神津滝
日本最高所の滝

(兵衛谷・シン谷)


神津滝


日本最高所の滝

Data 住所 岐阜県下呂市
(神津滝)
(日本最高所の滝)
評価(5段階) ★★★(神津滝)
★★(日本最高所の滝)
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆(神津滝)
◆◆◆◆(日本最高所の滝)
現地へ 濁河温泉の北部。温泉入り口にある無料駐車場に停めて、材木滝に向かう道から沢に降りて、兵衛谷を遡行。その先にあるパノラマ滝を越えてシン谷を遡行し、百間滝をも越えたはるか上流にある。
コメント 百間滝(シン谷)の続きです。

ザックに荷物を詰めていると、二人組の沢ヤさんが登ってきました。
聞くと巖立から遡行してきたとの事。兵衛谷の王道のルートですね。このまま私達同様にシン谷を詰め上がるのでしょう。ヘルメットの上に地形図を括り付けているのが素敵でした。
さて彼らにこの素晴らしい百間滝はどのように写るのか背中を追い掛けてしまいました。一瞬立ち止まり直登は無理だと判断したのでしょうが、滝に近付きもせずに左岸の巻き道に入りました。
何と言うことでしょう。私が感動して興奮した★×5の滝を、チラ見しただけで感情を動かしもしない。
なんか悔しいですけど、これが沢ヤなんでしょうね。価値観が全く違います。やってる事と装備は同じなれど、私は滝ヤなのだなと再認識させられました。
さて私達も行動開始。沢ヤさんと同じように左岸巻きを始めます。ただし百間滝に感謝と別れの挨拶を済ませてから背を向けました。
滝から50m程戻った辺りから左岸の薮を登って行くと踏み跡が出てきますので、それを辿って行くとバンドへ乗り高度を上げて行きます。
もうちょいで滝を越えられるなという所で、砂とガレの混ざったプチルンゼが出てきます。
ここのトラバースは怖かったですね。たった4・5m横に移動するだけなのに、滑落の恐怖が過ぎり足が進まない。
砂地の下部にあるのはバンドの亀裂。その遥か先は百間滝の滝壺。滑り始めたら一気に落下してしまうのは一目瞭然。さながら蟻地獄。
手掛かりも乏しく、一歩進むだけで緊張感がグンと上がる。生きた心地のしないトラバースでした。
ここを越えると高巻きは終わり。落ち口上に降り立ちます。
次に現れるのは落差20m程の無名滝。ハングしている滝なので直登は無理。
右岸の草付で巻きます。しかしこれまた辛い。
巻き自体は傾斜も緩く怖さは全然ないのですが、この右岸一面がアザミやイバラでチクチク刺さって痛い。
蟻地獄の次は棘地獄ですよ。
イテ、痛て、いたい!  と動けば必ず刺さるトゲと格闘する事10分程で滝上に戻ります。なぁーんだそれっぽっちの時間かって思うかも知れませんが、10分間ずっと無数の爪楊枝に突かれていると想像して下さい。
痛みに耐えつつ沢に戻る。ここから先に出てくる小滝はどれも直登可能であり変化に富んでいて気持ち良く沢を進んでいきます。
登っていけば行くほどに当然ですが水量が減っていきます。しかし、神津滝までまだまだといった所で減り始めて大丈夫かと不安になります。そんな寂しくなった水を見ていると、正面に節理が発達した迫力のある三段の無名滝がお目見え。
水量はチョロチョロ。というか目を凝らさないと流れているか分からない程度。しかし岩盤は本当に凄い。圧倒されます。
取り付けるような滝ではないので巻きます。左岸の溝部に踏み跡があります。急斜面ですが、所々に生えているブッシュを頼りに登って行きました。
これを終えて沢に戻ると、見えるのは岩・岩・岩。広大な景色で見晴らしは良いですが水がありません。沢は伏流になってしまい水の流れる音は全く聞こえません。
水の流れに元気を貰っている私にとってこれは中々凹むものです。
とにかく神津滝を目指すだけだ!  越えてやるぜゴーロ地帯!  と気合いをいれて進みますが、開けた視界にはいつまでたっても滝の姿は確認出来ません。
これはゴーロ地獄です。ひたすら我慢の時間です。
GLAYのBELOVEDの出たしである「もうどれくらい 歩いて来たのか」が私の頭の中で何度もリフレインされて、かなりうんざりなゴーロです。
ようやく…ようやっと神津滝の姿が見えてきました。嗚呼、勇ましや。
滝に近付いて行くと水が復活してます。滝にも立派に水が流れ落ちています。
ここの岩盤も大迫力でその威圧感には感嘆な声を上げざるを得ません。
滝周辺には木々の生える隙間がない申し訳程度に草が生えているだけのほぼ岩の世界。新緑も紅葉もあまり関係のない滝です。
水量は復活したと言うものの多い訳ではありません。広い滝壺を作る程の威力もなければ飛沫も少ないです。標高およそ2500m辺りで落差30mの滝が常時水を落としているだけで凄い事ですよ。
さて、ここも左岸で越えて行きます。
ちょっとしたガレ場から登っていき、後半は相変わらずの急斜面。踏み跡は明瞭ですから迷う心配はありません。
そびえ立つゴッツイ岩盤を横目に巻き終えると、またもゴーロ。
はいはい、歩けばいいんでしょ。半ば投げやりに進みます。
次が15m滝。ここは両岸ともに立っていて、巻き道はありません。直進あるのみです。高さに若干ひるむものがありますが、砂地獄に比べればたいしたことありません。ステップのように足場がありますし、ホールドも安定してます。ちょっと怖いなという高さになったら一休み出来るテラスもある。とても直登しやすい滝です。
これを越えると、もう難所はありません。
三度ゴーロを進みます。
そんなに間を置かず、ついに凡そ2750mにある日本最高所の滝に到着。
感慨深いものがあります。御岳の頂きに近い森林限界を越えた標高に、常時流れる滝がある。凄い不思議です。
滝の周りは無機質な岩だけ。生命を感じないその滝の周りだけ何故か豊かな苔が生えている。美しいではありませんか。
と言っても滝自体を見れば落差は5m程で魅力はそれ程ないんですけどね。ここの魅力は標高No.1という称号にあると思います。滝には失礼ですけど、その称号に魅力を感じてここまで登り詰めてきたのです。
せっかくここまで来たのだから全身で感じなければと滝に打たれます。うひょー気持ちE…冷てー! という訳で長くは打たれていられませんでした。
ちなみにもしこの滝だけを見たいのならロープウェイで御岳を目指して、そこからここまで下りてきた方が圧倒的に安全で楽チンです。
この滝を右岸のゴーロで越えると源頭部らしいお花畑が出てきます。
沢ヤさんのレボでよく出てくるお花畑を自分の目で見られるとは感動です。
これこそご褒美。楽園そのものです。
チョロチョロ流れている小川を追い掛けていくと、小さな水溜まりから水が湧き出ています。ここがシン谷・兵衛谷の始まりであり、沢登りの終わりです。
お花畑が終わり無数のケルンがある賽の河原へと続き、避難小屋である白竜小屋が見えてきました。

やっとこさ標高2870mにある御岳の登山道に着きました。正直こんな高い所まで自分の足で登ってきたのは初めてです。
白竜小屋で昼食を取り、周辺をグルっと見渡します。360度開けた視界。物凄い開放感。下界を見下ろす天界に来た気分。三の池が美しいです。なるほど登山も良いものだと山ヤにちょっと共感を覚えます。
南を望むと我々よりも高い場所があり、それが御岳の頂上、剣ヶ峰でしょう。30分位歩けば頂きから俯瞰出来る。しかし頂上には滝は絶対にないので興味なし。
帰路を目指し北に進みました。
途中、雷鳥も見れて感激。登山っていいねというウキウキのテンションは長くは続かず。下山の道は水のない樹木の間に設けられた道。面白みがないし、疲労はピークを越えてヘトヘト。
よくも倒れずに帰って来れたなと関心するほどのへばり具合。最後の下りこそ、一番の地獄でした。

 4:30 起床
 6:20 出発
 7:40 20m無名滝
 8:40 三段の無名滝
 9:50 神津滝
11:10 15m無名滝
12:05 日本最高所の滝
13:15 白竜小屋
17:25 濁河温泉・駐車場

※休憩及び撮影時間を含めて到達した時間です

最後に、今回の山泊に対し様々なアドバイスを頂くと共に、道中の案内など色々助けて頂いた滝オフ会のリーダー「はんぺんさん」にこの場で感謝を申し上げます。ありがとうございました。
他写真
訪問日 2011/07/18

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