ここ最近は凄い人におんぶにだっこ状態で、全く単独で行っていない。
それに伴って、行きたい滝を見つけた時に、誰を誘えば良いかと他力本願な発想になってしまっているのに気付き、さすがにそれはマズいと反省しました。
ここらで単独で挑戦して、頼りっぱなしの気持ちを払拭しなければ。
そこで選んだのが、この滝でした。
白山、北陸の勇。
百四丈の滝を筆頭に、ホワイトロードの滝群など素晴らしい滝を形成している。
その百四丈の滝の隣の沢にある豪の「紅滝」に挑戦して、弛んだ気持ちに活を入れよう。
この滝をセオリー通り沢登りで向かう場合の難所は一つだけ。距離です。
長い林道、長い谷の遡り。二泊三日のレポが多いように思います。
確かにこの目附谷を素直に進んでいけばエラく歩かされるのは分かりました。
そこで気になったのは南西にある鳴谷山。ここを経由すれば日帰りで行けるんじゃないかな? というのが今回のチャレンジお題目に決まりました。
長い一日となるのが分かり切っている当日、道の駅「恐竜渓谷かつやま」で車中泊をして3時30分に目覚ましをセット(本当は「山の駅よろっさ」で泊まろうと思っていたけれど、夜間はトイレが利用できないようで諦めた)。
で、3時30分に起床。
あと五分寝ようとちょい二度寝。
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起きたら5時でした。
うぉー、マジか! 遅刻じゃねぇか!
自分の顔を張り手して速攻でハンドル握って出発。
計画としては、鳴谷山の山頂から鳴谷を下って目附谷に向かう予定。
まずは鳴谷山への登山ですが、王道は西にある林道終点から向かう登山道になります。
この林道がチョコチョコ通行止めになっているので、とても心配です。
案の定、国道から林道に入った先で鍵付きゲートが出てきました。
ここから鳴谷山に向かうのは、標高差600m、距離も6km追加になるのでかなりキツい。
山頂に着いて戻るだけで一日が終わっちゃいます。
て訳で、第2プランへ移行。
鳴谷山の南に林道が伸びています。この道がどこまで進めるか分かりませんが、走れる所まで走っていけば近いかもと考えました。
デッコンボッコンのダート道で、スピードは出ないけれど走れてはいる。
運転に集中して進んでいくとゲートが出てきました。そこは標高で1000m位まで行けたので、これなら日帰り可能かなって判断しました。
ちなみにゲート前にはギリギリで一台だけ車を止められるスペースが設けられていました。
まずは林道歩き。車で走れるくらい綺麗なダート道です。
それを3km程進みました。所々に現れる枝沢。これを遡っていけば鳴谷にショートカットで行けるかも知れないと思いましたが、もし滝が出てきたりして処理に時間を食ってしまうとスタート早々でギブアップになっちゃうので、ここは我慢して明確に判断が出来る林道を進みます。
後半になり、崩落地。
それを過ぎると笹藪が密集し始め、歩き辛くなります。
が、まだ道としては健在なので掻き分けるのがやや面倒ですがスピードは落とさずに進めます。
林道終点。ここまで5km。熊さん除けの鈴の音を聞きながら寡黙に歩いて来ました。
林道終点から、登山道まで道は続いているはず。それを物語るように終点にはピンクテープが張られていました。
それを辿れば登山道に合流出来るだろうと簡単に考えていました。
しかしこれが誤算になります。
ピンクテープから3mも進むと、濃厚な藪の壁に塞がれました。
巨木が横倒しで倒れており、松の枝が伸びまくっています。
松やシャクナゲは枝が太いし、折れないしで、掻き分けるのは容易ではありません。
光が届かないような藪の濃さに、一歩も進む気になりません。
こんな事になるのなら、手前の沢を遡上した方が良かったとつくづく後悔。
だからと言って戻る選択肢はなく、やむなく脇にある尾根を上がっていき登山道を目指しました。
先程よりは藪は薄いですが、折れない松の枝が進行をブロックしているのは変わらず、なるだけ薄い箇所を選んで登って行きましたが、時間も体力も奪われているのに距離は稼げないもどかしさに苛立ちます。
25分、藪と格闘し、やっと登山道に乗りました。ちなみに林終点から登山道にぶつかるまでの距離、たったの200mでした。
もうこれで快適に歩けるだろうと思っていたけれど、これまた誤算。
この登山道、笹藪だらけ。
笹藪で視界が覆われていて、前方は良く分からない。足元を見ると登山道だと確認出来る感じ。
松の木ではないだけ進みやすいけれど、笹を掻き分けて道を確認して進むのはスピードが乗りません。
登山道なら快適に進めるだろうと思ってましたが、視界不良で全く楽しくない山登りです。
ちなみに朝露に濡れている笹藪のせいで全身びしょ濡れになっているのも不快でした。
とにかくひたすら我慢をしつつ休みなく歩き続けました。
最後の最後で藪は晴れて、視界も広がって、気持ち良い歩き。
ようやく鳴谷山の山頂に着きました。
見晴らし良くて、それなりに達成感はあるけれど、藪の苦労とこの景色では割に合わないと思います。
ここまで来る人はよっぽどの登山マニアなんでしょうね。
下方を望むと目附谷が見えました。目標が見える距離感にあったのでちょい気楽になりました。
さて、ここから沢を下っていくのですが、webには全く情報がないので、完全に未知なエリアに入っていく事になります。
鳴谷を目指すには南東の稜線を進むようになります。
山頂周辺は草原地帯のように穏やかで歩きやすいのですが、登山道から外れて稜線に向かおうとすると途端に猛烈な藪に襲われてしまいます。
全くスピードに乗れず、進めない。
それを嫌って藪の薄い所を探しても弱点がない。
進みやすいのは、藪の流れに逆らわずにそのまま下るのみ。
仕方なく斜面を下っていくと、山頂からすぐ東の枝沢に着地しちゃいました。
この枝沢へは、密集した藪漕ぎは5mくらいだけで済み、すぐに沢筋となります。
当初の予定とは違った沢に入ってしまいましたが、とにかく藪漕ぎがしんど過ぎるので仕方ありません。
この枝沢で目附谷に行けるか勝負です。
枝沢を下ると、すぐに水が現れます。
2・3mの小滝のような段差がいくつも出てきますが、問題なく下っていけます。
順調に沢を下っていくと標高1470m付近で下りられない滝が登場。落ち口から見下ろす限り15mくらいはある気がする。
どちらから巻こうかキョロキョロすると右岸に踏み跡を発見。
記録にはないが、人は来ているのですね。
山では人に会いたくないものですが、踏み跡を見つけると喜んでしまうのは不思議です。
さて右岸に進んでいき20mトラバースするとプチルンゼが現れる。
その下方を見るとストンと落ちてる気がするので、まだ巻きを延長。
更に横に移動していくと第2のルンゼ。ここも厳しいと藪漕ぎをしながら第3ルンゼまで来ました。
どれもが崖だらけ。下りられる雰囲気がありません。
ウロウロと探りたいけど、藪がウザくて移動がままならない。
時間だけが進み、距離は変わらない。もう下りる道が見つからないなら諦めよう。
所詮、俺は成功出来ないチャチい人間だと、自分を蔑んだ。
元来たルートを辿って戻ろう。挫折した心のままトラバースして、最初のプチルンゼに来た。
一旦ここで気持ちを整えるべく休憩。
一息ついて改めて付近を見渡すと、このプチルンゼまではとても明確に踏み跡があるのが分かる。何故ここで踏み跡は消えるのか? 諦めたのか? それともこのルンゼは下れるのか?
先には崖しかないと思うけど、最後にその絶望的な景色だけ見ておこうとルンゼを下ってみた。
藪を抜けたその先は・・・、
緩やかな草付きの斜面が広がっており、快適に下る事が出来た。
遠目から見てダメだ行けないと烙印を押してしまったけど、やはり近付いて判断するべきでした。
第3ルンゼまでの藪漕ぎトラバースなんぞしなくても良かったのに。無駄な体力を使いました。
一度は諦めたものの、下りられた事で気持ちを入れ替えて再び滝を目指します。
この先も5m級の滝が出てきますが、巻いたりそのまんま下ったりで問題なく通過。所々にある踏み跡に勇気を貰います。
そろそろ鳴谷との出合いであろうと思われる手前、1300m付近で再び下りられない滝の落ち口の登場。
一際大きく20mはあるように伺える。
今回も踏み跡は右岸に。
ここもしんどかった。
右岸の踏み跡は薄く分かりづらい。
落ちたら死ぬって分かる崖っぷちのトラバースを強いられた。太い木があるので掴めばなんとかなるが長く続いていくと精神が堪える。
帰路に分かった事だが、そんな際どいトラバースをしなくても、斜上して崖から逃げる感じで進んでいっても、巻き下れる。
ただ現状では崖っぷちに進入してしまい行くのも戻るのもしんどくなってしまった。
持参した30mロープを使って懸垂下降でトラバースから脱出。
もうこれ以上、滝が現れる事はないと判断し、登り返しを考えロープは残置した。
この先は幅広い沢となりゴーロの様相。鳴谷と合流をし更に北上。
右岸の岸上から西に進んで目附谷へショートカット。
鳴谷よりも大きく、水量豊富な目附谷に辿り着いた。
この谷には釣り師のレポートがあり、滝までに難所がないのは把握済み。
ここまで来れば、滝に会えるのは約束されたようなもの。
レッドカーペットを歩いているような優越感。ビクトリーロードだ。
と言っても道ではないので油断は禁物だ。適度に緊張感を持って、渡渉したり岩をよじ登ったり、進みやすそうな所を選んで遡っていく。
幅広いゴーロから徐々に大岩が点在し始め、左右の岸に岩壁が立ち上がってきた。
そしてその先、白煙を巻き上げる図太い水柱が見えてきた。
紅滝だ。
地形図の記載が間違っているようで、下流の滝マークにあるのが「紅滝」である(上流の滝マークは「二重滝」)。
紅滝を目前にし、今日の行動を振り返る。
歩いた記録のない場所を、何が出てくるのかドキドキしながら進んできた。
寝坊や、諦めなど自分の中のダメな点が露見されたが、それでも何とか滝に到達出来た事に大いに震えた。
滝の全景を見るには左の岩壁を登る必要がある。4m程の壁、掴むところも足場もあるので、慎重に登った。
岩壁からヒョコッと顔を出す。
途端に紅滝からの猛烈な飛沫を受ける。心構えをしてなかったから、その威力に圧倒された。
「やってる?」って暖簾をくぐったら、間髪入れずに冷えたジョッキが目の前に出された感じ。まだ何も注文してないっちゅうに。
眼鏡が水滴に覆われながら、岩壁を登りきると滝の全景とご対面。
潔く強き者。
一点の迷いもなく突き進む王道の直瀑の力を味わう。
この岩壁の上は物凄く滑る。すり鉢状になっているので、もしも転倒すると滝壺に吸い込まれるだろう。
憩いとはかけ離れた環境で、飛沫を浴び続けるしかない滝前ではあまり長居は出来ない。
びしょ濡れになって、ここまで歩いてきて火照った体ですら凍えるようになってしまったので、さすがに滝前から離脱。
4mの岩壁をクライムダウンして、飛沫から離れた。
全景を見ながら、ようやくお昼ご飯。
右岸には草付きの斜面が広がっており、なる程ここから紅滝を高巻くのだと理解した。
二重滝にも行きたかったが、自分にはもう帰るだけの燃料しか積まれていないのが分かっているので諦めた。
寝坊しないで、藪漕ぎも少なければ行けただろうか。
この紅滝を見たくて頑張ってここまで来て、ちゃんと会えたので悔いはないです。
さて帰路に向かう。心配なのは懸垂下降した登り返しと藪漕ぎ、それに伴う体力の減少かな。
目附谷を下って、鳴谷へ。枝沢の右俣へと戻る。
右岸の岩壁に残置したロープが見えた。
そしてその手前の細いルンゼに踏み跡が見えた。そうか本来の巻き道はここだったのかと納得した。
ルンゼを上がって岩壁の上に乗れたら、崖っぷちを避けるよう斜上すると嫌らしいトラバースをせずに済んだ。
ロープの回収には崖っぷちに行かないとならなかったので怖かったけど、そこから上部に戻ったら安心した移動が可能でした。
その後は来たルートを忠実に戻っていく。
鳴谷山の山頂付近、沢の詰めまで戻ってきた。
登る毎に少しずつ藪が濃くなってきて憂鬱になる。
山頂に戻って、登山道を利用するのはただただ疲れるだけなのでそれは避けたい。
となれば、記録のない沢を下って林道を目指すことにする。
藪の少ない場所を選んで登っていくと、笹原が現れてそれを利用すると山頂よりも南東の稜線に出れた。
ここから南西にあるイモイワ谷を目指す。
50mほど濃厚な藪漕ぎを強いられたが、下りなので体重かけて藪に体当たりして突き進んだ。
これを登りで突破するのは至難だろうと想像する。
水の流れが確認出来たら、それ以上の藪漕ぎは無くなった。
頼むから下りられず悩むような滝なんぞ出てこないでくれと願いながら下っていく。
この沢は非常に緩やかな流れでとても歩きやすい。
最後の最後に5m程の滝が現れて、それを左岸で藪漕ぎしながら下ると林道に乗れた。
もうこれで心配する事はない。帰って来れたと一安心。
あとはのんびり林道を戻るだけ。
無事に明るい内に車まで戻って来れました。
下ってきた林道までの沢の様子から、鳴谷のすぐ南の沢も難しい点はなく遡れるような気がします。
沢を詰めて、鳴谷を下りて目附谷に行ければ、それが最短でしょう。
詰めの最後には極藪漕ぎが待っていると想像は容易いですが、そこは気合い入れて突っ込むしかないです。
あと心配なのはゲート前の駐車スペースです。本当に一台しか置く余裕がありません。
離合すら出来ないほどの幅の狭い林道を走ってきて、ゲート前の駐車スペースが先に取られてしまっていたら、鬼バックで戻るしかありませんので相当大変だと思います。
歩行距離、藪漕ぎ、駐車スペース、これが今回の紅滝へのアプローチの難所になります。
東側の砂御前山(鳴谷山)登山口まで車で登って来れれば、最短・最速に行けるでしょうから、早く整備して復活してくれれば良いですね。
7:25 林道ゲート前 出発
8:55 林道 終点
9:20 登山道に合流
10:15 鳴谷山 山頂
10:45 1470mにある滝
11:30 1300mにある滝
12:05 鳴谷に合流
12:30 目附谷
13:00 紅滝
13:40 出発
16:15 鳴谷山 南東の稜線に詰め上がる
17:20 林道
18:30 林道ゲート前 到着
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