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レフトスタンドに飛んでいく高く上がったボールを見て、審判がホームランを宣告する前にバットを放り投げて派手にガッツポーズ。完璧に捉えた打球は美しい放物線を描きスタンドを越えていく。
審判が腕をグルグル回す。場外ホームランの宣告だ。唸る歓声。地響きが鳴り球場全体が揺れているようだ。
ベンチから飛び出した仲間達。悠々とダイヤモンドを周回してきた私はホームベースを踏んだ途端に揉みくちゃになる。
勝利だ! おめでとう! ありがとう!
これは前川本谷に出会った瞬間の感動を表現したものです。 ど真ん中に入ってきた打ち頃の球をフルスイングですよ。
粒子となった水柱、吹き荒れる飛沫、開放感たっぷりの空間、私の好みを分かってらっしゃるって位、いいコースに球が来ちゃったらそりゃもう体が勝手に反応してしまいます。
完璧です。美しく気品があって、それでいて明朗。真珠のように魅力的な水玉が宙を舞い、強すぎない優しい飛沫となって私の体に当たる。とてつもなく心地良い。ゾクゾクするほどの快感です。 滝のお手本とも言える程の完璧な姿です。
この滝を名瀑として乗鞍が紹介しないのも不思議です。三本滝、善五郎、番所と合わせて乗鞍4天王として掲載されていてもおかしくないてす。
でもここには一切の案内がなく、道もなく、人の手が全く加わっていない秘境の部類に入るのでしょう。
かといって大変かと言われると危険は少ないと思います。
三本滝に向かうように車で県道84号の峠道を登っていくと急カーブの地点に前川林道入り口があります。ここには鎖のゲートがありますが鍵は掛かっていませんので自己責任で外して進みます。勿論、外した鎖は元に戻しましょうね。
あとはこの林道を行けるところまで進みますが、砂利道は非常に荒れていて車高の高い4WDのような車でないと腹が擦ってしまうと思うのでご覚悟を。
そして最初の鎖よりとっても頑丈な南京錠付きのゲートが出てきた所で駐車。伊奈川をまたぐ錆びて赤くなった橋が目立ちます。
ここで沢登りの準備をして歩き始め。ゲートを跨いで砂利の林道をさらに進むと15分くらいで前川本谷をまたぐまたもや赤く錆びた橋が現れます。
橋の手前から斜面を下りて(残置ロープあり)入渓。ここからは特筆する事はありません。とにかく遡るだけです。あまり変わらない景色を見ながら右岸を進んだり渡渉したり、歩きやすい所を探して水に触れつつ歩き続けます。
橋からおよそ30分程で右手に水柱が木陰の合間に見えてきます。あとはそれを目指して二俣を右に進めばゴールです。
午前中の早い時間に訪問すればガッツリと虹が見えます。私が訪問した時、上空は雲で覆われていましたが一瞬だけ光が差し込んでくれたので無事に写真に収められました。
写真で見るとありきたりな直瀑で魅力がないように思うかも知れませんが、きっとあなたのストライクゾーンに入ってくるはずです。私はホームランでしたが、滝の好みは分かれますからね。それでもツーベースは固いかと思いますよ。
余談ですが、この前川本谷の下流には魚止めの滝とゴサダロがあります。魚止めの滝は入渓地点の橋より下流に向かい、滝の落ち口が見えたら左岸巻きで下降すれば滝前に立てます。ゴサダロは上高地乗鞍スーパー林道にある白樺橋より沢へ下り(かなりの急斜面)上流に進めば出会えます。
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