母という字は、一歩誤れば「毒」になるんです!
って金八先生で見た気がするんですが、どこのシーンだったのか、そもそもそんなセリフをきんぱっつぁんは言ったのか、検索しても確認取れませんでしたが、なんかそのセリフが記憶に残ってるんですよね。
ここの沢もまさしくそれで、誤れば「毒」であり、誤らなければ「母」です。
暖かく、そして厳しい。母親の存在です。
正直、滝だけを見るとそこそこの魅力ってだけで、夢中になれる程ではありません。
この毒水沢という存在そのものがあまりにも素晴らしく、魅了させられてしまいました。
この毒水沢は、百選のスターである「常布の滝」の上流にあります。
その常布の滝の落ち口上で二俣となる左側の沢が毒水沢です。
友達に対しても容赦なく叱るドギツイ母親なのか、沢山のフルーツを切って出してくれる甘い母親なのか、やっぱりただの毒母なのか、楽しみに草津入りです。
深夜、関越道に乗ってグンマーを目指します。まだ埼玉県内なのに眠気が来て、嵐山PAで仮眠。
この調子で草津まで辿り着けるか不安でしたが、鬼滅の刃のDVDを再生させ、煉獄さんの言う通り心を燃やして運転し、なんとか魘夢から逃げ切りました。
西の河原温泉に近い天狗山駐車場は深夜閉鎖。多分、コロナのせい。
道の駅「草津 運動茶屋公園」でふたつぎさんと合流。本日はお世話になります。
途中までの行き方は常布の滝と一緒。
国道292号の脇のダート道はだいぶ荒れてますね。
常布の滝展望台を過ぎて、そのまま快適な登山道を進む。
橋が現れて、毒水沢の登場。ここから入渓です。ここまでちょうど60分でした。
ドラクエの毒の沼地なら、歩くたびにグボッとHPが減りますが、さあここはどうでしょう。トラマナなんて呪文使えないので突撃です。
いざ、沢に足を入れると驚いた。
減るどころか、増えるじゃないの。
めっちゃ楽しい! 歩くたびにテンション上がる。
あれ? もしかして「しあわせのくつ」を装備してたっけ? レベル上がっちゃうんじゃない? って勘違いしちゃうくらい。
冷たくない、ぬるい沢。やや青みがかった流れ。岩は湯の花で変色してる。
もう既に温泉始まってます。
高い木が少なくて見晴らし抜群。それにアブやブヨなど不快な虫が全くいないのもありがたや。
控えめに言って最高です。
ここまでは毒要素、全くなし。
橋から30分程で見所の一つ、大滝の到着。
変色した岩盤から落ちる15m程の滝。
周囲の環境が美しい。天然記念物であるチャツミゴケがモコモコ自生しているのだ。可愛いわぁ。
マツコの知らない世界で、滝の世界と苔の世界でコラボしたら如何でしょう? と提案して良い反応を頂いたのだけど、その先には進まず。
もし実現したら、ここを紹介したいですな。
さて接近戦の開始だ! そう近付いてみるとまたも驚かされる。
飛沫に当たっても寒くない!
沢の水がぬるいのだから、冷えるわけはないのだけど、何とも違和感を拭えない。
ビールと飛沫はキンキンに冷えていた方が良いなと思った次第です。飲めんけど。
大滝は左岸から高巻きます。明瞭な踏み跡、ロープが下がっています。急斜面ではありますが、補助があるので安心して登れます。
ここからの毒水沢はハビバノンノン♪コースです。
湧き出してますよ、温泉が。
湯気も出てるし熱気もあります。沢は温かいし温泉テーマパークです。
一番熱い所だと、湯に触れると「あつっ!」って自然と声が出ちゃって耳たぶ触っちゃうくらい。50~60℃あります。
流れている沢は入るにはぬるい。湧いている源泉は入るには熱い。
だからどうしたかというと、石を重ねて沢の水の流入を調整し、適温の湯船を作る事。
沢は小石が堆積しているので素手でガンガン掘っていく。大きい岩は2人で協力して動かす。
2人が腰まで入れる位の深さまで掘って、自作天然温泉の出来上がり! 砂場と河原遊びをおっさんになって楽しむとは思わなかったけど、物凄く楽しい。
そして入る温泉はしっかり適温♪ 良い湯加減です。
その湯で顔を洗うと、まあ目が痛い事。これは強酸性の温泉である事間違いなし。
ちなみに強酸性の温泉の効果は「 古い肌を剥がし新しい肌に刺激を与える」というピーラー効果と言われてますね。
アルカリ泉はヌルヌルだけど、こちらはその逆でめちゃサッパリです。
自分たちで作ったってのが何よりも楽しくて満喫しまくり。ストレス無しの環境にだいぶ長湯してしまいましたわ。
がしかし、少年心でワイワイしていた所で、悲しい事件発生。
ここまでは母。そして一歩誤って毒になる。
防水コンデジの電源が入らなくなりました。よく見るとロックが半開になっていて微妙に隙間が見える。そこから、温泉が入ってしまったようです。沢のせいではないけど、なんかやられた気分です。
そんな訳でここからショボいスマホでの記録となりまして、コンデジを失ったショックで一歩進む毎に心が傷ついてしまいます。自業自得の毒の沼地に陥りました。
他にも源泉が湧き出てて、うまく掘れば湯船を作れる箇所がある。
これだけ熱ければ、温泉卵を作れるのではないかな。再訪時はチャレンジしてみよう。
湯気が立ち込める源泉ワールドを越えても沢のぬるさは変わらず。
虫がいなければ、大木も少ないので見晴らし最高。
時々現れる小滝も頑張ってよじ登る。無理なら高巻く。
イノキ岩(ふたつぎさん命名)を過ぎるとそろそろクライマックス。
最後は手掘りも調整もいらない天然の滝壺温泉!
深さもバッチリだし、滝に近付けば打たせ湯も楽しめる。眺望も抜群で最高の野湯。
惜しいのは湯温。温水プールくらいの温度なので温かくはないのよね。ですので、この滝壺温泉を楽しむなら真夏でないと寒くて辛いと思います。
お昼ご飯を食べて、十分すぎる程に満喫したら、遡行再開。
軽快に遡っていくと遊歩道にぶつかって、これで毒水沢は終了。
あとはまったり下山。
芳ヶ平に向かう遊歩道を進んでいき、ヒュッテに到着する目前に東南方向に下っていく登山道に折れます。
安全で軽やかな登山道。本来はのんびりまったり歩いていくだけなのですが、体に異変が起き始めました。
これもまた遅効性の毒といえば良いのでしょうか。
足の裏がピリピリピリピリするのです。歩けない訳ではないけど、熱を持っているのが良く分かる。
今更だけど、この強酸性の毒水沢からダメージを受けていたのを目の当たりにしました。
強酸性の温泉として有名な玉川温泉(秋田県)の入浴の心得を読んでみました。
①到着日の入浴は1〜2回、翌日以降は1日2〜3回を目安に
②慣れるまで長湯は禁物。1回3〜5分入浴した後は、同時間程度休息し、これを数回繰り返しましょう。
ですって。
つまり1回5分を二度で止めとけって事ですな。
最初の手掘り温泉なんて、掘ってる時から考えれば30分以上は長湯してました。
というか沢登り中はある意味、足湯してるのと一緒な訳で、強酸性泉にずっと浸かってるのと一緒ですよね。
古い皮膚を剥がすピーラー効果とか言うとオシャレですが、カンナで皮膚をシャリシャリ削ってる訳です。綺麗になるでしょうけど削り過ぎると危ういですよ。
ちなみに、ふたつぎさんは特に問題ないようなので皮膚の強さというか個人差があるのでしょう。
足の裏は確かに痛いですが、歩けない訳ではないし、行動制限が掛かった訳ではないのでそのまま下山を続け、毒水沢の出合いの橋まで戻って来ました。
で、まだ時間に余裕がある事から、今度は下流へ沢下り。
目的は常布の滝の落ち口。
後半はゴルジュになって、それでも下降を続け、地形図に記載されている温泉マークまで来ました。
そのマークの地点は岩盤が暖かいだけで、温泉が湧き出している訳ではありませんでした。
そこから落ち口までは、もっと強烈なゴルジュ。自分のスキルではこれ以上近寄れないとはっきり分かる拒絶感に、素直に白旗。
出来れば落ち口脇の岩盤に立って、常布の滝が見ている景色を共感したかったけど叶わず。今度は下からアプローチしてみよう。
展望台まで戻って常布の滝を遠望。何度も見ているので撮影なし。コンデジ壊れちゃってるしね。
歩きに歩いて、車まで無事に戻ってきました。
さてこれからどうするって、汗を掻いているのだから、もちろん温泉でしょう。
メジャーな「大滝の湯」で草津温泉を楽しんで、体を洗ってサッパリ満喫。
温泉に始まり、温泉に終わる。草津ならではの過ごし方ですね。
ちなみに、コンデジは除湿剤入りのビニールに包んで一週間放置した後に、電源を入れた所、無事に復帰しました! 勉強しないで遊び過ぎて、お母さんにファミコンを隠された感じかな。
暖かくも厳しい、良いお母さん沢でした。
再訪時に持参する物をメモ書き
・温泉卵作成用の、生卵、卵を入れる網、お皿
・温度計
・リトマス試験紙
・スコップ
・温泉整地用のガラ袋(土のう袋)
あと、車2台あるなら、上流の弓池付近にある駐車場に1台置いておけば、下山する必要ないかもね。
次回が楽しみだぜ!
7:00 ダート道 駐車スペース 出発
8:00 毒水沢 出合
8:30 毒水沢大滝
9:10 出発
9:35 温泉手掘り、入浴
10:35 出発
10:55 イノキ岩
11:30 滝壺温泉
12:40 出発
12:55 遊歩道
14:20 毒水沢 出合
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