気は優しくて力持ち。明るい笑顔が 今日も行く。
がんばれ がんばれ ドカベン!
的な滝です。
落差は30mと決して大きくは無いです。ただし、ここほど威圧感のある段瀑は稀です。
野球のホームベースでのクロスプレー(今ではコリジョンルールで廃止になった)で、もしも僕がランナーで思いっきり肩からホームに突っ込んだとしても、キャッチャーがこの鎧滝であれば、いともあっさり弾かれてアウトになってしまう。そして僕は肩を痛めてしまう。
キャッチャー鎧滝はホームベースを隠し全く動かずに守り続けるのです。
改めて言います。大きくはない。ただ存在はとてつもなく大きい。小さな巨人だと思います。
写真では伝わらない、ぶつかりに行った者だけが肌に感じる魅力を、とくと味わいました。
しかし道中は悪球打ちの岩鬼のような、曲芸打ちの殿馬のような、何ともいやらしい歩みとなりましたよ。
沢登りの本に紹介されているメジャーな谷です。ただし、一泊二日が基本となっているので敷居が高いと言えます。
僕らも予定でははセオリー通り、隣の大倉川を下って、鎧滝のある笹木沢を遡っていく予定でした。
目指す二日間、両日共に雨は降らない予報。天気に恵まれました。
しかし初日はピーカンの青空の予報ですが、二日目は曇り予報。
セオリーであれば鎧滝との対面は二日目の午前中になります。
真南に向いている滝なので青空が映えるのは間違いない。
午前や夕方は周囲の高い崖が太陽光をブロックし、明暗差のきつい景色になるみたい。
初日、この絶好な快晴を無駄にするのは余りにも勿体なくて、なんとか昼に鎧滝に着く方法はないだろうか?
それを検討した時、笹木沢をそのまんま下降すれば良いのではと答えが出ました。
沢ヤからすれば邪道。笹木沢を登らずして何が楽しいのだと憤慨するかも知れない。
しかし我々(チーム中津川)は滝ヤなのだ。はっきり言えば、滝に会えるのならどんなアプローチであっても良い。
滝に会えるなら一泊でも二泊でもする。それしか手段がないのなら。
でも、もしもその脇に林道があったのならば、僕は沢登りなどせず躊躇なく林道を使って最短で滝に向かう。
今回の鎧滝は沢も楽しみつつテントで寝泊まりも楽しみつつ、色んな要素を楽しむ一泊二日の予定ではありました。
しかし、青空の鎧滝が確実にゲット出来るのであれば、それを第一優先にしてしまうのが滝ヤの性分です。
重たい荷物を排除したスピード重視の日帰りで鎧滝を目指す。
滝ヤならではのアタックが始まりました。
今回のメンバーはチーム中津川(あっきーさん、サモハンさん、ふたつぎさん、BAL)。
宮城県の滝だけど、アプローチは山形から。で、その山形は遠い。
埼玉から出発の時点で気合いを入れないとあかん。
眠気覚ましには最近もっぱらエナジードリンクの「ZONe」に頼っている。リポDでは全然効かなくなってしまった体ですが、これを飲むと2〜3時間はばっちり目覚めます。
ふたつぎさんの車に同乗させて頂き、代わり番こで頑張って走った。
起点となるのは船形山の登山道。林道の終点まで車で行けます。
僕達が到着したのは6時30分頃。10台ほど駐車出来るスペースがありますが、先に来ていたのは2台。
その後、準備していると次々と車が埋まっていき1時間の間にほぼ満車になりました。
この山、物凄く人気なんですね。ほぼ徹夜で頑張って走ってきて良かったわ。
登山道はとても安全で快適。最初は起伏も少なくサクサク進んでいきます。
出発から30分程で粟畑という分岐点につきます。これを山頂方面に。
5分ほど進んで行くと右手が斜面になり、沢の形が出てきます。
笹木沢の一番伸びている枝沢を探り進んで行くと、藪の薄い所にすでに水の流れた跡が見えました。
ここが遡行してきた際の登山道との出合だろうと判断し、下りていくとすぐに水の流れが生まれ、枝沢が合流する毎に幅が広がっていきました。
水と同じように、下っていきます。
ちょっとした段差は出てくるものの、全体的に穏やかな沢歩き。
ただし、この沢は非常に滑る。フェルトでもラバーでも、ヌルンヌルンです。
ザラメの岩肌はしっかりグリップしますが、表面がツルンと磨かれた岩は中華料理屋の床かってくらい足を持ってかれます。
ま、これさえ気をつければ後は難しい事はないです。
慎重に下っていけば良いです。
小滝は出てきますが、ちゃんと巻き道があります。
そんなこんなであっさり4時間が経過し、ようやく鎧滝手前にある10m滝まで来ました。
この滝は登る時は左側を直登するのですが、下る場合は危うく感じたので、右岸から高巻いて枝沢まで逃げてクリアしました。
ようやく現れる開放的な景色。多段の淵を望める景色。後はこれを下りれば良し。
右岸にロープを掛けるに絶好の木が生えており、そこから30mのロープを二本繋げてダブルにして、懸垂下降。
深い釜を持つ最下段までスムーズに下りられました。
見上げる鎧滝、マジ要塞。堅固堅牢。
パラメーターを守備力に全フリな感じ。
メルキドを守っているゴーレムはここにいたのかってドラクエ1を思い出した。
ドカベンの山田太郎は守備が凄いのはさることながら、バッティングも好評。三冠王も取っているのだ。
この鎧滝もそうさ。攻めてくるぜ。
横幅広く多段に落ちてくる水はガシャンガシャンとロボットが振り落とすパンチかのようで逞しい。
狙い通りに太陽が出て、青空が広がった滝前。泊まりだったらここに正午には到着出来ない。
僕の我が儘で出会い重視の滝巡りにさせて貰って、これで晴れなかったら立つ瀬がないなと冷や冷やしてたけど、さすがチャンスに強いドカベン。それを信じて頼って本当に良かった。
でもここまでテントを担いできて、鎧滝を終えてから上流のテン場で泊まればのんびりした滝巡りになったかな。
その方が良かったかも知れない。
帰路は、正規ルートとなる笹木沢の詰め。
まずは鎧滝を登らないといけない。
ロープを垂らしていたので、それを利用すれば安心して越えられると思いきや、ロープは回収していたのだ。
何故なら、写真にロープが入ってしまうから。
だからフリーで登るしかないので、気合いを入れる。
序盤はスムーズに気持ち良く登れる。
が、最上段、テメーはダメだ。殿馬のいやらしさ全開じゃないか。
これまでガボホールドであったり順層で安心だったのだけど、その先だけ逆層の草付き。更にホールドは指が引っ掛かる程度で掴めはしない。
ちょい手前から藪木帯に入って木を掴んで登っていくのが安心だろう。
私は怖くて登れない。立往生。
そしてこのような困った時に現れるのが一流である「ふたつぎさん(レジェンド)」。
絶妙なバランスでいやらしい上段を突破。
ロープを下ろしてくれて鎧滝の落ち口に上がれた。
あとはヌルヌルの沢に気をつけながら進んでいく。
笹木沢を詰めていき、残り半分くらいまで登った所でハプニング。
あっきーさんの沢靴のソールがベロンと剥がれてしまったのだ。これでは歩きに支障が出まくる。
ロープなどで巻き付けようかと考えたが、サモハンさんがテーピングを出してくれた。
それを靴にグルングルンに貼り付けるとバッチリ固定されて問題なく歩けていた。
さすが格闘家のレスキューグッズです。僕もガーゼやサージカルテープは持っているけれど、これからはテーピングも常備するとしよう。
笹木沢は長い。とにかくひたすら登るだけ。
徹夜での行動だからか、ナチュラルハイに入ったのか変なテンションで叫びながら遡っていった。
登山道に復帰して、最後はヘッドライト装備で林道終点に到着。
朝は沢山いた車は、僕らを残して一台もなくなっていた。
7:30 林道終点 出発
8:20 粟畑
8:45 笹木沢 入渓
11:30 鎧滝 到着
14:10 出発
17:45 粟畑
18:10 林道終点 到着
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