所在地
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福島県猪苗代町
(←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます) |
評価(5段階) |
★★★★★
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難易度(5段階) |
◆◆◆◆◆ |
訪問日 |
2007年8月31日
2024年7月13日 |
いつかは挑戦したいけど、まだ行ける機会ないしゆっくり温めましょう。
そんな感じで計画リストに上がってるものの、特に実行に移す気は無かったのだけど、雨天のおかげで唐突にチャンスが巡って来ました。
2007年のアタックでは雨の中で突っ込んで、滝の手前まで来たけど、お腹くらいまで浸かる増水に追い返されて、あと100mの所で諦めて帰りました。
帰りは帰りで道は全てが川となり全身ずぶ濡れ疲労困憊で何とか駐車場に戻って来れた苦い思い出です。
今日の福島の天気は晴れ。
素敵な大倉小滝に逢いに来ましたよ。
でも、それだけではありません。大滝とのダブルヘッダーを予定しています。
同じ事を繰り返すのでは面白く無いですからね、グレードアップしていきましょう。
この大倉川の大滝は不遇の滝でして、小滝の方が大きいと言われています。
レポート見ても確かに大倉小滝の方が圧倒的に大滝感があり、なんで小滝? なんで大滝? と揶揄されているのです。
そして、大倉小滝には正しいルートがあるけれど、大滝にはまるで案内がない事。
下流から向かうには長い林道歩きと沢登りで一泊が必要になることと非常にマニア向けとなっています。
麓からの一泊二日コースを考えてましたが、今回は1日しか取れない。
だけど大滝も行ってみたい。であればダイレクトに大滝アタックしてみようと目指した次第です。
起点となるのは大倉小滝と同じで「浄土平ビジターセンター」の駐車場。早朝の出発となる事から、日没前にここに止めて車中泊しました(本来は入場料が必要だけど、営業時間外は普通に入れる)。
おかげで7時間以上はぐっすり寝れて、体力回復しました。
辺りが白み始めた頃に、早々に出発です。
最初は観光地らしい木道。素敵なハイキングってなもんです。
道は緩やかに標高を上げていきますので、次第に息が上がり汗を掻き始める。
距離は長いので、寡黙にガンガン進んでいきます。
所々に熊さんの足跡があって不吉な感じ。
途中の姥ケ原の分岐がちょっと分かりづらくて、目指す神社の案内は小さいし、道も凄く細くなっているので最初は分岐に気付かず真っ直ぐ行ってしまった。
無事に軌道に乗ったら、ちゃんとまた明確な登山道に戻って一安心。
そして駕籠山稲荷神社の鳥居に到着。既に歩き始めてから1時間30分が経過。
昔もここを通ってるはずだし、同じように休憩したはずだけど、何にも覚えてないや。
大倉小滝に行くには北に向かいますが、大滝を目指すには南に進路を取ります。
この南に向かう道なんて歩く人がいるのだろうか? 藪で埋まってるんじゃないかって心配でしたが、しっかり登山道で快適な歩みでした。
先人のレポートでは大倉川に下りるのに懸垂下降を要しているのが分かりました。
Google マップを見ていると、それよりも北(大滝に近い)にある沢筋の方が崖っぽくなくて緩やかに下りれるのではと考え、GPSで位置確認しながら南進します。
大滝に一番近い沢筋を確認。ここでも良いか? でもこの筋は幅狭く怪しいのでスルー。
そして本命である沢筋に来ました。
来たけれど、、、、笹藪しか無くね?
登山道には沢筋は見当たらず、見えるのは笹の密集だけ。
恐らく、ここを下っていけば徐々に沢が現れるのだろうけど、ただの壁だぜ。
下るのだから、笹藪を押し倒していけば何とかなる。しかし、もしここが何らかで行けない状況に陥ったとき、登山道に戻ってこれるだろうか?
「戻るのには時速100mも出ないかも知れませんね」
同行者のかっさーさんも、その笹の濃さに呆れている。
登りの笹藪は地獄の歩み。必死こいて登ってやっと10m進んだなんてよくある事。
もし駄目で引き返したら、大倉小滝に行ける時間も体力も無くなり、虚しさを収穫して帰る羽目になる。
不退転の決意が必要だ。引き返せない、片道切符の始まり。
行くか行かないか。
結果、好奇心が勝った。
って訳で笹の海にダイブする。
うぉー、入っちまったぞ。もう戻れないぜ〜(笑)
そうやって笑って自分を鼓舞する。
ガムシャラに笹を漕ぐ。濃すぎる所は肩を当てて押し込む。
懸命な作業を200mは続けただろうか。
我々の動かす笹の音しか聞こえなかった空間に、微かに別の音が耳に入ってきた。
チョロチョロと水の音が聞こえる。沢の始まりに来たのだ。
音の発生源にたどり着くと、もう笹藪の世界とは断絶。これでようやくのんびり歩ける。
あとは大倉川まで何にもなく下って行ければ幸せだけど、どうかな?
沢筋はとても歩きやすく、水も少ないので平和な感じだった。
が、やっぱり現れたよ崖が。
うーん、結局この沢筋も同じだったか。
ロープ使わないで巻いて下りれないか検討したけど、藪が濃いし斜面もキツいので巻く方が面倒くさい。
だからここでハーネス装備して懸垂下降。
右岸の太い木を支点にして、30mをダブルで下りる。これで終わりかと思いきやまだ岩壁が続いている。
今度は左岸の太い木を利用する。ここだけ濃い踏み跡があったけど気のせいかな?
これまた30mダブルで下りたが、安全圏まではたどり着けず、途中からかっさーさんの30mも繋げて、60mダブルで岩壁下に着いた。
見上げると、水量あればカッコ良い岩壁。とりあえず無事に下りられた事に安堵。
難所はここだけ。沢筋を緩やかに下っていって、優しく大倉川に合流出来た。
あとは10分ほど穏やかな大滝川を遡れば大滝の登場です。
落差は20mちょっと。大きな滝壺と左に突き上げる岩壁がトッピングされている。
か細いけれど右からは枝沢が滝となって落ちていて、両門の形を作っているのも面白い。
おいそれと来れる場所ではない故に、人の気配が全くしない秘境感も高評価の一つ。
良い雰囲気で、十分満足出来る滝であることは間違いない。
でもね、大滝を目の当たりにしてやはり納得してしまいます。圧巻は大倉小滝だとね。
それでも良い。大滝の魅力は存分に伝わったし、ここまで来た価値は確かにありました。
ちなみに、かっさーさんは大倉小滝よりも先に大滝を見た滝ヤとして希有な存在となった。
ここまでは順調。時間も計画範囲内に推移。
一つ目の壁(沢筋下降)を無事に終えた。
次の壁はこの大滝。その高巻きだ。
どのレポートを読んでも大滝の巻きは右岸で、大倉川に戻るには懸垂下降を強いられている。
巻きの始まりはここだろう。突き上げる岩壁のすぐ左。小石と細い藪が広がるガレ場。
踏み跡は無いけれど岩壁の脇を上がっていける。
急斜面だが、落ちる心配はない。しかし足だけでは登れないので、藪を掴んでの全身運動となる。
50〜60mは登っただろうか。ずっと直立で太刀打ち出来なかった岩壁に弱点が見えた。
微妙な砂斜面に足場を作ってトラバースすると岩壁上に出れた。
これ以上は登らず、かと言って下方はほぼ崖なので下りれもせず。
そのまま水平移動で上流方面に。
わりとすぐに崖が出てきて行き止まり。
大滝を越えているのは確実なのでここで懸垂下降の準備。
目の前にはチョロチョロと流れる枝沢の滝があり、それを横目に見ながら30mを繋げた60mダブルで下りる。
沢ヤさんはその枝沢の見える手前の急斜面を木を頼りに下りてから、懸垂してるみたい。
限界まで下りれば20mダブルでいけますが、そっちの方が気を遣うので一気に下りられるポイントを選びました。
これにて二つ目の壁である大滝の高巻きを終えた。この巻きだけで50分掛かった。
そして第三の壁。大滝の上にある登れる滝群の突破である。
沢ヤさんは問題無く越えているが、私達が同じように行けるとは限らない。
無理なら引き返すのだが、周りは全て崖(それに大滝もある)なのだ。
今、下げているロープを回収してしまうとこれまたもう戻る事が出来なくなる。
再びのポイント・オブ・ノー・リターンの選択に迫られる。
引き返すか、突き進むのか、どっちなんだい!? なんて大胸筋に問い掛ける余裕は全然ない。
心配ないさぁーと私の頭の中の大西ライオンが叫ぶ。それに勇気を貰いロープを引き抜く。
ありがとう大西ライオン。でもなんか不快だから頭の中の消しゴムで消しといた。
釜を持つ滝の連続。いずれも5m程の落差で大きくはない。
釜に浸かったり、落ち口を渡渉したり、ちょっと泳いだり。
その滝群の距離は100mくらいだと思う。
コレが、この滝群の突破が、ものすごーく楽しかった!
ちゃんと登れる滝だし、深い釜は神秘的だし、見てても動いても、もうとにかく面白すぎる。
ここまで来るのは大変だけど、この区間の遡行はめちゃ最高なんでお勧めです。
滝群を越えると大岩が出てきたりゴーロになったりの繰り返し。
難しい訳ではないが、大岩は容易には越えられないガチの大きさで、どうやってその上に行けるかは迷路のようで悩んだりした。
左右のそびえ立つ崖はずっと健在で、その景色は壮大感がありまくりで飽きることはない。
そろそろ小滝のアプローチルートに出会うのではないかなと左岸をチェックしながら進むもよく分からない。
ルートが見つからないと登山道に復帰するのは非常に面倒になる。
ちょっと困ったなぁと心配になりつつ歩みを進めていると、濡れた足跡を発見。
むむ、この下足痕(ドラマの科捜研、大好きです)はモンベルのサワークライマーに間違いない。
乾いた岩に明確に丸い点々が濡れて残っている。
まだ温かい、犯人は近くにいるぞ!
そして足の向きからして大倉小滝へ行くはずだ! 登山道から下りてきた滝ヤに違いない!
必ず、ホシを上げる! そして犯行手口(登山道までの道程)を吐かせる! 願わくば同行頂く!
むぁてぇーいルパーン! と銭形警部になった気分で遡行を進める。
沢山の足跡を追い掛けながら進んでいくと大倉小滝が見えた。
そして滝前には2人の存在が確認出来た。とうとう追い詰めたぞ、もう逃げられまい!
早速、現行犯逮捕の為のご挨拶。
お互いに目を合わせて会釈をする。
あれ? なんか見たことあるイケメンだ。
なんとここ最近色んな滝でご一緒しているアライさんでした。
わぉ、かなりビックリ。
今日の予定は代替案だったので特に誰にも伝えてなかったのに、まさかこんな辺境な地でご挨拶するようになるとは、運命的な出会いに感動。
もう一人は滝ヤであるが、山もめちゃくちゃ登る体力バリバリのエナさん。こちらは本当に初めましてなのでドキドキ緊張した。
お互いに自己紹介を終えたら、手錠をつけて二人を確保(嘘です)。
帰りはご一緒させて下さい! と懇願すると快く頷いてくれた。あざます!
第四の壁、登山道への復帰もこれで保証された。生きて帰れるバンザーイ。
って喜んでいる場合ではなかった。
今は大倉小滝に太陽が当たっているベストビューなのだ。
お二人の滝の対峙時間を奪って申し訳ない。
さあみんなで滝を楽しもうぞ!
ゴッツかっこいい直瀑。見事な一本。太い水柱に打たれ暴れる滝壺。
周囲に立ち塞がるこの吾妻の絶壁を見事に切り落とす姿は力強さの象徴だ。
真の男たる堂々した立ち振る舞いには敬意を表してしまう。
大滝も良かったけど、やっぱりこの小滝は最強の小滝だ。恐れ入りました。
もっと近付きたくて、ザックを浮き輪代わりに滝壺を突っ込む。
かなり波が立ってて思うように動けない。岩壁を手掛かりにして進むも押し返す力が強くて辿り着けなかった。
って事をしてたら溺れそうになるし、体が震えてしまうしヤバい状態に陥る。
乾いた服に着替えてもキツい。バーナーでラーメン茹でて食らったら何とか震えは治まってホッとした。
長く滝壺に入りすぎたみたい。それでいて滝下に行けなかったので虚しい行動であった。
もっと泳ぎに自信があれば辿り着けただろうになぁ。悔しいや。
やっぱり水泳教室通おうかな。
帰りの道中も長いし、太陽の当たりもズレてしまったので撤収。
アライさんを筆頭に4人パーティーで進む。気分はドラクエ3だな。
登山道へと向かうルートの起点には小さいながらもピンクテープが付いていた。全然気付かなかった。
藪が多く、視界が悪く、それでいて急斜面の道。所々にテープが木に巻かれているし踏み跡もある。
けれど道を見失う時があって、その度にアライさんが的確に導いてくれる。
我々だけでは迷ってしまっただろうなぁと痛感する不明瞭さに、アライさんとエナさんの背中が物凄く頼もしい。
お二人の体力は相当なモノで、急斜面の登りなのに軽快な足取り。一方の私たちは鈍牛のごとくゆっくり。それが精一杯。
完全に足を引っ張っている。
「チャオズは置いてきた。この戦いにはついていけない」
「あぁ、そのほうがいい」
アライさんとエナさんにリストラされてもおかしくないけど、笑顔で待っててくれて有り難かった。
登山道へ復帰。この小滝へのアプローチ道は、真っ直ぐに登るのではなく右へ左へグニャグニャ曲がりながらの分かり辛いルートだった。
朝に休んだ駕籠山稲荷神社に戻った。
これで終わりではなく、まだ駐車場までは長いのよね。
同じルートで帰るのも味気ないので、沼ルートを選択。
それほど距離が変わる訳ではなく、同じくほぼ下りなので違う景色を楽しんだ方がお得よね。
無事に駐車場に到着。
アライさんとエナさんを拘束していた手錠を外して解放(嘘です)。
お二人のおかげで、しんどいだけの帰路がとても楽しくなりました。ありがとうございました。
そして2日間共にしたかっさーさん。共に歩んでくれてとても頼もしかったです。次回こそ岐阜に挑戦しましょう! (もう雨で延期はいやだ)
4:20 浄土平ビジターセンター 出発
5:15 姥ケ原
6:00 駕籠山稲荷神社
6:30 沢筋 下降開始
9:00 大倉川
9:30 大倉大滝
10:00 出発 高巻き始め
10:50 巻き終わり
12:25 大倉小滝
13:50 出発
15:05 登山道 復帰
15:40 駕籠山稲荷神社
17:10 鎌沼
18:05 浄土平ビジターセンター 到着
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2007年 訪問
小滝と言う可愛らしい名前の大きな滝。断崖絶壁の空間に一条の太い滝が流れ落ちる姿は勇ましく幽玄である。
尾瀬の「三条の滝」を目指す行程に似ていて、最初は軽快な木道、その後に登山道、そして最後は急降下。本当に似ているルートですが難易度はこちらの方が高い。
当日の天気は雨。それでも日程を変える程の余裕がないのでカッパを着て出発。
朝方はまだまだ穏やかな雨だったが霧が凄い。前方の視界を消していて、滝を目前にしても見えないのではないだろうかと不安がよぎった。
雨は進むほどに強くなっていく。それでも足は止めず進むが、予想以上の上り下りで体力が減る。
駕籠山稲荷神社を抜け、進路を谷地平へと北に進んでいくと微かではあるが大倉小滝へと進む分岐点がある。
テープなどのマーキングがされているので見過ごすことはないと思う。
ここからが本番。およそ200mの急降下です。
まず最初に迎えるのが背丈くらいある笹。先が見えない不安があるけれど、足元をみるとしっかりとした踏み跡があるのでそれを辿る。
笹の群集が終わるとそこからは急降下です。足場はしっかりしているので慎重に進めば問題ないと思いますが、それでも足の置き場所やバランス確保に神経を使います。
やがて大倉川を目前にし、そのまま左岸を川沿いに進みます。
ようやく滝を目前に。雨が降りやはり霧が周辺を包み、見えづらい。しかしお陰で水量が増えて勢いの強い予想以上の豪快さを感じられました。
滝の真下に立ちたいと思いましたが、水の流れが強すぎて見えるところまでで断念。水が穏やかであれば真下にいけるかなと次回の課題を残し背を向ける。
帰りはさらに雨が強くなり、道は川となり、木道は見えなくなり、非常に困難な行程でした。
雨が降っておらず、軽快に進めれば時間短縮も出来ただろうと思います。
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