不動七重滝






滝名 不動七重滝  
落差 100m 
所在地 奈良県下北山村
  
お勧め度(※五段階) ★★★★★  
難易度(※五段階) ◆(道路の展望台)
◆◆◆(遊歩道先の展望台)
◆◆◆◆◆(滝前)
  
現地へ  大台ケ原の南部。国道169号を進んでいると、山側に案内を示す看板があるので、その道に折れて進む。暫く進むと滝見台に到着。
その滝見台より600m程戻った所から遊歩道を進むと、滝を間近に見れる。

日の出前や日の入り後の、太陽が沈んでいないのに明るい数十分間。
魔法のような美しい空が見られる

トワイライトタイムとも言います。
黄昏時であり、「君の名は」ではかたわれ時と表現されているその時間は、空の色が濃く、最も美しい時間である。しかしそれは儚くも一瞬で終わってしまう。

不動七重滝の世界は、マジックアワーが永遠に続く。
それ程に、美しい滝でした。

此度の滝下降については、はんぺんさん(アクアさん)にお願いし、企画して頂きました。
本当にありがとうございます。

この日ははんぺんさん以外にアンさんと森さんの計4人での出陣です。よろしくお願いします。
ちな、ここは懸垂下降の連続となるので、人数多いと相当時間を奪われますから4〜5人までのパーティーが良いでしょう。

昨年の2023年は増水により断念。ここは遠望が一般的な滝なので、道路から遠方すれば滝の中に入っていけるか判断が取れますので、水量の多さに無理と判断が下されました。


では2024年はどうか? 前日の夕方に雷雨があり、ワイパー最速にしても走行が困難なくらいの集中的豪雨があったので心配でしたが、どうやら不動七重滝周辺には影響がなかったようで増水はなし。
遠望して、これなら決行出来るとはんぺんさんがOKサインを出しました。


遠望地点から車を走らせ、不動七重滝の展望台へと向かう遊歩道前で駐車。やや離れた所を含めて5台は止められる感じです。

準備をしつつ装備の確認。
ここで私は失態を犯す。
私が所有する60mロープは重いし場所取るので、どうせ使わないなら持ってこなくていいやと今回は家に置いてきました。
しかし、60mロープが必要だと言われました。てっきりはんぺんさんの持つ70mロープだけで足りるのだろうと思っていたのですが、それだけの長尺ロープが2本必須のようです。
血の気が引くとはこの事。固まってしまった。
はんぺんさんが予備で用意していた50mロープが出てきて、何とかなるだろうと言ってくれたので、出発の運びとなりました。
もう申し訳なさに萎縮。本当にすいませんでした。


さて、遊歩道で斜面を一気に下ると前鬼川が目の前に。橋を渡って左岸へ。
ここ歩いているだけで、前鬼川の綺麗さに惚れ惚れする。
遊歩道なのでちゃんと案内があり、それにそって前鬼川沿いを進んで行く。


やがて案内は山斜面へと向かい、ここから階段のブチ登りとなります。
急斜面に設けられたら階段は、非常にしんどい。でもこのお陰で滝前に行けるのだから感謝しかないです。
顎から汗が落ちる程の運動。上半身が汗塗れとなりながらひたすら登っていく。
どうせこれから滝前で涼しくなるのだから、今は火照ってる位で丁度いい。


やがて終点の展望台。
ここから不動七重滝の中で一際大きな直瀑であるF5が見えます。


※ちなみにここからFの表記が多く出てきます。Fは(WATER)FALLの意味で、F1は一番目の滝という意味です。道路沿いの展望台から見える不動七重滝の中で見えているのはF2〜F5。F1とF6・F7はそこからでは見えていない訳です

ただし、展望台なので遠くに見えるだけ。観光地として、ここまで近付けるなら十分でしょう。
昔の私はこれで満足してました。

でも今回は違います。鬼の中に侵入します。
展望台から右手(F5に近付く感じ)へ。キャニオニングのツアーが入っているので、それなりに踏み跡が見えます。
ちなみに、TAKUさんが開発したルートは展望台から左手の急斜面側。
そこからロープ出して下っていくと、F1上の大広間に出れるようです。

我々はF5の正面を目指しますので、右手の踏み跡を辿る。
かるく藪を払いながら踏み跡を見ながら下って行きます。
すぐに崖っぷちとなり、ここから懸垂下降となります。

何度となく支点として使われているのだろうと思えるくらい、ベストな所にある立ち木を利用して70mロープをダブルにして懸垂下降。
高さがあるので怯むものはありますが、垂直ではないのである程度足が置ける場所があり、冷静に崖を下りていきます。


滝壺に近付く程に飛沫の量が増していく。素晴らしい飛沫の放出量に興奮しながら懸垂を終える。
大きな大きな大きな釜を持ったF5の滝前に到着。これがまたデカいだけでなく、透き通る青い滝壺なんだ。
物凄く力強い直瀑。飛沫は優しくも大量に降り注ぐ。


後ろを見ればF4〜2の段瀑が落ちている。
早速、凄い世界観に見せてくれる。
滝の中に入れた嬉しさ。初めましてBALです。歓迎して頂きありがとうございます。そうF5にお辞儀をした。

南西に向いている滝なので、午前中の早い時間ではまだ太陽が当たらない。左岸側はずっと飛沫地帯なので長くはその場に留まれない。
ここからF4、F3と段瀑を下っていきますが、そのルートは右岸になります。
なので右岸に渡る必要があるのですが、。
それがもうドン引き。


何故ならF4の落ち口上で渡渉しなければならないのです。
その落ち口が綺麗な銚子口になっていて、大きく深い滝壺から奈落に落ちるかのような勢いで水が吸い込まれていきます。
これミスったら落ち口からF4へと落とされるんだよね。落ち口から離れながら泳いで渡ろうとしても、落ち口に吸い込まれてしまうかも知れない。
そう思うと安易に取り掛かれない、たじろいでしまう。
悪いイメージが拭えず、足が動かない。

ここで最初のロープの失態を思い出し、自分が責任を取らなきゃいけないと覚悟を決めた。
出来るだけ落ち口ギリギリまで下りて、思いっきりジャンプした。
そして無事に銚子口より先まで飛べて、対岸に渡れた。
心底ホッとしたし、これで帳消しとまではいかないけどミスについてちょっとは汚名返上出来たのならいいな。

あとは私とはんぺんさんが支点となって両岸の間にロープを張り、それを伝って全員が右岸へと渡るのに成功した。
今回の不動七重滝の一連の行動の中で、一番怖かったのはこの渡渉でした。


右岸に渡ると飛沫は来ず、落ち着いてF5を鑑賞出来る。
我々が写真撮影など滝を楽しんでいるとアンさんはそこで横になって寝てしまった。
スッゴい気持ちよさそうだし、とっても贅沢な昼寝タイムなので、私も寝よっかなと思ったけど、滝を見るとバキバキに目が覚めてしまいとても横になれなかった。
森さんはとてつもなく泳ぎが達者で、F5滝壺を堪能している。
私も岩の上から飛び込んで滝壺を泳いだけれど、あまりの深さと荒ぶる波にビビってしまい、すぐに岸へと上がってしまった。その辺り、とてもチキンです。


F5に太陽が当たり始めたのは10時15分くらいかな。そこから満足行くまで撮影を行った。
さて段瀑へ下降を始める。

F4は緩やかな右岸の緩やかな傾斜なので足で下りていける。
次いでF3はその落ち口上にアンカーが打たれており、それを利用してロープを下ろす。


ここでまずは50mダブルで下りる。
F3を懸垂下降して深い滝壺にボチャンと落ちる。そこからF2落ち口の淵に上がるのだが、ザックが重くて這い上がれず、はんぺんさんに引っ張り上げて貰った。


F2の後半はほぼ垂直の懸垂。しかもかなりの大きさ。ここも滝壺に落ちてから淵まで泳がなければならない。
ここで先ほどの50mと70mを繋げて合計120mをダブルで使って下りていく(アンカーは変わらずF3上にあるのを利用)。
ロープ長には幾分か余裕があったので120mあれば大丈夫だと思う。


滝壺から上がるとそこはF1上の大広間。
厳しい段瀑の中の、超絶憩いの空間。
目の前には青く深い滝壺が超広がり、そこから滝が連続して超落ちている。先程までの険しい淵の状況から一転して超まったり寛げる穏やかさ。
・・・超が多くてすいません。超興奮してるのです。

と言ってもこれで終わりではなくまだ懸垂下降は続くし、ほぼ逃げ場のない場所なので、緊張感は解けない。
ただ、今はそれを忘れよう。
花が咲いたのなら、まず香りを楽しもうじゃないか。


ここから見る不動七重滝は巨大かつ超絶な美しさ。
激しくも麗しく、鬼のようであり天女に見える時もある。

時刻は12時30分。太陽が滝の全てを照らす。水の動き、青空、雲の模様、岩盤も滝壺もキラキラと光り、見渡す世界は一秒たりとも同じ景色を作らず、刻一刻と変化を続ける。
魔法のような美しい時間、マジックアワー。この場所から見る不動七重滝はまさに魔法の世界だ。

ご飯を食べながら、撮影を楽しむ。滝壺を見ては感嘆し、滝を見れば惚ける。
ここでも昼寝出来たら最高の贅沢だけど、やはり興奮してしまい横にすらなれなかった。
時間を忘れる一時で、これが永遠に続けばいいのにと切に願った。

だけど太陽は無情で、やがて滝は影に隠れ始めてしまった。
それが終了の合図となり、動き始める。


さぁ、これが最後の懸垂下降。
太陽の当たらない漆黒のF1。ここだけは暗い雰囲気で鬼そのものである。
一番、危険な箇所なので気をめっちゃ引き締める。
支点は右岸にいくつか見つけた。
70mロープをダブルで下げる。はんぺんさんを先頭に次々と下りていく。


懸垂で下りると、2人が何とか立てるスペースがある。
狭い足場だが両足で立てるので、バランス崩して滝壺に落ちないよう気をつけながらロープを回収してザックにしまう。

さあ漆黒の滝壺に入る時だ。
ここが肝です。


先に渡り終えているはんぺんさんが右奥に立ち、「左へ左へ」とハンドサインをくれる。
この滝壺は暴れ具合もさることながら、恐ろしいトラップが待ち構えている。
堅実に行こうとするなら、右壁沿いに伝って進みたいのだか、それは絶対にやってはいけない。

そこの溝は渦が巻かれていて、脱出不可能になる可能性があります。
以前、アンさんがその渦に捕まってしまいグルグルと回らされて苦労したと聞きました。
先に滝壺に下りた泳ぎが達者な森さんも、徐々に渦の方向へ流されていき、無理やり岩壁を掴んで逃げていたの見ていた。
だから、自分は滝の方向を目掛け、左側に飛び込んだ。
凄い勢いで流される。左へと進む流れに乗れたようで無事にF1滝前に着いた。
「全員、生きて帰れたね!」そう言ってみんなでハイタッチした。


そして後は前鬼川の緩やかな淵を浮かびながら流れていく。


最後はその綺麗な淵で川遊びしているリア充のファミリーの中に乱入して、遊歩道に復帰。
安全が確保され、これで不動七重滝は終了です。

高い懸垂下降から始まり、滝壺のジャンプ、懸垂下降、滝壺に入り、また懸垂下降。
高さに怯むものがあったけど、恐怖という感情は殆ど出てこず、ただワクワク楽しんでいた。

また来たいな、そう思う滝は当然ながら多々あるけれど、「また明日も来たい」と思ったのは初めてで、もう完全にこの滝の魅力に取り憑かれた証拠である。


※もしも行こうと検討された方。
ロープとハーネス類は勿論の事、他に支点工作の道具が必携です。
いざ懸垂下降して不動七重滝の中に入ったら、アンカーが無くなっていれば逃げ場は無いに等しいので、進退窮まる恐れがあります。
支点は傷んで使えない時や、増水時の水流で切られたり、落石で潰れてる事もあります(別の人間が回収しちゃう時もある)。
無くなっている際は自分達でハーケンやドリルでの工作が必要になります。
私は素人でえらそーな事は言えませんが、道具の有り難みを特に感じた滝巡りでしたのでお伝えさせて頂きます。

  

2007年5月

やっと滝壺へ向かう道を見つけまして再訪問。ちゃんと道路沿いに案内が出ていました。今まで何見て走行していたんだろう? と情けなくなるほど、はっきりと案内がありました。

吊り橋が崩れているが、渡れなくはないと記載されてまして川まで降りてみると、見事に橋は壊れていました。しかし、大きな岩があちこちにあるのでそれを踏み乗り越えていくと、水に濡れずに向こう岸へ到達。問題ありませんでした。

そこからは鉄梯子で急激に登りになるとありましたが、見つからずに一番下の滝に着いて終点。あれ、梯子が無い? とうろつきながら来た道を慎重に探すと、ちゃんとありました。

梯子は進行方向から死角になっており、更に下の部分は壊れていて上を向いて探さないと見つからない場所でした。危うく諦める所でした。

梯子に足をかけると、後は第一の滝壺まで急斜面を登る登る、ひたすら登る。
登りきった所に一気に滝が落ちています。出発からおよそ40分で到着。

この滝は全体像の優美さを眺めるのが一番です。
本当に綺麗な滝だと思っていましたが、間近で見ると、とてつもない迫力。水飛沫と爆音が舞い上がって顔に当たります。綺麗なんて言ってられない、なんと勢いのある勝手気ままな滝なのかと驚きました。
  
2000年6月

文字通り段瀑になっているが、全体像を見ることは出来ない。
もっと間近で見たいのですが、滝見台からでは限度があります。
近くに行ける道もあるようですが、情報不足です。
段瀑の中でも、こんなに整った流れをしている滝は中々お目にかかれないと思います。しかも、上部には直瀑も。
うーん、贅沢極まりないですね。更に滝壺の色がとても綺麗です。澄んだ濃い緑を持っていて、何から何まで美しすぎます。
2004年に大雨で崩れたとニュースが流れてましたが、どうなったのでしょうか?
 他写真 

F5

F1

渇水時

遊歩道入り口
訪問日 2001/05/08
2004/04/29
2007/05/01
2008/05/10
2023/08/12
2024/08/14

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