みんなから評価が高い滝。
とても奇瀑、とても綺麗。意外と大きい。
それが伝わってくる感想。
だけど写真を見てもどうもピンと来ない。
この素晴らしさは自分の足で目指し、現地に立たないと分からないでしょう。
そんな訳で、このレポートも魅力を伝える事は出来ないと思う。
本当に凄いから、是非とも訪れて頂きたいです。
前日の立合川はほぼ徹夜でも行動していたので、夜はすぐに寝れるかと思いきや、暑すぎて寝付けず、案の定ガッツリ寝坊してしまった。
貴重な紀伊半島の時間が失われたのは悔しい。でもすっごく疲れてたんだろうなぁと理解をして、自分を怒らない事にした。
迷滝と同じように国道168号から県道235号を進んでいき、舟ノ川沿いをずっと走る。
林道の終点に車を止める。道は左岸へとまだ続いているけれど、車が走れるのはここまでです。
そこから見える川は既にめちゃくちゃ美しい。
早速入渓して歩いていく。よくよく滑ると聞いていたが、確かにナメ床はヌルヌルだ。水の美しさに気を取られていると転んでしまう。慎重に歩こう。
ちなみに、林道終点から右岸にもまだ平坦な道が伸びており、それを利用すると最初のナメ床を通過してから入渓出来るので、時間短縮になります。
右岸より無名の滝が現れるとナメ床は終了して歩きやすくなる。
さて次に現れるのは深い淵、これは見所の一つでしょう。その水の美しさといったらマジで宝石並みだ。
普通に右岸から越えられる。
でも帰りはここをあえて浮かびつつ流れよう。そう決めた。
中間まで来たところでアメ止めの滝が現れる。
ここも青く深い淵が手前に置いてあり素晴らしい。
この滝は淵に入る手前から、左岸から高巻きます。
ここだけは登山道と思えるくらい明確な踏み跡があるので、とても分かりやすいです。
その後は普通に遡行しますが、最後の大岩群はちょっと厄介。
真ん中にドンと構えた大岩の箇所を越えるのに苦労しました。
過去のレポートを読むとその大岩にロープが下がっていたようですが、私が訪問時はありませんでした。無くなっちゃったみたいです。
どこから越えるか探りましたが、真ん中からではやはり突破できなくて、仕方なく右側の小さな斜瀑を登りました。滑りやすく、もがきながらなんとか越えられました。
これを越えるともう難しい所はありません。
前方に滝の上部が見えてきました。
ここまでピッタリ1時間かな。もっと時間掛かると想像してたので、こんなに早く到着とは驚きました。
平坦な沢を進んでいくにつれ、滝が大きくなっていく。
確かに滝が途中から見えなくなる。これは写真で見た通りだ。
うん、それに意外とデカい。ここまでは想像通り。
そして滝の全景が見えた。
な・ん・だ・こ・れ・は・・・
見た瞬間、こいつを思い出した。
魔界村のボスの顔(古!)
青く輝く滝壺と、歪に抉られた岩盤。深く高い洞窟状となった右岸側は魔境のような危うさ。
そこに魅惑的な青い滝壺が艶美に輝く。
怖い、素敵、ヤバい、綺麗って感じで感情がグニャグニャと曲げられる。
いや感情だけでなく、この滝前の空間自体がねじ曲がっているように思ってしまう。
これは奇瀑だ。そして一級の綺麗さだ。
間違いなく誰もが感動するだろう。やはり来て良かった。
ちなみに、LOVE PSYCHEDELICOのラストスマイルを初めて聞いたときとおなじくらいの衝撃でもありました。
さて滝を楽しもう。
滝に接近するには岩壁を登る必要がある。有り難い事に、ロープが下がってるのでそれを利用する。
真正面に立つと穴がよく分かる。
滑り落ちる滝水は怪しくも美しい青い滝壺に吸い込まれていく。
深淵をのぞくとき、深淵もこちらをのぞいているのだ。
誘惑に駆られて深淵に入ってしまいそうになる。本当に危うい美しさだ。
一呼吸して滝前に戻る。
そして見つめる洞窟内の滝壺。
暗く輝く。
この中に入ってみたい。
誘惑に駆られる。
多分、そんな気持ちになるだろうと予想していたから、ウェットスーツを持ってきた。
さあ覚悟を決めて深淵に行こうではないか。
今は真夏なのに、3mmのウェットスーツ(上だけだけど)を着て滝壺に入っても、キンと冷えているのが分かる。
長くは留まれないのを理解し、泳いでいく。
マスクを装備しているので、滝壺が良く見える。水の青が研ぎ澄まされたナイフかのように美しくも怖い。
右壁を触りながら進むと、狭まった所に乗れそうな段がある。その岩棚に上がりたい。
岩棚の淵はしっかり指が引っ掛けられて、ひとまず泳ぎを終えて静止する。
が、それより先は手を乗せられるだけで掴める凹凸がない。
中腹にいると水流が体に当たり、力を入れてないと下流へ戻されてしまう。
何とか這い上がろうと手を伸ばすも岩肌に触れるだけでどこも掴めない。
足場はないかと手探りだけではなく足探りしてもどこにも引っかからない。
流れるプールの吹き出し口付近にいる感じで、横から水流を受けつつその場で耐える。
手を伸ばして探る。掴めない。ちょっと体が流されるから体制を整える。
手袋をしているが、岩を掴もうと探っている内に半分脱げてしまった。
両手を離すと流れてしまうので、片手で岩の淵を掴みながら、口で噛んで手袋を元に戻す。
で、また体制を戻す。
これを3回は繰り返したかな。ずっと全力出してるから、猛烈に疲れる。体も冷えてきた。
もうダメかなって思った時、岩を掴んではいないが、手袋の摩擦がうまく効いたのか体が持ち上がり、膝が岩棚の上に引っ掛かった。
無理くり這い上がり、岩棚の上に立てた。
深淵もこちらをのぞいているのだ、その深淵側から滝をのぞく。
落ちてきた滝水の勢いで波打つ滝壺。舞う飛沫。
洞窟内はラピスラズリのような綺麗さ。もう言葉にはならない。迫力あって美しい。それだけです。
感動しまくってて、まだまだ見ていたいけど、全身が震え始めてしまった。この深淵には10分も居られなかったと思う。
ちなみに、この岩棚に乗らず、もっと先(滝の正面)まで泳いでいけば簡単に上がれたかも知れません。
でもその先は水流が強かったので、とても自分は進む気になれませんでした。
泳ぎが達者な方なら、正面まで泳いじゃった方が良いと思います。
帰りはただ滝壺に入れば流されるので楽なものです。
当然ながら滝前に戻っても震えが納まるはずがない。
少し沢を下流に行った所で太陽の明かりがあったので、そこまで移動。
猗窩座は「早く、、陽光の陰になるところへ」と逃げたが、私は逆に陽光を目指した。
太陽の暖かさに包まれて何とか回復したけど、8月でこの寒さです。
美しいけど厳しい環境でした。
この記事を書いてても、桶側の滝の素晴らしさを思い出すと惚けてしまう。
ただ、やっぱりこの魅力は伝えられていない。
メイちゃんがサツキにトトロの説明した時と同じくらい、もどかしいのです。
マジで行ってみて。本当に凄いから。
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