中津川渓谷
神楽滝


所在地
福島県北塩原村

地理院地図 (←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます)
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ 中津川渓谷の滝。二泊三日が基本の沢登りの道中に出会える滝。中津川レストハウスから入渓するのが一般的だが、上流にある取水堤までショートカットも可能。
訪問日 2018年9月23日
2020年9月20日

神が宿る場所、神楽滝。素晴らしい名です。
落ち口から滝壺まで一気呵成に落水し、飛沫と爆風を周囲に放出する姿は剛勇そのもの。

もしも神に闘う時がきて、武器が必要になるのなら、この神楽滝から創れば豪胆な剣が産まれる事だろう。何を言ってるのかよく分からないでしょうがトランスフォーマー的なイメージをしてくれれば良いかな。
神楽剣、超絶にカッコいいじゃないですか。吾妻山の御祭神であるオオツノカミに是非振るってもらいたいものです。

長く険しい道中を越えてきたから、感動も一塩ではあるけれど、この滝がお気楽に出会えたとしても存分に感激したと思います。
深い滝壺には深い感動を、躍動感とかっこいい飛沫を生む直瀑の力強さに意欲を頂きました。


昨年の朱滝からの、一年越しリベンジ中津川渓谷です。

前回は変則的な山ヤさん的にアプローチし朱滝を目指し中津川に入りましたが、中々の無理ゲーでした。よく全員無事に帰れたと胸を撫で下ろした次第です。
今回は前回の反省を活かし、一泊二日の泊まり道具を背負い、沢ヤさんスタイルで中津川遡行にて挑みました。
ただ下流部の見所である白滑八丁という美しい流れ(かなりの難所)は時間が掛かってしまうのでパスし上流部からのショートカット入渓しました。もし白滑八丁から入るのなら二泊三日が必要になります。

まずは中津川レストハウスで三浦さんと落ち合って、自分の車はレストハウスに置きっぱなしにして、三浦さんの車で北西にあるグランデコスキー場に向かいます。

緩やかに北に向かうカーブの地点、ここには中津川の取水堰堤に向かう林道があります。
車で進んでいけると思ってましたが、真新しい鎖と南京錠が掛けられていました。林道の奥の1003地点まで車で走って楽をしたかったのですが、仕方ないので脇にある広場(5〜6台は駐車可)に車を止めて、ここから歩き始めです。

鎖ゲート前

1003地点の案内

取水堰堤

いきなり大きなタマゴタケに出会いテンションが上がりました。ナメコが見つかれば最高だなぁと皮算用してヨダレを垂らしながら、広い林道を歩いていくと中津川へ向かう案内の看板(1003地点)が現れます。

案内のままその通りに進むと取水堰堤が登場。さあここからは沢登りだと気合いを入れる。

轟々と岩を跳び落ちていく中津川の勢いは強い。そして至る所、足が付かないほどの深さを持っています。油断すれば夏目漱石です。坊っちゃんです。いや、ボッチャンです。全身びしょ濡れになってしまいます。

まだ朝の時間帯、渓谷内は暗く空気は冷たい。触れる川の水も、もちろん冷たい。まだ浸かりたくはないなぁと乗る岩を選んで、深い所を避けて遡っていきます。


目の前に広く深い滝壺が現れる。これが銚子口でしょう。左岸壁をヘツって越えるようだけど、そんな事出来るのか心配になる荒々しさ。へつりに失敗しても深い滝壺に落ちるだけで、命を落とす事はない(寒いけど)。大丈夫だと言い聞かせていざ左岸壁に取り付く。

するとあらビックリ。良い持ち手と良い足場が沢山あるし全然滑らない。これなら安心と無事に落ち口に立つ。その先の左岸はツルツルの崖と深い滝壺になっていて進めないので、右岸に移動。
落ち口上を渡渉です。滑ったら渦巻く滝壺に飲み込まれるので飛び越える一歩はなかなか勇気が入りました。
その後の右岸壁も磨かれていてあまり掴み所がないですが、何ヵ所か見つかるホールドにしっかり指を掛けて登り切りました。

自分的にはかなりの難所でしたが無事に突破できて一安心です。この先はゴーロ。でも岩が大きかったり淵が出たりと気の抜けない力一杯の遡行で体力が奪われていきます。


こんな所が当たり前に出てくる

遡るのが楽しい♪

銚子口に似た深い釜の登場。ここも左岸壁をヘツるようですが、最初から壺に入って壁を触りながら移動。途中からグッと深くなりザックの浮力に助けられてプカプカ浮きながら手で移動して越えました。

さて大きく深い滝壺を持つ15m程の滝が現れました。観音滝です。


この滝でも十分魅力のある秘境感たっぷりの滝なのですが、通過点だと思うと気持ちの入りようが違ってしまうのは滝に対して申し訳なく思います。でも会った瞬間、神楽滝に行くにはどうすれば巻けるか? を最初に考えてしまいました。

そうなると滝を楽しむというスイッチは入らず、結局あまり感情が入る事なく左岸から小さく巻いて別れを告げました。

ここを過ぎれば再びゴーロ地帯。大きな岩、深い淵などは時々出てきて変化があって面白い遡行です。


更に深いゴルジュでは左岸から右岸へ、5m程だけど泳いで移動。ザックが浮いて、ヘルメットとぶつかって視界を隠す。どうすればヘルメットがお辞儀しないで泳げるのかよく分からない。

この辺りから泳いだ寒さや疲労が現れ始めて歩くスピードがガッツリ落ちてしまいました。


観音滝から3時間以上過ぎて、右手から赤い沢が合流してその奥に滝が見えました。これが権現沢の権現滝です。大きな滝ではないですが魅惑的な岩盤の色と、勢いのある落水が素敵でした。


さて権現滝の滝下から戻って、中津川をちょっと進むと周囲に高い崖が配置されてきて、やっとこさ神楽滝のお目見えです。

開放感抜群の空間で、勢いに圧倒されます。大きな滝壺ですから、あまり飛沫が来ないかと心配しましたがそんな事ありません。広い滝壺を凌駕する見事な飛沫を受けました。
この日は晴れていて有難いことに虹が見れたのでテンションアゲアゲで存分に楽しみました。


神楽滝に別れを告げて背を向ける。より上流に進むために高巻くのですが巨大な滝は、当然ながら高巻きも大きくなり、時間が掛かります。

中津川の左岸、権現沢との中間尾根に取り付く。ここの踏み跡はしっかりしてますし、途中から古い看板や鎖、ワイヤー等もありました。


ずいぶんと高く上がって、ここから尾根の傾斜がきつくなるかなって所で、踏み跡は下降路に向かいます。北東に上がって、真西に進路を変える。カックンと折れ曲がる巻き道です。

下りも踏み跡は明確で、厳しい傾斜ではないのでサクサク下りていくと中津川に戻り、目の前には夫婦滝が見えました。


一つの川の流れが、二つに別れさせられて、再び一つの滝壺で合流する。なんかステキやん。
手を繋いでいるカップルが対向から避けるでもなく突っ込んでくるお一人様を避ける為に、手を放して左右に別れてやり過ごし、再び手を繋いで歩き出す感じか。
あのお一人様はカップルを離れさせたくてワザと真ん中に突っ込んでいるのだろうか、甚だ疑問です。

夫婦滝は右岸に鎖があって容易に越えられます。鎖を使わなくても岩壁を簡単に登れます。

ここの沢は本当に楽しい。脇から地形図に書かれていない枝沢が沢山あるし、大岩があったりゴーロになったり狭まったり変化に飛んでいて全く飽きない。

全体的に滑る岩が多いのだけど、釜の淵をヘツる時などの岩壁はしっかりグリップが効いて安心出来る優しさを持っている。本当に素晴らしい沢です。

ワクワクしながら歩いていると静滝が現れる。


どの滝も滝壺が大きくて深い。優しく岩肌を撫でるように流れ落ちる姿はこの中津川の中では唯一の優しい滝だと思う。正しくドラえもんのしずかちゃんみたいな存在です。

ここは左岸から取り付くと途中から鎖が現れますので安心の高巻きです。

16時を過ぎて日没が少しづつ近づいて来る。そろそろ幕営する場所を考えなければならないと適地を探してキョロキョロしながら歩いていると神楽滝のように両岸ともに高い側壁が現れました。



熊落滝

先を見ると15m程の滝、熊落滝です。
これは、凄い。幅広の滝の威力も立派ですが、取り囲む奥の岩盤に驚かされる。写真では分からない、この場所に来たからこそ分かる迫力。鳥肌立つ、さぶいぼ立つ、おしっこちびりそうに体が震えました。

熊落の奥から放たれる隔絶された禍々しい迫力。その正体は不忘滝。ここからでは姿は見えないけれど迫力はピリピリと突き刺される。何とかお近づきになりたいものだが、私では無理だな。

この二つの滝を越えるには神楽滝以上の大高巻きを強いられるそうだ。右岸、左岸、どちらの巻きでも2〜3時間は掛かってる記録が大半。

熊落滝から振り返って左右を見渡すが高い壁だって事が分かるだけで、高巻きの起点が見つからない。
どちらから巻くか、まだ協議をしてなかったし、確実に時間が掛かる事から今日の活動はここで打ち切りとする。

熊落滝から100m程戻った左岸に平らな場所があったので、ここを幕営地と決めてザックを下ろしました。ちょっと下流に行くと左岸岩壁から小沢が流入しているので、水が汲めるのも有り難い。
 
川面より1m程高いくらいなので、豪雨の大増水には耐えられない平場だけど、明日の天気も晴れ予報なので雨が降らないのを祈りました。一応、ザックやら道具は流されないようにロープに括って大きな岩に巻きつけました。

ツェルトを設営して、焚き火を起こす。
昨年、朱滝の手前でビバークした時に暖をとるために焚き火を起こそうとしたが、中々着火しなくて物凄く焦りました。
この一年、焚き火の練習を沢山してきました。ようやくその成果を中津川に見せる時が来ました。という訳で一発着火。いやぁ成長したものだと自画自賛です。

晩飯食って暗くなったらもう寝床に入る。
震えて耐えた昨年とは違って、今年は寝袋に入ってホカホカ気分で就寝です。

さあ、明日は朱滝に向かいます。
5:50 グランデコスキー場の麓 鎖ゲート前 出発
6:50 取水堰堤
7:25 銚子口
9:10 観音滝
12:50 権現沢 出合
13:25 神楽滝
14:05 出発
15:05 夫婦滝
15:35 静滝
16:10 熊落滝


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