茶釜の滝



Data 茶釜の滝
落差100m
秋田県鹿角市

現地へ 八幡平の北西部。
行き方は2通り。
川を上流に向かい登る道。山を越える道。
川からのアプローチは、JR「八幡平」駅付近の国道341号から、県道22号、夜明島川沿いに走る道に進み、終点の「夜明島渓谷」から入る。徒歩2時間程。
山を越えるアプローチは、国道341号、鹿角市の田沢湖町の境付近、大場谷地から木道を進む。徒歩3時間程。
コメント 険しい沢の道を越え、ついに見えるその滝は美しさを越えた何か違うものを感じます。
とても落差があり、岩肌にぶつかり滝壷に向かいますが、煩さを全く感じず、心地よい滝音が耳に取れます。
壮大で爽快、辺りは滝の中でも見たことの無い絶景です。行って、自分の目で見て、体で感じて初めて分かる美しさでしょう。
アプローチは2通り。川は危険だが早いし体力の消耗は薄い。山は安全だが遠いし消耗は激しい、と言われています。
私は、時間も無かったので、川からのアプローチを選びました。
夜明島渓谷には「一人では行かない事」とばっちり書いてありましだが、私には相棒など居ませんので単独行動。
とにかく川を上っていくだけですから、迷うことはまず無いと思います。ただし、人が少ないだけに踏み跡などは薄く、正しいルートは分かりづらいです。立ち止まって目印(赤や白のテープやスプレー)をしっかり確認して進まないと安全からは外れます。
川が危険というのは、半分が沢登りということですね。川の中を歩いているイメージしか思い出せない程です。
更に、急角度の梯子。ほぼ直角のものもありました。
一番怖かったのは、途中にある滝の瀬を跨いだ事です。滝の瀬だけに流れが強く、足をとられて滑ってしまったら、一気に滝壺まで落下してしまいます。あれは緊張しました。
鎖にしがみ付きながら歩き、岩に滑っては水を被り、やがて道は大きな矢印と共に合流する川へ右へ向かいます。
しばらく歩くと、左手の急斜面に梯子が直立で固定されているのを発見できます。ここの高さも激しいです。梯子から次の梯子に乗り移るときなど、不安定で手足が震えました。
そんな困難を越えて、やっと出会える滝です。
はっきり言って危険です。山登りの経験無しに気楽に入ると必ず痛い目に遭うと思います。
展望だけで水飛沫を感じることが出来ないのは残念です。
ただし、この滝は本当に美しい。

2011年、再訪問。
今回の目的は滝壺。閉鎖的な空間を見上げてみたいと思い、最近の滝巡りには当たり前になったヘルメット・ハーネス・ガチャ類を装備して挑みました。
前回と同様、夜明島渓谷からの遡行アプローチ。こちらの方が滝までの道中は短い。それに前回来た時に周辺の滝群を撮影していなかったので、それも目的の一つです。
夜明島渓谷までのダート道はひたすら長いですけど、それ程荒れてはいないので、一般的な車高の車種なら走行可能です。
ダート道が大きく右に曲がる所でゲートがあり、そこに新設された夜明島渓谷の看板と3・4台の駐車スベースがあります。
なんか以前よりも整備されて分かりやすくなったような気がする道を進みます。至る所にあるピンクテープが誘導してくれるので道を探す気苦労がなくて楽です。
最初の難所である泊滝の落ち口通過。垂直の梯子を下りて、ロープ頼りに落ち口を渡渉。またも梯子で登るという一番怖い所ですが、前回よりは緊張せずに渡れました。しかしここの整備は本当に凄い。この垂直の梯子がなければ相当苦労するでしょうね。
あとは特に目新しいものもなく、淡々と進んでいき、巨大な側壁を構える二俣に到着。
右から入ってくる沢の方に進むと、難所であり名物でもある高度感たっぷりの梯子が出てきます。
これを気を抜かないようにしっかり掴んで登って行くと茶釜の滝が姿を現します。
相変わらず美しい。左右の岸壁は滝を守るように直立し、こちらを睨んでいる。茶釜が姫なら、岸壁はさながらナイトか。別にマリオとルイージでもいいですけど。
本来ならここで写真を撮っておしまいですが、私にとってはこれからが本番。
まずはどのようにアタックするか確認。梯子の始まる所にある前衛滝を越えたら滝壺までなだらかになっているのかと思いきや、その先はゴルジュとなって滝が段々と続いています。
当初の予定では、梯子の途中からトラバースして前衛滝の上に着地しようと考えてましたが、その計画は霧散。
こりゃもう展望所から滝前にピンポイントで下りるしか選択肢はありません。
普通に下りれる傾斜ではないし、逆層岩盤と草付きでは手掛かりもない。ロープで懸垂下降するしかない状況。
ええ、木にロープを括り付けて下りましたよ。怖かったですね。高さもさる事ながら、一番怖かったのは自分の技術に対してです。
はたして自分で巻き付けたロープは解けたり切れたりしないか? 戻って来れる技量は備わっているのか?  自分を信用するというのは難しい事ですよね。
整備されている鎖やロープは簡単に信頼するのに(それはそれで良くない心構えですけど)いざ自分で用意したものに関しては全く信用が出来ない。
その不安に打ち勝つ事が、今回一番難儀しました。
そして辿り着いた人を寄せ付けぬ滝壺。暗い空間の中で飛沫は跳ね返り飛び上がる。耳をつんざく轟音は、真下に来た者にしか得られぬ力強さ。
「今、俺は生きて茶釜と対峙している!」その喜びが全てを物語り、興奮は止まず、自ずと咆哮する。
写真ではこの凄さは伝わりません。ただ私は茶釜と触れ合えた事を嬉しく思います。
問題の登り。ロープを掴んでのごぼう登りは危険。それは足場が安定しているからこそ可能。
人に踏まれていない岩盤は脆くて当然。足が滑ったらゴルジュ滝に吸い込まれるのは目に見えている。
スリングをプルージック結びでロープに巻き付けてハーネスに合体させて体を確保。これで滑っても落ちる事はない。
ここの岩盤、予想通りですが掴む所が殆どない。草は握ってもブチブチとちぎれ役に立たない。足も不安定な草付きの泥土に乗せているのでいつ滑ってもおかしくない。
プルージックに負荷をかけて固定して、ちょっと体を持ち上げては足場をならすの繰り返し。ゴルジュ内の滝が呼び込んでいるようで下は見れない。ロープだけを見つめてよじ登り無事に生還。心臓の高鳴りが尋常ではありませんでした。
冷静に行動を振り返ると変な所を上り下りしたと思います。展望所の終点である崖壁の所から降下するのがベストでしょうね。
これで茶釜はおしまい。その後は雲上の滝へ行き、滝を見ながらのカップラーメン。震えていた心身を暖めてくれました。
他写真
訪問日 2005/08/16
2011/08/22

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