鬼怒川 支流 野門沢
布引滝


所在地
栃木県日光市

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評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
訪問日 2009年06月28日
2023年10月07日
2023年10月

14年振り2回目の訪問。
甲子園のように言ってみました。

次に来るときは中段の滝壺を目指す。
その為には単独では危ういので仲間が必要。
行きたくても中々候補に上がらず(だって他に行きたい滝があるんだもん)、それと人を誘うのにやや抵抗があるので尻込みしてました。

此度、ふたつぎさんから「行こう」と言って頂き、頼もしい先輩と共に目指しました。

この14年で、布引の滝の環境は変わったようです。
それも悪い方へ。

@堅固なゲートが出来て、林道終点まで行けなくなった。
以前も鎖が張られており注意は促されていましたが、その鎖は外せないけど簡単に持ち上げる事が出来たので、車高の低い車は通過が出来ました。おかげで終点まで楽に行けたのです。

A遊歩道が整備されなくなった。
このまま観光地としての案内を消して廃道になる恐れがあります。

B前衛滝の高巻きがより難しくなった。
左岸の大崩落で高巻けなくなったとか聞いてましたが、一応存在してます。
ただ昔より危ないです。


昨今は林道の閉鎖や、遊歩道の廃止など、至る所で安全や危険回避に動いていて困りますね。

昔行った記憶はもう覚束ないけれど、よりハードな訪問になるのを覚悟でスタートです。


まずは龍王峡の無料駐車場でふたつぎさんと待ち合わせ。
深夜2時頃に現地について、空を見上げると輝かんばかりの星空。流れ星も見れて幸せに気分になった。

5時、無事に合流して現地へ向かう。
集落を通り過ぎた先で、一般車通行禁止の看板があり、その手前に大きな広場があるのでそこに駐車。


これより先にゲートがあって、その手前にやや広いスペースがあるのだけど、工事トラックの走行に支障が出るので、林道内には駐車しないよう気をつけましょう。

寡黙に自転車を押して歩き始めます。

距離は6kmほど、なげえ! しかも結構な勾配なんで疲れもハンパねぇ。


それでも帰りは絶対に楽になるので、今は頑張って押し続けました。
出発から90分でようやく林道終点。汗いっぱい掻いちゃいました。

ここからは整備された登山道を利用。
最初は登り坂。我慢の登り。
遠望出来る地点に着いたら、道は緩やかに下りながら滝に近付いて行きます。

昔より荒れた感じ。もう整備してないのでしょうね。道が消えてる感じもします。
それでも階段があったりベンチがあったり、観光地の名残が見られます。


美しいコケの広場を過ぎると、道は更に荒れて行きます。
川に近づく頃には崩壊している遊歩道の脇を通過する感じになります。
さて林道終点から60分で沢に降り立ちました。巨大である布引滝がチラホラ遠くに見えています。

沢に降りると道は完全に無くなりますので、濡れないように沢を上がっていきます。特に沢靴でなくても大丈夫な歩みです。


前衛滝の登場。それと左岸の大崩落地のお目見え。
崩落の凄さで前衛滝が霞んでしまう。沢の水がせき止められちゃってるし。

この前衛滝の既存の巻き道は崩落地からはギリギリ外れており、微かに残っています。
でもほんと微妙です。古いロープが垂れ下がっているのが有り難いですが、目印にするだけにしてロープを頼って登るのはよく無いと思います。


今回は中段の滝壺に向かいますので、崩落地をそのまま直登してみました。
逆層だけど滑らない、けどなんとも微妙の登りでした。

崩落地の壁面を横切らないといけないのですが、ここが今回とっても緊張した箇所でした。
鋭利で巨大な岩が、不安定に積み重なっています。
ちょっとした衝撃で崩落してしまうのではないかと想像すると萎縮して一歩が出なくなる。
でもここを通過するしかないので、雪渓の下を潜る時のようなドキドキ感を持ちながら何とか進みました。
崩落地を無事にやり過ごし、回り込んで来ました。


下部には枝沢が流れているのが見えます。
ここから崩落地の上まで登るのですが、結構な傾斜に見えます。
過去は垂れ下がっている太いワイヤーを掴んでいくと容易に上がれたのですが、それ自体が崩落したものと思われます。

より難度が上がった急斜面を両手両足使って登っていきます。
とにかくひたすら登ります。もう登るのに飽きたとトラバースして滝に近付こうとしても無駄です。崖が待ってるだけです。
登りすぎだろう、何度もそう思ってヘトヘトになりつつ諦めず上がると、唐突に優しい斜面になります。
それが終わりの合図です。


そこから前方の視界が見えて、微かに滝の姿が見える感じ。
緩やかに下っていく斜面は導かれるように滝に近付いていき、全体が見えてきました。
上段の落ち口が水平に見える位置にいます。

そしてそこから今度は下りの急斜面を滑落しないように気をつけて下りていくと、ようやく中段滝壺のすり鉢上に到着です。

14年前に立ち尽くし諦めたすり鉢に戻ってきた。

今回はあの時に足らなかったモノを全て持ってきました。
強力な仲間(師匠)・懸垂下降する道具・登り返しの技術と体力。
ロトの剣、鎧、盾を装備したのと一緒です。負ける要素はありません。

このすり鉢は蟻地獄。吸い込まれるように滝壺に行ったら戻って来れなくなる恐れがあります。
そこが最大のネックなので、戻ってこれる自信が無ければ絶対に下りてはいけません。

掴むポイントの乏しいスラブ岩にロープを下ろします。
支点となる太い木がスラブのすぐ上にあるのは優しい所。
2人共にロープを出す。一本有れば十分だけど念のためにもう一本も下ろしておきます。
あとはいつも通りの懸垂下降。


ここのスラブとラバーは相性良い感じで滑らない。
今回は30mをダブルで下ろしたのだけど、それではフラットな位置までは微妙に足りませんでした。
万全に準備するなら40mダブル(もしくは20mシングル)が安心です。

あの日あの時あの場所で、滝を見下ろして諦めて去った私。やっと戻って来れたよ。
やっぱりここは思った通り楽園だよ。


落差は50m以上か。巨瀑の部類に入るがもっと大きいと想像していたので軽く拍子抜け。
思い出が美化されるように、この滝も記憶の中でどんどん大きくなってしまったのだろう。

かと言っても絶景。滝と空が強調された景観。
豪の瀑布かと思いきや、以外と優しい飛沫が舞っており、対岸にいる限りは憩いの場となっているので、のんびりと鑑賞が可能だ。
勿論、近付けば容赦ない飛沫に襲われますけどね。

色々な所から滝が見れる、色んな表情の落下が楽しめる。
だけど、油断をしてはいけない。
ここは下段の落ち口。垂直の崖が常に覗いている空間なのだから。


季節は秋。飛沫は寒く、当たると一気に冷える。
ここまでの道中の紅葉は素晴らしいものがあった。見惚れて足が止まるくらいの良い発色に疲れを忘れさせてくれたのだけど、何故だか滝前だけは紅葉が弱い。
せっかく紅葉のベストタイミングに訪れられたのに、どうやらこの滝は紅葉時の魅力には欠けるものがあるようだ。
どれくらい居たかな。多分、一時間くらいの滞在だったと思う。
どうにも寒くなってしまって離脱するしかなかった。

帰りの蟻地獄スラブには気合いを入れる。と言っても道具で補助すれば落ちる心配はないし、垂直の崖ではないので高さに対する緊張感は低いので問題なく登り返した。


「忘れ物にようやく来れた」
ふたつぎさんは私よりも以前にこのスラブ前まで訪れて、引き返したようだ。
お互いに別の日に同じ悔しさのまま去り、そして同日にリベンジが出来た事を嬉しく思いました。

帰りの巻き道、あまり登らずにトラバースでショートカット出来ないかと試したものの、岩壁に阻まれた。やっぱりガッツリ登って下るしかないようだ。
大崩落地をまたも声を出さないように慎重に通り過ごして、前衛的の巻き道に乗って再下段の滝前に。


もう中段で思いっきり楽しんだ後なので、消化試合的な鑑賞で終わらせてしまった。


あとは気ままに帰るだけ。崩落地を過ぎて、登山道に戻ればのんびりな歩み。
遊びすぎたとは思わないけど、もう少しで日没だ。


林道終点に戻ってきた時点で太陽は完全に落ちていた。

ここからは待ちに待った自転車での爆走タイム!

全く漕かずにスピードは増していく。
思いっきり風を切る速さに目が傷む。
バイクに乗っていた頃を思い出しながら、林道終点から15分で車に戻って来れた。めちゃ早です。

無駄に長い林道に嫌気が差す道中。来年には工事が終わるようなので、その後には林道終点まで車で行ければ良いけど、たぶん無理だろうなぁ。

6:40 広場 出発
7:15 ゲート
8:10 展望台
8:30 林道終点
9:20 ベンチのある広場
9:50 前衛滝
11:40 中段 滝壺
12:40 出発
14:10 下段 滝壺
15:00 出発
17:05 林道終点
17:15 広場 到着


2009年6月

巨大な岩盤が立ち尽くす、物凄く大きな滝です。落差は120mと言われ、最上段は霞んで見えるくらい遥か上空から水を落としています。

とにかくデカイとしか言いようのない滝です。近づけば飛沫を乱舞させ豪快であり、離れれば全体の水の流れが見えて雄大。

落差だけではなく、更に素晴らしいのは全体がしっかりと見えること。隠れているのは1段目・2段目の滝壺くらい。いくら大きな滝であっても木々に隠れていれば迫力が伝わってきませんので、その点でも秀逸です。

この滝には威風堂々という言葉が似合います。胸を張り力強く水を落とす姿、正直言って惚れました。


この道中の難所は一つ。前衛滝の巻きに限ります。傾斜もきつく、落石ありの巻きなので慎重にならないと行けません。

まずは県道28号から折れて野門沢に向かう林道を進みます。この道はアスファルトでしっかりしています。
途中まで行くと、チェーンが掛けられているゲートが現れます。ここには車3台ほどの駐車スペースがあるのでここで駐車。

チェーンを跨いで進みます。アスファルトの林道を歩くのはいつもながら空しく思いますね。
この道には布引の滝の展望台が設けられています。そこから遥か遠くに滝があることが分かると共に、大きさも十分把握できると思います。

おおむね1時間ほどで林道終点。ここに布引の滝の案内があります。
ここから登山道になりますがほぼ一本道ですから迷う事はありません。

最初は登り。道は開けていて歩き易いですが結構上ります。

今一度、遠望が出来たところで道は2股に。山側に進む道と谷側に向かう道。
滝に行くので下りの谷側の道に進みます。

ここからは道が荒れます。整備がもうちょっとされると有難いのですが、丸太で仕切った階段のその丸太がグラグラで乗るとバランスを崩します。もう階段の役目になっておらず、ほとんど障害走のハードルのように跨ぐ箇所もありました。

道には二本、枝沢があり清い水を流してくれています。この水は助かります。そしてうまいです。

その枝沢を越えると、公園に出たのかと思うほど綺麗なベンチとテーブルが出てきます。奥地まで来たはずなのに、これをみると緊張感が若干萎えましたが良い休憩ポイントです。

さて、道はまだまだ下り。ちょっと分かり辛くなりますが、赤テープなどの目印があるので見失わないように。

本流が近づいてきて、最後は残置ロープを利用して沢へ着地。
ここからは左岸を進みます。水に入る箇所はありません。

やがて前衛滝が見えます。この滝の奥に巨瀑があるのです。

この前衛滝は左岸で巻きます。太い残置ロープがありますのでそれを利用して登れる所まで。足を滑らせたりしたら滑落してしまう急斜面なので慎重に。
高さの恐怖を超えて、ようやく辿り着ける滝です。その苦労以上に素晴らしいご褒美が待っているはずです。

ちなみに、ここから二段目に下り立つべく、前衛滝ルンゼ付近まで戻り左岸の岩盤をよじ登り近付きました。
真下が見える位置まで進みましたが、滝壺まではスラブのような掴み所のない岩盤になっており、行ったら最後、蟻地獄のように抜け出せないと判断し撤退しました。
複数人で行動し、ロープをセットし懸垂下降すれば何とかなると感じました。

この滝に行く際、森本さん(リンク参照)のレポを参考にさせて頂きました。大変分かり易い解説で本当に助かりました。ありがとうございます。
 

展望台から

登山道沿い

縦カット

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