見返りの滝


Data 住所 村上市
評価(5段階) ★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ
三面ダムにすぐ南。朝日スーパーラインの鷲ヶ巣トンネルの南側に遠望の案内有。滝前に左岸から下段の滝を高巻いて上段に向かうが非常に困難。

コメント 三面ダムの朝日スーパーラインから遠望する滝です。

雪解け・豪雨時ではないと立派な姿にはならないようで、少ないときは枯れたようになってしまいます。

雪解け時が一番狙い易いのでしょうが、朝日スーパーラインが冬季閉鎖の時期があり、開通日が毎年バラバラでタイミングが難しいです。

今回は前々日に豪雨があったので、滝になっているだろうと信じて訪ねてみました。

道路から滝まで直線では250m位と距離は物凄く短いので体力的な負担は少なく済むのは有り難いです。

行ければサッと行けるし、無理ならサッと諦めて、ここの滞在は長くても2時間くらいだろうと思っていました。

しかし、いざ入ってみれば緊張の連続だし、この日は結局この滝一本で終了になっちゃいました。

まずは定番である遠望で姿を確認。三面ダムへの案内をやり過ごし奥三面ダムへと朝日スーパーラインを進むと、最初の現れる鷲ノ巣トンネルの左手前に路肩と案内の青い看板があるので駐車。

そして見返ると山中に大きな滝が見えます。雪解け時よりは少ないものの遠目にも水が流れている事が確認出来て一安心。ここからでも分かる、デカい滝だ。なんとか真下から仰ぎ見たいものです。

では滝下を目指しましょうとスーパーラインを戻って、見返りの滝のあるアシド沢の橋付近の路肩スペースに駐車。相変わらずアブがウザい中での出発です。

橋の左岸から緩やかな斜面で沢に入って、のんびり遡行。10分くらい穏やかな沢を歩いていくと二俣(1:1)が現れます。右俣に見返りの滝があるのは分かっていますが、左俣にも滝が見えたので軽く寄り道。左俣の滝も30mくらいで中々大きいです。

サッと撮影を終えて、本題の右俣に。5分も歩けば滝が現れます。

見返りの滝です。でもこれは下段の滝と表現すれば良いでしょうか。ここからでは道路から見える姿の滝が見えません。ただ下段の滝でも40〜50mの大きさがあり中腹ではヒョングリもあって魅力はあります。

でも見たいのはこれじゃない。そしてここまでは事前にネットの情報で仕入れていたので想定通り。
問題はこの下段の滝をどうやって巻くか? です。

見えている左壁(右岸)を登っていくのが一番早いでしょうが、掴みどころのない逆層の岩肌で登れる気がしないので断念。

もうちょっと左に藪の枝や根が伸びている溝があり、そこから上がっていって滝の落ち口へ近付けるのではないかとトライ。

溝は予想通り枝と根を利用してスムーズに上がれました。下段の滝から離れないように、というより滝に近づくようにと意識を持ちながらしばらく登っていきます。しかし、右に見える下段の滝に近づこうとしてもそこには藪がないし絶壁になっていて移動する術が見当たらない。

ならば下段の滝の落ち口まで上がり、鞍部があればそれを乗り越えて下降しようと考え、更に登っていきます。
藪があるので掴んでさえいれば落ちはしないものの結構な急斜面で足だけでは登れません。逆に藪から手を離すとあっさり落ちます死ねます。休めるような足の置き場がないのも困る。たまにある草付きに足を乗せて深呼吸の為に休んでいると剥がれて足場がなくなる始末。仕方なく休憩ポイントを探して上へと目指す。

登るほどに視界が開けてきて高度感から緊張してくる。こうなると体が強張って思うように動けなくなると共に、疲労が増してくる。ゼーゼー言いながら鞍部が出てこないか上がっていく。しかしいくら登っても藪の急斜面の視界は変わらない。

もう下段の落ち口はとっくに過ぎている高さまで来たはずだ。ふと後ろを振り返って見たら、トンネル手前の道路が見えた。と言うことは現在の位置は見返りの滝の中腹まで来たという事だ。それでも先が見えないとなると滝を通り過ぎて登っていく事になると予想。

ここで右岸の岩壁からのアプローチは断念し下降を始める。
安易に下れはしないので、何度か懸垂下降して下段の滝下に戻った。結局この右岸アタックに1時間50分費やしてしまった。

こんなに時間を掛けたのに振り出しに戻るとは何たる事か。でもとりあえず事故もなく戻ってこれてホッとした。

一旦休憩して心身をリセットしてから左岸に取り掛かる。こちらも岩盤が聳えているのは分かっているが、どこかでその上に乗って沢に戻れるかが鍵だ。

最初は大木もある尾根のような斜面を上がっていく。20mほど登ると岩壁が目の前に現れる。正面は全く登れないので岩壁沿いに右手を進む。すると水が染み出ているルンゼと泥斜面が出てきて、その泥斜面を踏ん張りながら上がっていくと岩壁の上に乗れた。

そこからは斜度は落ち着き、泥ではなくしっかり踏める土が乗ってる斜面で安定に移動が可能になった。
ただし沢に下りられるような緩やかな場所は見つからず止む無く斜面を上がっていく。

理想は上段の滝壺へ下りていけるルンゼがあればと思っていたけれど、上がれと上がれど滝へは絶壁が高く聳える一方で全く近寄れない。

これはもうギブアップかなと諦めつつも上がってきた斜面を戻っていくと、急斜面ながら下りられると思える傾斜が見えた。これなら沢に近づけそうだと踏み込んでみる。念のためにロープを垂らし、それを持ちながら下りていく。

無事に沢に降り立った所は下段の落ち口。ピンポイントに沢に戻れた事にビックリした。

さあ、上段を目指そうと上流を見ると、中々に絶望な景色が目に入ってくる。

高い岩壁が左右に聳える威圧的な空間。その岩壁を削って生まれたようなゴルジュ。狭く暗い空間に落ちている水は圧縮されたように勢いを増している。

見た瞬間に「こんなの登れないでしょう」と既に諦め状態だけど、近くまでは行こうと進んでみる。

7mの狭いトイ状の滝。ここが核心。というかこれを越えれば上段の滝壺に行けるのは見えている。
さあ、どうしよう。やだなぁ〜怖いなぁ〜と稲川淳二風に呟いてみる。

すると江戸切子さんが突撃していった。

頑張れ! 怪我しないで! という願いが交錯するなか、水をモロに被りながら徐々に上がっていく。
何か手伝える事はないかと考えるが近づくのも危険だから、自分は応援と言う見つめる事しか出来ないのがもどかしい。

一度、水に押し返されたのか滑ったのか一段下がった時にはドキッとしたが、それをもろともせずに再び水の中を上がっていく。強い人だ。

そして見事、トイ状の滝を突破。ブラボー! その勇気ある行動に感動!

有り難い事に自分はビレイして貰い、安全に登れた。落ちてもロープで支えられているという安心感は違います。おかげで大胆に行動できたけれど、左側がツルツルで掴むところが何も無いのは辛かった。

とにかくこれで難所は江戸切子さんが突破してくれた事で越えられた。
いつか行きたいなぁと憧れていた見返りの滝の真下に立てた。

落差は50〜60m程か。予想に反してゴツゴツした分岐瀑の特徴を持っている。遠望から見る限り、滑り落ちて来る優雅な滝かと想像していただけに、見えていない部分がこんな無骨な姿だとは驚かされた。

左右の高い岩壁に守られた閉鎖的な空間なのだが、滝前は意外や明るい。ある程度平坦な場所があるので移動も可能。もうちょっと引いた姿が見れればしっかりと全景の写真が撮れるのですが、満足するには超広角レンズが必要です。

素晴らしい空間に感動。今までの苦労が払拭されて喜びに包まれた。感動をありがとう、見返りの滝。そして江戸切子さんありがとう。自分一人では辿りつけなかったヘタレでごめんなさい。

帰路は左岸の太い木を支点に懸垂下降でゴルジュ内に戻り、下段の落ち口に残置しておいたロープを頼りに岩壁の上に。あとはルンゼ脇の泥斜面に再びロープを下して滑りながら下降した。

無事にスーパーラインに戻って車まで道路を歩いていると、江戸切子さんがヒルを発見。

すぐさま衣服を脱いでヒルチェックをしたいけど、アブが相変わらず我々を狙っているので、ひとまず町へ移動。

アブがいない所で車から下りて、装備を外していくと、靴の中から元気なヒルがこんにちは。

中には血を吸ってまるまる太った輩まで出てくるではないか。いったいどこで張り付かれたのか。おそらく泥斜面の下降時に泥を削ぎながら下ったのでその時ではないかと思う。確認した所、4ヶ所も足首が噛まれていた。

アブもいればヒルもいる。短い谷だけど、沢山の冒険がありました。

今回は江戸切子さんに連れて行ってもらったようなもの。自分から勇猛果敢に行かなければ滝と対峙する資格がないように感じました。しかしこのチキンハート、克服出来るものか甚だ疑問です。

他写真
訪問日 2017/08/13

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