中津川渓谷
朱滝
所在地 |
福島県北塩原村 (←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます) |
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評価(5段階) | ★★★★★ |
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難易度(5段階) | ◆◆◆◆◆ | |||||
現地へ | 裏磐梯の東部。県道70号で中津川レストハウスを起点とする。基本は中津川渓谷を遡行(危険)し、二泊三日で出会える滝。 変則的として、朱滝だけを見るならば、@吾妻山神社まで登山道を進んでから向かう。A北部にある天元台スキー場のリフトを利用して中津川を下る方法もある。どちらも日帰りは難しく一泊二日が必要。 |
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訪問日 | 2017年9月9日 2018年9月24日 2020年9月21日 |
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2020年9月20日 |
2018年9月24日
地形図にもある右岸の滝マークを過ぎると左岸にピンクテープと笹藪の中に踏み跡が見えました。
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コメント | 2017年 沢登りで一泊二日以上、難所も多くかなり危険であり上級者向けなので、自分では出会えないと諦めていた滝です。 でも沢登りをせず、日帰りで目指そうというプランを聞き、参加させて頂きました。 中津川レストハウスで皆様と集合。初めましての方と滝巡りするのはいつぶりか。 そこから出発して吾妻山神社の参道という名の登山道を目指し、地形図に描かれている実線と波線の道を利用して歩き始めです。 意気揚々と出発するものの、最初から躓いてしまいました。なぜか中津川に着いてしまった。引き返して林道を辿るも地形図に描かれていない道が沢山あるし林道が途中で消えたとかそんなハプニングで初っ端から時間を奪われて、とりあえず神社登山道の起点に到着。 ちなみにこの時点で藪漕ぎを強いられ、そのせいで長年使用していた熊鈴とガチャピンのカラビナを紛失してしまいました。愛着あったからとても悲しかったです。 ここからひたすら登山道を北上です。長いです、とても。急勾配の登りがしんどいです、マジで。でも道が一本道で迷いようがないのでとにかく歩いていれば良いのでその点は気楽でした。 およそ3時間30分かかって登山道の終点に到着。社があると思ってたのですが建物は何もなくてガッカリ。でも御神体(?)の温泉に触れられて嬉しい。 さてここから朱滝まで直線では1kmくらい。左岸の平坦な台地を行けば落ち口まではスムーズに行けるはず。 問題は藪の濃さと、台地に上がるまでの斜面の難易度です。 どちらも容易であれば時間短縮になるのは間違いないですが、どちらも難儀であれば中々に厳しい。 さあ、どうでるか? 正解は「どちらも難儀」でした。 まず、ここから流れを簡単に整理します。 @崖上の平坦な台地に乗る。 A台地から朱滝の落ち口を目指す。 B落ち口から朱滝の高巻き道を見つける。 C高巻き道を下降し、滝前へ。 登山道終点の目の前の北面は崖です。この崖の上のもう一つ上が平坦な台地です。予想以上に威圧感のある崖にビビりますが越えなければならないので行動開始。 まずは@の崖上に行かなければ何も始まらない。 見た限り、崖は2段になっている様子。とりあえず神社前の東から西に流れる権現沢を登っていく。ある程度登っていくと上部にある2段目の崖が見えてきます。権現沢の右岸が平坦になったのを頃合いとして、ここから沢を離れて神社の崖の方へ向かいます。 理想は高度を変えずに移動して神社の崖上に出られれば良いけど…… 2段目の崖沿いに藪を漕ぎながら北西方面に進んで行くと、神社の崖が現れます。予想に反してスムーズにとは行かず、ちょっとしたガレ場を踏ん張りながら上がる。 無事に崖上に出られたけれど、平坦の台地はまだ遠い。西に進みたいが藪が濃いし斜面も急で向かう気になれず、藪の薄い急斜面を北に登って行きました。 これで2段目の崖上に出れて、なんとか平坦な台地へと踏み入れました。しかし神社からここまでは予想以上に時間が掛かってしまった。進退伺いの打ち合わせをして、14時までに滝へのアプローチが見つけられなければ撤退しようと決定。 さてA。落ち口を目指そう。でもここからの藪は非常に濃い。油断してると仲間が見えなくなってしまう。帰路の事を考えてピンクテープを巻き付けて進みます。 相変わらず藪というものには辟易する。今回も痛い目にあいました。 。 掻き分けた枝がメガネを飛ばし、慌てて探そうと枝から手を離したら、跳ね返って戻ってきた枝が右の眼球にヒット。猛烈に痛い。 幸いにメガネはすぐに見つかってホッとしましたが、なんか視界がおかしい。 周りが霞んで見える。というか右と左で見え方が違う。藪に衝撃を受けた右目だけで見ると滲んでいる。すぐ目の前にいる仲間の顔も朧にしか見えない。画像で見た事がある0.01の人の世界と同じ感じだ(自分の裸眼が0.2、眼鏡で1.0) 両目で見るとくっきりと朧が重なって距離感が全然掴めない。 そんな中、変わらずに進んでいると折れて尖っている太い枝に気付かず突進していき胸を突き刺された。ゲフッと一瞬息が止まった。 胸が痛くて、目が見えない。 あれ? なんかこんな状態に覚えがあるぞ。 彼女の事を思うと胸が痛くなり、周りが見えなくなって突き進んだ衝動。それと一緒だ。 はっ! もしかして私……、恋してる!? 「恋は盲目」ってことぉ!? 藪がこいって「濃い」ではなく「恋」ってことなのぉ? んなこたぁない。そんなアホな事を考えられるならまだ余裕はある証拠かなと、痛みに耐えつつ朱滝に恋する自分は相変わらず藪に突進を続ける。 権現沢の右岸から伸びる枝沢(水線なし)を越えると藪は薄くなりスピードが上がりました。GPSで位置を確認しながら、ちょうど朱滝の真横に来れたと足を止めると、木に鉄板が張り付けられている。文字は消えているけれど昔の登山道だった頃の案内でしょう。今では道は完全に喪失していますが。 ここから西へ、斜面を下りていくと落ち口が見えました。ストンと切れている水際を見ると下腹部がキューってなりますよね。 Bに移ります。滝の姿を確認したらその付近に沢ヤさんが辿った高巻き道があるだろうし、それを辿れば滝前に下りられるだろうと予想していました。 しかし、だろう運転はやはり良くないです。 踏み跡が全然見えません。 落ち口付近から見ると周囲は絶壁で滝前に下りられる斜面は皆無。 下流側へトラバースをしつつ、絶壁を伺う。行けそうな小尾根を下りてみるが途中からストンと切れ落ちている。付近に踏み跡がないかと周囲を伺うがそれも見えない。 これではダメだと登り返し、トラバース。また下りてみる。それの繰り返し。 トラバースは平坦な台地と違って斜度もあるし、藪も濃い。ここに来て時間だけが虚しく過ぎていく。 150m程も下流側へトラバースをした頃、ついに当初から決めていた引き返しの時刻である14時になってしまいました。でも、それとほぼ同時に中津川に下りられそうな枝沢を見つけたんです。 散り散りになって下降点を探していた皆が集まって顔を合わす。下りれば滝に行けるだろうが、予想以上に苦労しているので滝に行ったのなら日没を迎えるのは必然。下りるならばビバークは覚悟しなければなりません。 自分の荷物を確認。パンが5個と非常食の菓子が1つ。あと塩飴が10個ほど。そういえば早朝に西友で買った納豆巻き(まずかった)とサーモン巻きを車内で食べた以降、道中では何も口に入れてなかった。でもお腹空いてないからまあいいか。 これならば自分はビバークして明日に下山してもシャリバテにはならず何とかなるだろうと判断し朱滝を目指す側に挙手。 6人の内、2人は下山を選択された。やむを得ないが出来れば全員で行きたかったな。 4人となって中津川を目指すべく下降を始めます。 しかし、見つけたと思った斜面は途中で崖になり、これまた徒労に終わる。 もう一度、下流側に向かいなだらかな枝沢を見つけ、ここを下りてみる。これでも無理であれば滝を見れずビバークという踏んだり蹴ったりの状況になっちゃうなぁと嫌な事を考える。時間的にもこれが最後のアプローチになるだろうと覚悟を決める。 枝沢は割とすぐに滝となって下りられず、左岸の小尾根に乗って下る。やがて小尾根も突端が崖となって進めなくなったので、その左に見える草付きのルンゼを下りる。 ここは岩盤の上に泥が乗った登り返しの難しい草付き斜面なので、ロープを下ろし帰路の為に残置。 30mロープを掴んで滑りながら下りていくと藪に突入。掻き分けて進むと目の前にやっと中津川が見えました。 最後は3m程の岩壁だったのでここでもロープを出して、ようやく平坦な台地からの下降アプローチを終えました。 あとは難しい所はありません。靴を沢靴に履き替えて遡行して、朱滝を真正面に捉えました。 左右に絶壁を構えた大きな滝。幾多の滝を乗り越えて来た沢ヤさんだけが見れる世界。人目に晒されることが一切ない孤高の戦士。 幅広の直瀑は中間で岩盤に当たって水を散開し、更に幅広となって滝壺に落ちる。その水滴は限りなく細かく、極上の飛沫を生んでいます。 やや強めの滝風と飛沫を全身に浴びると、爽快感に震えるものがありました。 幅広になる事で、滝の形はより一層素晴らしさを増しています。末広がりの姿は発展と繁栄の象徴で非常に有難い。力強く、かつ美しい。簡単に行ける滝ではなく、苦労を重ねて辿りつける朱滝は確かにその価値はありました。感動と快感に感謝。 喜びはマックスと言いたいけれど、全員で滝の感動を分かち合えなかったのは悔しいですね。 滝との対峙は終えた。でも自宅に帰るまでが滝巡りです。まだまだまだ終わりません。これからこの場で夜を耐えねばなりません。 滝前から50mほど離れた岸をビバーク地として、焚火のための枝を集めます。明るい内に寝泊りの準備をしたい為、慌ただしいです。 相変わらず焚火は難しい。というか昨日買ったばかりのライターがあっさり壊れたのにはショックを受けました。 地形図を印刷した紙を燃やし、でも火は起きず。タオル、軍手を投入してようやく燃え広がってくれました。 もしも火がつかなければ深夜の寒さを耐えるのは厳しかったと思うので想像するとゾッとします。いつでもどこでも焚火をつけられる練習をしないとダメですね。これは生死に関わるので滝巡りよりも最優先に時間を使って習得したいと思います。 闇が近づいてくる。エマージェンシーシートに包まり焚火前で目を瞑る。疲れているからすぐに寝入るがふと寒さで目覚めてしまう。時計を見ると20分しか過ぎていない。震えた体を起こし焚火に当たって温めて、再び眠る。でも長くは寝続けられない。疲労から足が攣ったり、持病のある左膝が痛み出して起きた時もありました。 見上げると星空、聞こえるのは中津川の流れと焚火の音。振り返ると月夜に浮かぶ朱滝。素晴らしい空間にいるのだと幸せを感じるものの、疲労と寒さに耐えるのが酷で楽しめない。長距離の飛行機、狭い椅子にジッと耐えている時と同じ気分です。 白い吐息が出る。10℃以下になっているのかな。薪が足らずに何度かヘッドライトを利用して探し歩くのもしんどかったです。 丑三つ時になると月が朱滝を照らしました。もしかしてムーンボウが撮影出来るんじゃないのと思いましたが、カメラを取り出す気力は失せていました。今思えば頑張って撮影すれば良かったなと後悔が募りますが、あの時はジッとしているだけで精一杯でした。 朝、周りが見えてきて、活動出来る頃合いに。でも震える体は焚火前から動けず、下山開始は6時頃になりました。 心配だった右目はとりあえずでも寝れた事で回復したようで無事にはっきりと見えるようになって一安心。 視力が回復したのは朗報だけど、体力はそうは行かないものですね。 草付きの登り返しは泥が予想以上に踏ん張りが利かず、苦労しました。 藪の掻き分けもしんどい。神社登山道はとにかく長く、我慢と忍耐の歩き。あまりにも眠く、歩いていても夢見に入っているような状態でふらふら。休憩時はすぐに寝入るがハエが取りついてきて落ち着いて仮眠も出来ないうざったさ。 それでも4人、全員無事に駐車場に帰ってこれました。到着は日没前。丸一日の仕事になっちゃいました。 解散して、日帰り温泉に入る。鏡を見ると肋骨が浮いていて2キロも痩せていました。ここまで苦労するとは、ホント予想以上でしたね。 今回の計画を立てて頂いた三浦さんに感謝の意を示します。苦労しましたがとても楽しい二日間でした。 追伸 脇腹にダニというお土産を朱滝から頂いた旨、お伝え申し上げます。 6:30 中津川レストハウス 出発 7:25 吾妻山神社 登山道 起点 11:00 登山道 終点(権現沢との出合・吾妻山神社) 12:15 平坦な台地 13:25 朱滝 落ち口 15:25 中津川へ下降開始 16:40 朱滝 ――滝前でビバーク―― 6:10 滝前 出発 8:15 平坦な台地 11:20 登山道 終点(吾妻山神社) 16:45 吾妻山神社 登山道 起点 18:00 中津川レストハウス |
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他写真 |