覚など捨てて身を任せたくなる。
このような恐怖と歓喜が入り混じるのはこの空間独特のものでしょう。自然には人間の感情を表にも裏にも簡単に引っくり返せる力を持っている事をまざまざと見せつけられました。
滝自体は10mも満たないほどの小ささです。滝は大きさではない、シワガラの滝はそう語ってくれます。白い滝に輝く緑と暗闇を添える、ここは「日本の美」そのものです。
今まで見てきた滝の中では味わったことのない素晴らしさ。ここにあるその全てが愛おしい、そう感じました。
滝の美しさ、ここに極まる!
出会った瞬間、考えた訳でもなく溢れ出てきた言葉です。
当日は雨。しかも結構な降り方。ガスで見えなくなってしまったら嫌だなと思いつつ出発。
道はしっかり整備されていて、所々に案内があり迷う心配はありません。
緩やかな上りを終え、「桂の滝」への分岐を過ぎると途端に視界が広がり田んぼが現れます。
何故こんな道路のない奥地に? と不思議に思いつつその脇を歩いていきます。
ここから急斜面の降下の始まり。雨の為にぬかるんだ斜面はズルズルと足を滑らせて尻餅を突きそうになりました。そのような危険箇所には補助ロープが伸ばしてあるので安心して下りれました。この急降下がこの滝の難所です。といっても慎重に下りていけば危険と思えるほどではありません。
ようやく川床に着地。あとは上流にちょっと進めば滝です。
踏み跡は所々途切れていて、どれが正規の道か分からなくなりますが、とにかく川を遡れば良いのです。
雨の音とは違う滝の音が聞こえてきました。川からは滝は見えません。
暗い洞窟の中に入り、滝と対峙したその時、極上の美しさに感嘆の声をだせず、ただ呆然と立ち尽くしてしまいました。
到着まで凡そ30〜40分です。洞窟内に入るには必ず濡れてしまうので、沢靴か若しくは長靴をお勧めします。
洞窟はそれほど大きなものではないので、大人数で行くのはあまりお勧め出来ません。
それと写真撮影の場合、それほど引きが取れないので全景を撮るには広角レンズが必要だと思います。私の28mmでは収まりきれませんでした。
「美しいものには棘がある」薔薇の例えにある言葉ですが、この滝は正しくその言葉がピッタリだと思います。
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