梓川 支流 湯川
(湯川)大滝




所在地
長野県松本市

地理院地図 (←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます)
評価(5段階) ★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆
現地へ 白骨温泉から南西に向かい、湯川沿いの林道を進む。林道終点より沢登り。4〜5時間で到着。
訪問日 2022年7月24日

夏と言えばTUBE(サザンの人もいるよね)ですが、
ここ最近、私の中では夏と言えば長野&かっさーさんが定番となっている。

で、今回はかっさーさんプランニングの滝探しに便乗して乗鞍入りです。

乗鞍スカイラインの畳平に向かうバス停にもなっている乗鞍観光センターへ深夜に現地入り。
車中泊禁止って看板ありますけど、みんな止めてますね〜。

5時、合流してさっそく出発。
白骨温泉の南にある白骨温泉ヘリポートの脇に車を止めて、湯川右岸に伸びる林道を歩きます。


ジミーーに登り約4.4km。結構汗をかく。終点の所まで来て、既に息切れ。

あれ? 体力ないぞと自分の体に落胆。
ここ最近は息子に合わせてジョギングは3kmで終えてたから、やや体力不足。いつもより疲れる感じ。

林道終点は笹薮の壁。これを思いっきり掻き分けて斜面を下っていくと、湯川の支流になるゴウト沢に着水です。
で、この沢を下っていくと湯川に合流しました。

あとはこのまま突き進むだけ。作戦はシンプルです。とにかく遡れば良いです。


この時期だからか、この川はこうなのか、よく分かりませんがとにかく水が冷たすぎる。
それと水の勢いが強い。

左右の岸上は笹が密集していて、遡行を避けて土を踏んで進んで行きたいけど叶わない。
だから、そのまま逃げずに突進するしかないのですが、湯川はそれなりに深く、そして余所よりも流れが強い。

膝上くらいまで浸かるのは当たり前で、そこに更に水圧をモロに受ける。
イメージでは流れるプールを逆らって進んでいる感じ。とても太ももが疲れる。

思い通りに進まない。想定の1/2の速度。休憩してGPSを見るとほんのちょっとしか進んでなくて悲しくなる。

唯一変化のあった5m程の小滝は右岸で問題なく越えられます。

林道歩き、沢登りして4時間もヒイヒイ歩いて、ようやく……ようやく沢に変化が現れました。

冷た過ぎて肌が痛かった水の温度が落ち着いてきました。上流に進むと水温は上がるものなのか、そうではありません。この湯川に理由があります。
周りに樹木がなくなり、だだっ広く視界が広がりました。


そこは岩だらけの世界。硫黄臭立ち込める湯川源泉に到着しました。
ここの源泉をパイプラインで乗鞍の麓の温泉まで引いているので、ここには人工物があります。

温泉の跡地もあります。しかし今では入れる湯船はありません。
一カ所だけ触ると熱い温泉が出てる流れもありましたが、そこは湯川のすぐ横だったので、湯船を作れる環境ではありませんでした。

この源泉の景色に圧倒されて興奮してしまい、既に大滝が見えているのに歩みは遅くなってしまいます。

最後は手前にある二段の小滝を越えます。


この小滝も小さいながら岩盤の存在が素晴らしく足を止めさせられた。

そして大滝に到着。歩き始めてから4時間30分で到着しました。なげえわ。


落差は30m程か。わんさか水を落としている。
源泉や周りの地獄谷のような存在感と比較してしまうとちっぽけに感じちゃいます。
環境に凄みがある故に、幅広の分岐瀑は存在感という点では何とか均衡を保っている。
これが直瀑であれば、滝の景観は湯川源泉の迫力に霞んでしまうでしょう。

分岐瀑ながら水量の多さから飛沫は豊富。真夏の火照りを滝が取り除いてくれます。
2000m級の滝は数少なく、孤高の存在。どことなく哀愁を感じる点も魅力の一つとなるのかな。
難所がない癖に、体力はえぐられまくって本当にしんどかった。


さてあともう一つの滝へ向かいます。
これもまた湯川源泉から見えている左俣の大滝へ。


序盤は地獄谷さながらの黄色に沢を遡る。
後半は冷たい水をやや浴びながら急斜面を登り詰めていく。
これもまた分岐瀑で、周囲の緑との調和が美しい。
ただ湯川の大滝の方が整った形で見た目も良いし、居心地も良かったね。


さて、ここで寛いでいると、かっさーさんが緊張感たっぷりの発言をする。
「熊だ」
湯川源泉という、視界が良好だからこそ存在が確認出来た。
距離おそよ40〜50m。バッチリ見える。
餌を探している感じでキョロキョロしている。
『しかしクマはまだこちらに気付いていない!』
という状況。

遮るものがない景観は、自分達を隠せる物がなく当然ながら逃げ場がない。
もし熊がこちらに気付いて突進してきたらアウトだ。
今、ここで出来る事は、笛を吹くこと。こちらの存在を教える事。これが正しいのか分からないけど、とにかく夢中で笛を吹いた。

かっさーさんが撮った写真では熊はこちらを見ている。
現地では見ているようには思えなかったが。


大きく笛を吹けば、キョロキョロしつつ距離を取ってくれると思ったが、最初のピーという全力の笛には何ら反応を示さなかった。
聞こえてないのか? と不安になりつつもう一度吹いてみた所、その場に留まっていたクマは足を早め沢を一気に下っていき視界から消えてくれた。
笛の音が聞こえたから逃げたのか、ただ気分で離れたのか検討はつかないが、ひとまず深呼吸が出来てホッとした。

こうなったらこの場にゆっくりとはしていられない。
下山を始める。
が、困った事に僕らの戻りたい道は正にクマが下りていったこの沢だ。
ここを下ればマジで出会い頭もありえる。
下るのは無理、ならば先ほどまでクマがいた道を逆に利用してみる事にした。

そこはもの凄く明確な獣道で、当然ながら新鮮なクマの踏み跡が沢山あった。
よくよく踏まれているので、いつものお散歩コースなのだろうか。

二頭目が現れない事を願いつつ、笛を吹きまくりながら緩やかに下っていき湯川源泉まで戻れて、ようやく生きた心地がした。

地獄的な景色に、ガチの死神の登場はもうリアルホラーですよ。

良い環境で、良い滝で、見晴らし絶景でお勧め出来る滝ですが、単独ではなく複数人で行きましょうね。

6:00 白骨温泉ヘリポート 出発
7:10 林道終点
7:30 湯川 入渓
10:00 湯川源泉
10:30 大滝 到着


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