Data |
住所 |
みなかみ町
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評価(5段階) |
★★★★★
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難易度(5段階) |
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現地へ |
谷川岳の南西部。谷川温泉の奥に谷川岳に向かう登山道を進む、二俣の本谷から離れる所で入渓。本谷を遡行し滝前に至る。駐車場から4時間程で到着。 |
コメント |
二度の敗退、三度目の正直。
2011年6月、薄手のブランケットすらいらない寝苦しい日々が続いているそんな夜中に高速を走り、谷川温泉奥の登山道駐車場に停めて朝日を待つました。
辺りが白みがかった頃から準備を始め、そして見えてきた谷川を望むと、山は殆ど雪に覆われていました。
埼玉の夏景色とは全く違ってまだ冬の景観がまざまざと残っているのには驚き、「これは無理かも」そう思わせるには十分の雪景色に圧倒されます。でもここまで車を走らせて何もしないで帰宅するのはやるせない。 という訳で、行ける所まで頑張ろう、下見をしよう、そんな気持ちに切り替えて出発。
最初の登山道は平坦で歩きやすくサクサクと進み、分岐である二俣に到着。 ここからは道を離れて、未知に進む。 南にある本谷に向けて藪を漕いで沢に着地。ここで登山靴から沢靴に履き替えて遡行していく。 地形図を見る限り、いくつかの枝分かれをしているが左に左に進路を取れば大丈夫なはず。 そう気をつけながら遡っていくと岩にデカデカと矢印が書かれていた。これは明らかに登山道に記載される目印。周りを見ると明確な道も見えるではないか。 とすると間違いか。
もう一度地形図をしっかり見てみる。二俣の所で本谷とヒツゴー沢が合流していて。自分の判断では既に二本の沢は合流したあとで、既に本谷に乗っていると思っていた。しかし実は合流はもうちょっと下流で、二俣から下りた所はヒツゴー沢だったようだ。
それが分かれば十分。このヒツゴー沢を対岸へ渡渉して木々の中を南へ進む。そうするともう一つ、ヒツゴー沢と同じ位の勢いのある沢が見えた。これが間違いなく本谷だろう。
やや不安になりながらも水の中を進んでいくと正面に巨大なコンクリートの建造物が見えてきた。これが関越トンネル空気孔だろう。本谷は空気孔を横切りながら西に伸びているので、今自分がいる所こそ本谷で間違いなしと確信を得て歩みの速度が上がった。
ここまでは順調であったが、その先を進むと案の定ドカンと雪渓が立ちふさがっていた。
どうしたものかと悩んだが、とりあえず雪渓の上を進む。生きた心地はしない。落とし穴のようにストンと雪が抜け落ちないでくれと願いながら谷を上がっていく。
大分近付いてきた。そう思いつつ先を望むと両岸狭まったゴルジュのような地形に雪がビッシリ張り付いていて、その情景を見た瞬間に引き返す事を決めた。 あんなの無理だ。悔しい思いはあったけど自分の実力では越えられないのはよく分かった。
帰路、二俣まで戻り靴を履き替える時に、腹部を見ると白いTシャツが赤く染まっていた。なんという事でしょう。ヒルにやられている。
そこからの谷川温泉まで向かう登山道は地獄だった。1分くらい歩いて靴を見るとヒルがもれなく2匹は張り付いている。それを虫除けスプレーで撃退。再び歩き出して確認、撃退。それの繰り返し。50匹くらいまでは数えていたけれど面倒になって止めた。あとは無心にスプレーをかけ、そしてそれも面倒になってからはデコピンのように指を弾いて吹き飛ばして歩き、駐車場に戻った。
2012年8月。前回の雪渓を反省し、次年度の夏休み終盤に再挑戦。
さすがに雪渓はないだろうとタカを括っていた。ただヒルは活発になっているような気がして怖い。 見上げる谷川は前回のような雪で化粧しておらず、爽やかな緑が発色していた。 さて、同じ道を辿り本谷に入渓。 水量も前回と変わらないくらい豊富に流れているので安心して遡っていく。 この辺りから雪渓が被さっていたんだよなと昨年の感傷に浸っていると沢ヤさんのグループとすれ違う。
「ドウドウセンに行ってきたんですか?」と質問すると、Y字滝の手前でいやらしい雪渓があって撤退してきたとの事。oh…、またも雪渓があるのか、しかも撤退するような危険な状態なのか。今回こそは滝に会って感動を得たいとワクワクしていたのにガクンと肩が落ちる。
だからといって諦めきれず、「とりあえず行ける所まで行ってきます」と沢ヤさんに告げ、遡行を進める。 30分ほど軽快に進んで、前回の狭い谷が見えた。これさえ越えれば滝が現れると喜んだ同時に雪渓も見えた。
近付く。薄い。今にも壊れそうだ。というか手前に崩れた跡がある。潜ればやり過ごせるか。しかし、その瞬間に落ちてきたら? いやそんな絶妙なタイミングで崩れる訳がない、大丈夫さ。どうして大丈夫と言い切れる? これだけ薄ければちょっとしたキッカケで崩壊するぞ。
雪渓の前で固まる自分。上に乗れるかと谷を上がってみるがそれも不安定過ぎる。例えうまく通り過ぎても帰りにも同じ危険が待っている。色々と不安が積み重なっていき意気消沈した。 2回目のアタックはここで終了。命あっての物種。またの機会を得るまでの辛抱だ。
時間が余ったので空気孔を真下から眺めて車に戻った。 心配だったヒルには全くやられなかった。
2014年10月。紅葉、カメラマンが夢中になる季節。 3回目のチャンスが訪れた。 明るい滝計画のリーダーである本中さんが関東の滝巡りをするとの事でお誘いを受け、富山のおでんさんと合わせて3人でどこに行こうか思案していた。そこで自分が無理を言ってY字滝に決定させて貰った。承諾してくれて本当にありがとう。 心配なのは水量。ここ最近、秋晴れが続き雨が降っていない。本谷の最上流にある滝で、普段からあまり水量は多くない所なので、枯れているのではないかと不安があった。
駐車場に着くと上部の紅葉はいい感じだが、やはり水が少ない。
無理を聞いてくれたのに、滝に水が無ければ2人からどんな拷問を受けるか分からない。エロいと定評のあるお二人だ。Y字滝を「猥字滝」と言っちゃうやらしい方だ。三角木馬の計に処されるのは必然かと思うと体が震えてくる。
ヒルの心配のない時期の登山道歩きは軽快。三度目となる二俣に到着し、本谷に入渓。
あれ、こんなに水って減るものなの? ってビックリするくらい水がない。ガレ場を歩いているような感覚。途中、まったく水がない所もあったし。これはいよいよ荒縄で絞められてしまうのか、言葉が出なくなる。
過去2度は水の流れを見ながら左へ左へと進んでいたのだけど、水がないことで二又に気付かず別の沢に進んでいたハプニングにも見舞われた。GPSで早めに誤りに気付いたから良かったものの、もっと進んでいたら鞭で叩かれていたのは間違いないだろう。
再び本谷に戻り、いつもの空気孔が間近に見えて一安心。ここからはそれほど複雑ではない。それと今まで姿を見せなかった水が戻ってきたではないか。これだけの水があれば滝の姿は十分だろう、どうかこのまま枯れないでくれと願いつつ進んでいく。
本谷は特に難所はない。だからただ歩いていくだけ。2度追い返された狭い谷が見えてくる。やっと雪渓のない姿で見えた。
狭い谷は傾斜がきついものの、岩が階段状に積まれているので登れるところを適当に登っていく。この先にあるはずなのだけど、視界の先には滝の姿が全く見えない。本当にあるのか心配になりつつも谷が終点に近づいた頃、右手にいきなりドン!とY字滝が出現したのにはビックリした。
感動の対面である。やっと会えたね。こんなに立派になっちゃって。とっても素敵やん。予想を上回る滝の美しさに笑顔が零れる。
飛沫という面においては決して満足が出来ないけれど、それを度外視しちゃうくらい秀逸な水の流れ。右に見える細い滝の流れがいいアクセントになっているし、青空だし、紅葉だし、正に旬といわんばかりの生き生きとしたY字滝の姿に感謝感激。ありがとう、待っててくれてありがとう。ようやく辿り着けたよ、美しい姿で居てくれてありがとう。二度の失敗があるからこそ思い入れの強い滝で、そのぶん期待というハードルはとても高かったはずなのだけど、Y字滝はいともあっさり越えてくれる感動の滝であった。
そしてその喜びをエロいお二方と分かち合える嬉しさ。これぞ滝巡りの醍醐味。ロウソク攻めされないで済んだ安堵感もさることながら、一緒に来れて本当に良かったです。また卑Yなトークで盛り上がりつつどこか滝巡りしたいですね。
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他写真 |
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訪問日 |
2014/10/12 |