板取川 支流 川浦谷川 支流
海の溝谷
(シルクの滝)




所在地
岐阜県関市

地理院地図 (←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます)
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
訪問日 2023年8月11日

今回は滝巡りではなくゴルジュを下降して楽しむキャニオニングを行いました。

美しき水を讃える川浦渓谷。その中でも大きな釜を持つ海の溝谷へ。
深い釜や淵の連続する谷なので遡行は超絶難しいです(勿論やってる猛者はいる)。
でも下るのなら素人でも楽しめるだろうと出陣です。

今までの滝巡りで滝壺を泳ぐ時はありました。ただそれは短く、あってもプカプカと30秒くらい浮いているだけで、どちらかというと瞬間的なものでした。
しかし今回の谷は飛び込み有り、長い泳ぎ有りなので、無事に帰って来れるかめちゃくちゃ不安でした。

まずは観光地である川浦渓谷の展望台を目指しました。
展望台用の駐車場に止めて、ちょっと歩けば高い橋から川浦渓谷を見下ろせます。


あそこに行くのかー、深そうだなー、溺れないかなー、心配だなー、怖いなーって稲川淳二ばりに呟きました。

ちなみにこの橋からは、高い崖から流れ落ちるシルクの滝が正面に見えます。

とりあえずこれで下見は終了。
車に戻って、準備を始めます。

今回の私達は下るのが目的なので、谷の上流からのアプローチとなります。

車はこの川浦渓谷駐車場に止めたまま(キャンプ場の方が近いのだが有料なのでパス)来た道を戻るようにトンネルを通過し進んで行きます。


トンネルを抜けた先、400m程歩くと北に伸びる林道と合流しますので、鎖の柵を跨いで北進。
海の溝口の左岸に設けられたら林道で、途中には核心である大釜が遠望出来ました。


地形図を見ながら、ゴルジュの終わりを確認。
まだまだ林道と谷が遠く離れているので、近づいてくるまで北上を続けます。


すると林道からでも海の溝谷の流れが見えてきました。
斜面も下降出来そうな塩梅だったので、とりあえず下りてみると明確な踏み跡が見つかり、スムーズに入渓が出来ました。

入渓して分かる名前の由来。
確かにここは海の匂いがする。爽やかな感じではなく、堤防とかテトラポットとかで感じる磯の香り。
不快な程ではないですが、爽やかとは違うかな。


でもでも、水の色はやはり綺麗なのよ。茶色い岩肌に、透き通る青い水。
なるほどこれが川浦渓谷の魅力ですか。
納得の美しさに早々に感嘆とさせられます。

水の流れ同様に下って行き、ゴルジュの形成が現れる。
ここからはほぼ逃げ場なしの濡れっぱなしになります。


(ふたつぎさん提供)

とりあえず深い所の登場。ちょいと高い所から飛び込んでみる。
防水パッキングのお陰でザックが浮くので、体も浮かぶ。

これなら溺れる心配はないかな。それよりも心配なのは防水パッキングが破れてカメラ諸々が浸水しちゃう事だけど、それはならないよう願うだけです。


次々と現れる釜に「えいや!」と飛び込む。その度に口や鼻に沢の水が入ってきますが、ここの水は臭いと同じくいい感じはせず、かなり苦いです。
せっかく素敵な水の色を讃えているのに、ちょい残念な所です。


飛んで浸かって、浮いて流れて。それを繰り返すのだけど、唯一巻いた箇所があった。
チョックストンのある斜瀑がそれ。
エライ渦巻いてるし、深さが全く分からない。ザイル張ろうにも支点が全然ないので厳しい。
止む無く左岸から巻きました。
沢への復帰には懸垂下降じゃないと厳しく30mあれば大丈夫です。ザイルを使ったのはここだけでした。


やがて太陽が昇ってきて、ゴルジュの中にときおり光が差し込んで来ました。こうなると狂喜乱舞。美しさが何倍になったのか分からないけど、ゾクゾクが止まりません。

プカプカと浮かび、両岸迫った岩壁の中を下っていく。
圧迫感のある狭さの中に輝く水の流れ。
まるで盗賊が宝を隠していた洞窟に入ったような煌びやかと危うさを持っている。

さてさて、一際大きな釜を持った滝が登場。3mと言われてるけど、上から見るともっと高く感じます。
今日一番のジャンプが求められる。

こえーよー、溺れたらどうしよう、とか立ち尽くしてしまった。
そんな不安感を払拭するかのように、はんぺんさんが「スリー、ツー、ワン!」と叫ぶ。



ゼロ!と同時にアンさんが飛んだ。そしてそのまま釜を泳いで淵に辿り着いた。
「カウントダウンすると、覚悟が決まるんですよ」
そう、はんぺんさんは笑ってる。
バンジージャンプを見てるとスタッフがノリノリにカウントダウンしてるけど、それと一緒なのかな。

振られたら乗っかるしかない。ダチョウ倶楽部の「押すなよ」とか「どうぞどうぞ」のように、その勢いに乗らないのは芸人として失格だろう。
くっそー、だったら怖いって言ってても飛ばされてしまうではないか。

カウントダウン、なんて恐ろしいシステムなんだと恐れると共に、その笑いとノリが感覚的に染み付いているのに驚いた。



で、みんな飛んだ。
無事に淵に上がれた。


この大釜を持つ滝の空間は海の溝口のハイライトであろう。
開放感はあるし、水は青いし深いし、とても癒される。
悔しかったのは全面に太陽が当たらなかった事。来たときには半分が影に入ってしまった。
もっと早い時間に訪れれば良かったな。

ちなみにここでは、ゴーグルを装備して滝壺に飛び込んで遊んだ。
水中から見る水の青さは、透き通りすぎて綺麗すぎて、感動は勿論だけど余りの美しさに逆に怖くもあった。


この大釜を終えてもまだまだゴルジュは続く。
深い淵、深い釜が現れるのは当たり前で、ずっとプカプカして流されたり漕いだりして下っていく。
移動距離はほとんど進んではいないながら、かなりの疲労感。
水の中にいるのは、通常の歩きよりも遥かに疲れます。
もう泳ぐ(浮かぶ)のはええわと食傷気味なのだけど、まだ出てくる。
上を見上げると橋が見えた。


川浦渓谷の観光地の橋だ。朝は橋から渓谷を見下ろし、午後は渓谷を橋を見上げる。やっとここまで来れたぜという安堵感が大きい。
ちなみにこの橋から見えたシルクの滝の真下にいる訳だけど、谷の中からだとポタポタの湧き水が流れ落ちているってだけで、滝という認識が出来なかった。

やっと本流。あとはキャンプ場まで下るだけよ。
で、そのキャンプ場までがまたしんどかった。


ずーっと浮かぶ。足が全くつかない深い流れ。50m以上は地面に着かず水中を流された。
ザックの浮力頼りに顔を出しているのも意外とバランス感覚が必要で筋肉を使っている。
油断すると口に水が入ってくる。呼吸が乱れる。
あー、やばい、筋肉が指令を無視し始めている、沈むかもって思い始めた頃、キャッキャと陽キャの声が聞こえてきた。


家族連れが浮き輪で水遊びしている。それは豊かな夏の景色。
輝かしい子供の笑顔、水着で心地良く川で遊んでいる。
そんな中に、ヘルメット被った洋服のままのおっさんが上陸。
あまりにも場違い。TPOをわきまえていない。
コーディネートはこーでねぇととは真逆のスタイル。
奇特な目で見られる異様なゴール。でも疲れすぎて、川岸に着いた事への安心感でそんな事どーでも良かった。

一呼吸を終えたら車へ向かう。
ちょいと下流に行った所から左岸の斜面に踏み跡があって、そこから道路に戻れる。
のんびり歩いて車の置いてある駐車場に到着。
無事に帰って来れた事に感謝。とんでもなく楽しかった事に感激。
そして足にヒルが付いていた悲劇。

駐車場に戻ってきたのは16時前。
まだまだ滝活出来る時間だけど、もう今日は十分。
速攻で温泉を目指しました。


9:00 川浦渓谷 駐車場 出発
9:20 海の溝谷沿いの林道
9:55 海の溝谷 入渓
12:15 大きな釜
14:20 川浦谷川
15:05 キャンプ場
15:40 川浦渓谷 駐車場 到着


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