白水の滝




Data 住所 白川村
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆(遠望)
◆◆◆◆◆(滝壺)
現地へ 大白川高原内。
国道156号から県道451号へ。そのまま進んでいくと大きな看板と駐車場があるので分かり易い。
駐車場から4・5分で展望台。
コメント 落差72m、真一文字の直瀑です。これほど綺麗に真っ直ぐに落ちる落差のある滝は少ないです。
落ち口から飛び出した水は岩盤に一切触れず宙を舞い、一点の滝壺に落ちる。その滝水は非常に柔らかく、また滝壺に落ちる音も優しく、正しく癒しの滝です。
滝だけではなく、素晴らしいのはこの岩盤。節理の岩盤はとてつもない威圧感を発し、押し潰されそうな迫力があります。
滝を見て癒され、岩盤を見て恐れる。恵みの自然と、脅威の自然を存分に味わえる空間で、その場にいると自然に包まれている感覚を持ち、何も考えずただ呆けてしまう自分が居ました。
この空間に、感情など入らない。ただ身を委ねれば良い。出来る事なら寝てしまいたい。
なんとも形容しがたい安らぎの場でした。

今回、北陸まで車を走らせた理由は家族旅行。前日は白川郷含め世界遺産を存分に楽しみ、その日は付近で宿泊。
そして次の日の早朝、一人ホテルを抜け出してこの滝を目指しました。
タイムリミットは8時。ホテルの朝食の時間まで。
白水の滝の展望台を後回しにし、その上にある白水湖を造る大白川ダム上で車を停めて、沢靴やロープをザックに詰め込み大白川ダムを下りていきます。
大白川ダムは東にある巨大な御母衣ダムと同じ造り方のロックフィル構造で、見た目ではダムっぽくない。
崩落地のように岩が積まれていて、浮石ばかり。足つきは悪いが岩場と考えれば問題ない。通常のコンクリダムなら立ち入り禁止だったりで手も足も出ない事を考えれば、この構造は有難い。
ぐんぐんと岩場(ダム)を下りていくと、コンクリートのダム構造が出てきました。ロックフィル構造はここで終わり。
ここでは有難いことに人工の階段が設けられていたので、それを利用して下ります。
コンクリ提体の最下部まで下りてみましたが、ここから沢にはどうあっても着地が出来ない。
左岸はただの崖。右岸しか進む道はないです。
ここまでは地形図で見て予想した通り。しかし、ここからが地形図と違いました。
右岸は傾斜はあるものの、崖ではない(崖のマークが記載されていないから)と判断していたのですが、こちらも見上げれば十分巨大な崖でした。
当初は一旦ダムから離れて樹木帯に入り、現れるルンゼで下りようなんて考えていましたが、沢からもダムからも離れられません。
しかしどうあっても右岸にしか進めないので、藪木が茂っている地点に入っていきます。
酷い藪。掻き分け掻き分け。眼鏡が枝に引っかかり地面に落ちる。幸い転がらずそこに留まってくれましたが危うくリタイアする危機。
しかしこの藪木帯も傾斜がきつい。はるか下には沢が見える。油断できない移動。枝から枝へ移る姿は、往年のファミコンゲームのドンキーコングを思い出しました。その時はそんな事を考える余裕はありませんでしたが。
藪木が終わり、開けた場所に出ました。そこは剥き出しの岩盤地帯です。
体を確保するには頼りにならない細い木や草しか生えておらず、高度感のある所です。かなり緊張する地点。
ここのトラバースはフリーでは安全に進めないと判断し、ロープを出しました。私が持参したロープは一本だけ。まだ最初の時点なので温存したかったのですが、万が一にも滑ったら奈落への一方通行が理解できる高度に出さざるを得ません。
ここは帰りも苦労するだろうとロープを残置して剥き出し岩盤地帯をクリア。
まだ沢に下りられる場所がないのでもう一度藪木帯に入る。
上は崖。下も崖。唯一の藪木帯は登ることも下りる事も許さないので、そのまま行ける所まで枝を掴んで移動。
再度開けた場所はルンゼ。ここに降り立てれば沢への着地は見えています。
しかし、ルンゼに下りるのも一苦労。ホールドの乏しい岩肌を2m程下りなければならないのです。お助け用の8mロープも用意しておけば良かったと後悔しましたが仕方ない。滑るようにルンゼに着地。
ルンゼを下ってようやく沢に着地。さてここからどうしよう。
下流には深い釜がある。沢靴に履き替えて水の中を進むのも良いが、腰辺りまで浸かりそう。
それはしんどそうなので、ここは飛び石を利用して左岸に移動。
左岸には巨大は節理の岩盤が聳え立っています。おそらくこの向こう側に白水の滝があるはず。
左岸のガレ場を登ってコブへ向かいます。ガレ場を巻き上げたら樹林帯に入りました。急斜面ではありますが木々が豊富なので掴みながら下りる。
ダムの沢の左岸はここで終わり。白水の滝のかかる沢の右岸にいる事になります。
緑の少ない沢模様から一転して、ここからは太い木々が陽を隠し、シダが生えている平地になりました。
ここまでくればあと少し。そのまま右岸を歩いていきます。もう急斜面はないですが、ところどころ草に隠れて岩が転々としているので転げそうになり危ない。油断は禁物。
かなり近づいたはず。しかし滝の落ちる音が聞こえない。
この滝は上流のダムの為に堰き止められており、観光放水していると聞きました(それ故に百選から外されたのです)。
もしかしたら、今日は休業日? 一滴も流れていない? そんな不安になりつつ進むと太くはないが確かに落ちている。
そうだ、百四丈の滝で感じましたが完全な直瀑は滝音が静かで優しいのです。
更に近づいてもサラサラと落ちています。まるで砂時計の砂が落ちているかのように静か。
優しさに包まれる、今までの緊張感が一気に解き放たれました。
時計を見るとダム上出発からジャスト1時間で到着。それ以上の緊張感が道中にはありました。
時間がない。もっともっともっとこの場に留まりたかったのですが30分で切り上げ。緩んだ気を引き締め今来た道を戻ります。
帰りの剥き出し岩盤地帯では残置しておいたロープが大いに役に立ちました。足が滑って体がずれ始めたとき、ロープがなければ落ちていたと思います。血の気が引いた瞬間です。
最後の上り、ロックフィルの岩場に疲労が隠せません。
さて車に到着。
装備をそのままに展望台に。
さっきまであそこに立ってたんだなぁと滝壺を見つつ写真撮影。
速攻で切り上げ。これまた後ろ髪引かれる状態。
さてホテルに戻らなければ。途中遅いトラック阻まれイライラしつつ安全運転。
ホテルに着いたのは8時5分。嫁さんにコッテリ叱られました。
他写真
訪問日 2009/06/24

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