所在地
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新潟県湯沢町
(←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます) |
評価(5段階) |
★★★★★
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難易度(5段階) |
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苗場山の南東部、熊の沢にある滝。苗場スキー場の脇から赤湯温泉に向かう登山道を進み、赤湯温泉からサゴイ沢に入渓。五重滝を越えると熊の沢に入り、遡上。滝まで片道6〜7時間なので一泊が無難。 |
訪問日 |
2018年8月19日 |
今回は冒険です。
何故なら初の単独の山泊だから。泊まりで滝に挑む時は、必ず仲間がいるから頼もしく怖くなかった。
そんな頼れる仲間がいない単独行。不安ばかりが募る中で自宅を出発しました。
苗場プリンスホテルのでかさに驚かされつつ、その脇を走行し苗場スキー場を抜けると早々にダート道に進入。凹凸の少ない平坦な道なので平均的な車高があれば問題なく走行出来ます。
そんなダートを4kmほど走るとゲートが立ちはだかります。どうやら車はここまでの模様。4台くらいしか止められないのは少ない気がします。
この滝までなら気合いを入れれば日帰りも出来ると思う(闇下山は覚悟しなければならないが)。その方が荷物が軽いからサクサク進めるだろうけれど、今回はあえて重い泊まり道具を背負ってみました。単独での山泊を経験してレベルアップを図る目的もあります。
まずは平坦な林道歩き。自転車を使って時間短縮する人もいるようですが、地道に歩きました。およそ2.4kmです。
林道の終点、釜段の滝のある棒沢の橋を渡ると登山道になります。標高差150mほど一気に上がるので途端に汗と息切れが現れます。
登り切るとわりかし平坦な道に変わって歩きやすい。赤湯までの到達時間が記された案内が要所要所に出てくるので迷うことなく安心です。
出発から2時間で秘湯、赤湯に到着です。歩いて来なければ入れない温泉って素敵です。500円で日帰り入浴も可能のようです。
この赤湯の手前で入渓するのも有りなようですがゴルジュで越えるのが大変な滝があるようなので、苗場山に向かう登山道をまだ利用して、再びサゴイ沢を跨ぐ橋から沢靴に履き替えて遡行開始です。
穏やかなサゴイ沢を気軽に進むと五重滝の登場。大きくは無いけれど両岸共に高い岩盤を持っています。
左岸の岩壁を簡単に越える、とレポにありましたがその岩壁はオーバーハングしていて簡単ではありませんでした。真新しい虎ロープが垂れているのですがそれを掴んで登ろうとしてもバランス崩して落ちて、そんな事を2回繰り返し、これはここで敗退かと諦めが生じましたが、背を伸ばしてギリギリ掴めたブッシュを頼りに、腕力勝負で何とか越えられました。
初っ端からこのような苦戦では、ここから先も苦労しそうだなとめちゃ不安になります。
岩壁を上がると巻きの踏み跡が見つかり、そのまま登っていくと熊の沢出合いの滝が見えました。踏み跡は更に上に伸びていて辿っていくとまとめて巻けて、更にその上の9m滝も越えて下りられました。しかしこの巻き道も馬の背のような細い箇所があったり崖っぷちを進んだりと怖い巻きではありました。
出合いの滝群を越えられたので、優雅な沢登りになります。沢の幅は広くは無いけれど藪も多くなく見晴らしの良い歩みです。
要所要所で出てくる小滝は、登れる滝は登り、無理なら巻くって感じで進み、6m滝は左岸に取り付きましたが、出だしの草つきが滑りまくって難儀しました。
さて広大な三俣を通過すると見せ場の一つである30m滝の登場です。
素晴らしく雄大な滝だと感嘆すると共に、どうやってこの滝を越えるか考える。
途中から右壁を登って垂れてる木を掴む。これなら自分でも行けそうだと一安心。
見通しが得られたのでザックを置いて滝観賞と撮影を楽しむ。開かれた横幅の広い岩盤に青空はよく似合う。のんびりしたいけれど、メインの滝にもう少しで会えると思うと気が逸って、早々にザックを背負って岩盤を登り始めました。
最初はどこでも快適に登れます。あえて水の中に足を置いて滝を楽しみつつ上がっていき、一息つけるテラスに着いたら滝から離れ右壁に向かう。見晴らし良く高度感がありますが、乾いた岩は全く滑らないし順層になっているので安心して登れました。木を掴んで岩盤の上に出たらピッタリ落ち口に戻れました。
さあ、50m大滝が見えてきました。遠くからだと垂直の岩壁から飛び出しているように見えて、自分の気持ちも飛び跳ねます。
近付いていく。そびえ立つ岩盤の圧力を感じ始める。見えない巨大な手で押し潰されているかのような圧迫感。凄みを感じます。
目の前には前衛滝である10m程のトイ状の滝。これを越えればゴールです。左岸壁をヘツってトイ状の滝の滝壺の上へ一段上がる。ここから斜度は上がるが半分までは登れた。でもその先はチュルンチュルンで自分の力量では登れず、そこから右岸の草付きを這い上がって巻きました。
滝前です。来れたことに安堵。険しい絶壁の空間ながら、フラットな滝前で寝転がる事も可能。ザックを下ろして胡座をかいて、まずは息を整える。
50mの落差はない。30〜40mだろう。前衛滝をひっくるめての落差なのかな。落ち口から飛び落ちる滞空時間と水量が足りず雨粒ほどの大きさの飛沫が生成されている。より細かなミストが好みなのでその点は期待外れです。
しかし岩盤の鋭気が凄まじすぎる。垂直に切り立った左岸壁は滝以上の高さを誇りその存在感は圧倒的だ! もしも彼(岸壁)がわずかでも力を入れて「ドン!」と覇気を出したら、自分はその気に耐えられず泡吹いて倒れてしまうだろう。
それ程の威圧感を持ちながら、滝前は非常に優しい。懐に入った者には慈愛をくれる。険しい姿ながら真逆の穏やかさを持っているのが面白い。リーゼントのヤンキーが子猫に餌を上げてるような感じか。
想像以上の凄みと想像以下の心地良さが交錯し、前者が勝る。全てひっくるめて素晴らしい滝だと判断しました。
今日の目標は達成したが活動は終われません。この滝を高巻いて上流部で一泊する予定です。
左岸は絶壁で当然ながら無理。右岸一択の高巻き。草付きの岩壁をトラバースして藪木が密集している所から岩壁を乗り越える大高巻きの始まり。
草付きトラバースはマジで怖かった。よく滑るし掴むものは少ないし、滑り始めたら止まらずに前衛滝の下部に吸い込まれるであろう。もしも落ちたらと考えると体が固まってしまったので、ロープを出して確保しつつ移動しました。
藪木の密集地帯に着くと、僅かながら踏み跡が見えて安心。しかしそれを辿るが掻き分けるのが面倒な藪の濃さ。落ちる心配はないので、恐怖心がないのは救いだけどかなりうざかった。
藪を突っ切ると小尾根のピークに立ち上がる。見晴らしは良く、熊の沢がだいぶ下に見える。落ち口は越えたようで一安心。あとはどうやって沢に戻るかだが、小尾根をちょっと進むと崖の間に草付きの斜面が見えて、あつらえたように木の根が張り出していたので、支点として利用し懸垂下降そして草付きを滑って沢に戻れた。
落ち口からの景色、対岸の絶壁は迫力ありすぎ。すげえパワーを感じます。
さぁあとは今日の寝床を探すのみ。大滝より先は稜線が望める穏やかな渓相。平らな場所を探して右往左往しながら遡っていきます。奥の二俣の200m手前付近で整地する必要のないフラットな場所が見つかり、ここでザックを下ろす。
落ち口からここまで、複数人が集まって幕営出来るような広く平らな適地は見つからなかったです。大勢で来るには適していないと思います。
日没まで時間はたっぷりありますが、ツェルトを張って薪を集めて火を起こしているともう夕方。一人だと何かと忙しい。
食事を終えると辺りはもう暗い。誰もいない景色、咳をしても一人です。
ゆっくりまったり日没を楽しんで、ツェルトに入って就寝。足が攣って目が覚めて、おしっこしたくて目が覚めて、あとは爆睡ぶっこいて目覚ましタイマーに起こされた。
一人は不安だし怖くもあったけどよく寝れました。
4時30分、起きて速攻で火を付ける。前夜に焚き付け用の薪を用意しておいて良かった。すぐに着火してくれて震える体を温めてくれる。
沢登りはもう少しで終わる。あと少し頑張れば登山道で下るだけ。そう思うと気は楽で、太陽が苗場山を照らしていくのを眺めながら、朝食そして片付けを終えて出発。
早々に奥の二俣。登山道に出るには右手が近いので右俣に入る。
進むほどに笹薮がせり上がってくる。でもまだ序盤は沢から離れなければ手で払うくらいで軽快に進める。順調順調。
沢に水の流れが無くなって、登山道まで残り300mという辺りから、笹は原っぱではなく壁となる。
高さは2mを余裕で越えて、見上げても空が見えないくらい笹に囲まれている。
掻き分けると現れるのは同じ笹の景色。大丈夫、こんな藪こぎ、経験あるさと深呼吸をする。
しかしここの笹は元気だ。押し込んでも折れやしない。見事にしなるだけで体にまとわり付いて離れない。10mも前進出来ずにすぐに息切れしてしまう。
沢筋の方がいくぶんか楽かと思っていたが、こちらの方が酷い。幅1m程の沢筋には岩が剥き出しで、そこには確かに笹は生えていないのだけど、左右から伸びている笹が沢筋に倒れ込んでいて横に積まれたかのように視界を隠している。押しても殆ど動かない。
まだ垂直に伸びている笹の方が御しやすいので、沢筋から離れた。
ここの笹薮、凶悪過ぎる。自分も笹を折って突き進むが、笹もこちらの心を折りにきている。
グッと押し込んで掻き分けると笹の葉なのか枝からなのか粉末が舞い上がり、それを吸い込むと見事に咽せる。息切れで呼吸が乱れているのに、更に撹乱させられる。
座って休みたいけど、笹が邪魔して膝が曲がらないし笹の当たっている状態では休んだ気にならない。
登山道まで100mは切ったと思う。視界は何も変わりないが、登山道を歩いているだろう人の声が聞こえた。
人がいることをとても嬉しく思って、声を出そうとしたけど、あまりの意味のなさに口を塞いだし動きを止めた。相手には自分がどこにいるのか分からないし熊と勘違いされても嫌だから。
とにかくもう少しなんだ。声が聞こえただけで、ヒビが入っていた心がちょっぴり繋がった気がした。
掻き分ける、突っ込む、咽せる、振り払う、呼吸を整える、汗を拭く、重労働この上ない作業。
奥の二俣から1時間35分、もがきまくってやっと登山道に出れた。こんなに苦労するとは予想外、今回の沢登りでこの詰めが一番過酷でした。
何にも邪魔をされない開放的な登山道に腰を下ろして、爽やかな空気を吸い込んで落ち着きを取り戻しました。
熊の沢は終えた。あとは下山だけなのだけど、今回は苗場山の山頂を目指す。
普段ならそのまま下山なのだが、この山には思い入れがあるんです。
中学生の頃、親父に連れられて苗場山に来たことを覚えている。道中、すごく苦しくてサクサク進む親父に「休憩させて」と何度も弱音を吐いた。
やっとの思いで山頂に着いたが、そこは白いガスの中で何も見えず虚しさだけが残った登頂だった。
親父としてもこの結果には無念だったと思う。親として、苗場山の素晴らしさを子に伝えられなかったのだから。
あれからウン十年経って自分が親になって、親父の気持ちが理解出来た。子供の笑顔が見たかったんだ。
あの時、見れなかった景色を子としてちゃんと見よう。それも今回の目的の一つでした。
荷物を登山道にデポして、貴重品だけ持って身軽な状態で山頂へと歩む。
たぶん登山コースは違うけど、目指す頂きはあの時と同じだ。
狭い尾根の登山道を登りきった先には広大な湿原があり、遥か先には北アルプスが望める。遮るもののない澄んだ青空と潤いのある生命力豊かな草原と澄み渡る沼地が点在していた。
緩やかな勾配の木道を進んでいく内に、その美しさに自ずと笑顔になった。
そうか、これが親父が見せたかった景色であり、見たかった子の笑顔なんだと実感した。
子の笑顔を見るのは親として至福。その気持ち、伝わったよ。
これで今回の目的は全て成した。あとは下山するだけだ。赤湯の温泉に入りたかったけど、今回の優先度合いは滝>山頂>温泉なのでスルーした。笹との格闘が無ければ時間と体力に余裕が生まれただけに悔やまれる。
登山道は明確で安心だったけど、長くて本当に疲れた。時々現れる枝沢の水に涼を貰いつつ、無事に駐車場に着いた。
滝も良かったし、景色も満足、そして害虫(アブやヒル)が全くいなかった点も素晴らしい山でした。
8月19日
4:40 ゲート前 出発
5:20 林道 終点
6:30 赤湯温泉
7:00 サゴイ沢 入渓
7:45 五重滝
9:50 6m滝
10:50 5m滝
11:00 三俣
11:15 30m滝
12:00 熊の沢大滝
13:20 出発
14:40 熊の沢大滝 落ち口
15:20 幕営地
8月20日
6:30 出発
6:40 奥の二俣
8:15 登山道
9:15 苗場山 山頂
13:05 赤湯温泉
14:30 林道 終点
14:40 釜段の滝
15:30 ゲート前 到着
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後日
BAL「親父、中学生の時に行った苗場山に登って来たよ」
親父(パラグライダーに夢中)「おーそうかい」
BAL「あの時は見えなかったけど、今回はしっかり見てきたよ。綺麗だった」
親父「? あの時ちゃんと見たよ?」
BAL「えっ? ガスで見えなかったんじゃ」
親父「それは瑞牆山(山梨県の百名山)」
BAL「えっ?」
親父「苗場山は俺を置き去りにしてさっさと山頂に行ったじゃないか(笑)」
BAL「・・・・」
親父「あと中学じゃなく、高校生の時な」
BAL「・・・・」
記憶違いしてたみたいですorz フヒヒwwwサーセンwwww
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