鹿島川 支流 大冷沢 支流 北股本谷
北股本谷大滝



所在地
長野県大町町

地理院地図 (←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます)
評価(5段階) (滝下未到達の為、評価無し)
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ 鹿島槍ヶ岳の南東部。北股本谷にある。大冷沢沿いの林道を進み、赤岩尾根の登山道の手前で北股本谷に入る。
訪問日 2020年8月13日

今年は全く以て計画通りに滝巡りが出来ない。4・5月はコロナ自粛、6月は雨による変更、7月も雨で変更。そして8月、豪雨水害で目的の滝にアプローチすら出来ない。
これで何度の計画変更か。もちろん、行きたい滝なんて沢山あるのでどこでも楽しめますが、肩透かしを食らってやや悲しい。

では代替案ということで繰り上げられて、目指したのは鹿島槍ヶ岳のお膝元。
氷河と認定されたカクネ里雪渓の近くにある谷ですから、この滝を目指すのは雪渓が障害になると予想されます。
今年はスキー場が開けないくらい記録的な雪不足でしたので。もしかしたら雪渓に邪魔されず近くに行けるのではないかと期待し、繰り上げ当選で目指すようになりました。

この滝は鹿島槍ヶ岳(爺ヶ岳)に向かう登山道の、赤岩尾根の途中から遠望する滝のようで、滝下からの姿は確認出来ていません。
遠望の写真で見る限り、高く立派な滝で力強さを感じました。真下から見上げた時、どんな感情が湧き上がってくるのか楽しみです。

当日、百名山として有名な鹿島槍ヶ岳ですから、駐車場はすぐ一杯になってしまうのではないかと不安でしたが、朝の3時に大谷原の駐車場に着いた時には2台止まっているだけで、がら空き状態でした。
赤岩尾根は王道ルートではなくハードコースで一般的ではない事と、コロナ自粛の影響でしょうね。

周りが明るくなってから、出発。


大谷原の駐車場からすぐにゲートがあるので、まずは林道を歩きます。
とりあえず40分ばかしサクッと歩くと北股本谷との出合いである堰堤に到着。


堰堤下のトンネルを潜り、ちょっと進むと堰堤に向かう踏み跡が見えるので、ここで登山道から離れます。

堰堤用の仕事道はあまり踏まれておらず、草木がボーボーで道が見えにくいです。
夜露で草木が湿っているので、雨が降っていないのにびしょ濡れになりました。
堰堤は3つ続きます。見えづらいものの踏み跡を辿れば2基は問題なく右岸から越えられます。

最後の3基目がほんのちょっと難関で、左の垂直壁に梯子があります。高さは10〜12mくらいかな? 上部までいって手が滑って落ちたら、てへぺろでは済まない高さに躊躇するものがあります。


ここを登るか、と気合いを入れるも意気消沈。怖いものは怖い。
困ったなぁと、とりあえず左岸に向かって見ると、緩やかに斜面を上がって行けて危険もなく問題なく越えられました。
堰堤群はこれで終わり。ここからは沢登り。晴れ間に見える鹿島槍ヶ岳付近の稜線の迫力に北アルプスの凄みを感じます。

最初は堰堤によってせき止められて堆積した岩だらけの伏流のゴーロ。水が全く見えない寂しい景色。


踏んでみて違和感。重い? 疲れる? 普段のゴーロよりも岩が小さく踏むと沈んでしまいます。
海岸を歩いているように進まない。景色は変わらないくせに息が弾む。

太ももが強張り始めたので結構進んだだろうと振り返ると、越えてきた堰堤がまだ普通に見えた時は中々へこみました。

チョロチョロと水が流れてきて、白い絨毯が見えてきました。雪渓です。さすがに全てが溶ける訳はないかと進んでいく。

厚みは2mくらい。雪渓の上を乗らずとも脇は地肌が見えているのでゴーロ歩きは変わらず。
そろそろ滝の姿が遠望出来るのではと期待して進んでいくと、景色が急変しはじめる。

日射しが差す青空だったのに、冷気の壁が体に当たると共に雲が一気にせり上がった。
先ほどまで見えていた稜線は雲の中。その白い闇が進行方向を埋めていく。

進むほどに雪渓は厚みと横幅を増していき、気付けば雪の上を歩いている。


広かった谷はググッと狭まり、側壁は高く伸びていく。
右も左も草すら生やさぬ岩壁になり、厚みのある雪渓。そして濃霧。
雪渓の冷気と谷の霧が合わさって進行方向は何も見えない。
更に、この狭い谷を埋める雪渓を前にすると、猛烈に寒い。冷蔵庫を開けた時の冷気と同じくらいの風が襲う。


慌ててカッパを防寒着代わりに着込む。
霧だけでも困っていたが、更に雨が降ってきた。
今日の天気は晴れと予報されていたのに。

霧と冷気、更に雨ではとても前進など出来ず、とにかく雨をやり過ごそうと雪渓から離れ藪木のある場所まで避難。
エマージェンシーシートを被って雨が止むのを耐え忍ぶ。このシートを取り出すのは福島県の朱滝以来だ。なつかしい。

仕事終わって走りっぱなしでほぼ徹夜状態でここまで来たので、気付けばシートの中で寝ていて良い休憩にはなった。

どれだけ待ったか、気付けば3時間くらい。視界は何も変わってないけれど。ようやく雨が小降りになってきたので行動に移す。

先程の冷気を放出している雪渓に近づくがやはり先は霧で何も見えない。見えない中で雪渓を歩くのは怖いので前進するのは出来ないと判断。

だからといってこれでギブアップはやるせない。

もがく体力も時間も残っているので、何とか滝に近づく方法はないか地形図を見つめる。

中間尾根に登っていくと、滝の左岸からアプローチ出来そうな図になっているので、雪渓を一気に高巻いて滝にダイレクトで目指すルートを画策。


布引東尾根の谷との二俣まで戻って、中間尾根に取り付いて登ってみる。
最初こそ崩落後のガレ場で慎重に登れば苦ではなかったが、それを過ぎると藪が猛烈に襲いかかる。
しかも急斜面での藪漕ぎとなるので、一歩前進するにも藪を力で押し分けて体を入れ込むので体力が一気に奪われる。

崩落するような脆い斜面なので、引っこ抜けない藪を持っていないと滑落する恐れがある。藪は味方でもあるけど、進むには邪魔で敵になる不思議な奴。休める場所は少なく、とにかく上へ上へと無理やり登っていく。

息を切らしつつ藪を漕いだ。平坦な棚があると思われる目標の位置まで上がってこれた。直線距離では300mくらいしか進んでいないのに、1時間40分程も登り続けていました。


しかし、そこは平坦ではないし、藪が更に密度を増して5m先も見えない視界不良の場所でした。
その先に進んでみるも、更に藪は濃さを増すし斜面も急になっていた。
近付けないし、時間だけが消費させられる苦しい展開に、この高巻きルートはギブアップ。


結構な時間を掛けたし、相当の体力を奪われながら進んできたのに断念するとは堪えるものがあるが、お昼を過ぎて来たので時間的にも無理は出来ない。

そこから元の谷まで戻るのにも1時間ちょいは掛かった。

谷に戻ると、霧は無くなってるし、青空出てるしで視界良好。
雪渓に近付いてみると、朝の異様な寒さもない。


これなら行けそうだと雪渓に乗って進んでみる。

稜線が見える晴れ晴れな景観。周囲を見渡すと自らの愚がよく分かる。

左岸、崖だらけ。角度えぐし。高巻き出来るなんて思えない荒れた抉れている岩壁が連なっていました。
濃霧で左岸壁が良く見えなかったから行けるのではと勘違いしましたが、最初から視界が晴れていれば、高巻きの挑戦すらしなかったでしょう。随分と時間(体力も)を無駄に使ったものだと肩を落とした。
ちなみに右岸は左岸以上におもいっきり崖なので高巻きの取り付きすら出来ません。

雪渓は厚い。これなら乗っても大丈夫。それに、かっさーさんも居るので落とし穴のように雪渓が沈んで落ちたとしても救出の手があると思うと、安心して進める。滝を愛する仲間は頼りになります。

安定した雪渓は、ゴーロよりも平坦で歩きやすい。滑らないように、しっかり雪を踏んで登っていく。
手前に雪渓の終点と、連瀑帯が近付くと遠くに滝が見えた。北股本谷大滝の姿がようやく現れた。


木々を寄せ付けぬ赤茶けた岩盤から広がって落ちる直瀑。下部は手前の岩盤で隠れているが、それでも確実に30m以上は落差があるだろうと判断出来る。

近付きたい、パワーを感じたい。
この見えている連瀑帯を越えれば滝下に行けるのだ。

逸る気持ちが生まれるも、見えている景色はやはり絶望的。

雪渓の終点から、連瀑帯には取り付けない。クレパスのように雪渓がストンと切れ落ちている。雪渓の高さ、おそらく10m以上。
この雪渓から、谷に下りて、そこから連瀑帯に接近しなければならない。



えーっと雪渓にロープを下ろして、懸垂下降して雪渓の壁に触れながら狭い谷を上がっていく?
雪を掘って杭のような形を作って、ピッケルと雪を削った杭を支点にしてロープを下ろすんだっけか? どっかの本で読んだけど未経験だ。

さすがに、挑戦する気にはなれない。
これ以上先はエキスパートの領域だ。

ここで本当に終了。
遠望でも滝の姿が見れて良かった。
未知の滝を目指すと、全く滝が見れなくて悔しい日を何度か経験している。
それに比べれば、本命の滝を遠くても見れたのはまだ救い。

第1回、滝アタックは失敗に終わりました。第2回がいつになるかは分からないけど、また挑戦してみたい。
2020年のように雪の少ない時にチャレンジすべきか、それとも豪雪で連瀑帯が雪渓に埋まってる時がベストか、はたまた鹿島槍ヶ岳に向かう赤岩尾根から右岸をピンポイントに一気に下降するのが良いか。
選択は様々。どれも行ける気はしないけど……。

エキスパートの皆様、もしも滝下へ行けましたらどうやって到達出来たか教えて頂ければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします。


5:50 大谷原の駐車場 出発
6:30 北股本谷の堰堤
7:00 最後の堰堤
8:00 標高1680m付近で待機
10:50 行動再開 左岸尾根に取り付く
12:30 左岸尾根1880m付近で断念 谷へ下降
13:40 北股本谷に戻る
14:30 遠望地点
14:50 下山開始
17:15 大谷原の駐車場 到着

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