中津川渓谷
朱滝





所在地
福島県北塩原村

地理院地図 (←クリックすると国土地理院のHPにて位置を確認できます)
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ 裏磐梯の東部。県道70号で中津川レストハウスを起点とする。基本は中津川渓谷を遡行(危険)し、二泊三日で出会える滝。

変則的として、朱滝だけを見るならば、@吾妻山神社まで登山道を進んでから向かう。A北部にある天元台スキー場のリフトを利用して中津川を下る方法もある。どちらも日帰りは難しく一泊二日が必要
訪問日 2017年9月9日
2018年9月24日
2020年9月21日
2020年9月20日


最近の天気予報って当日は正確だけど、前日まで全然読めないですよね。
今回も一週間位前から天気予報を見ては代替案に変更するかメンバーと打合せをし、前々日には長野に向かうのが濃厚だったけど、前日になって福島の天気予報が雨から曇りに変わったことで本命にシフト。
今年は天気や災害に振り回され、希望の滝に行けてなかったけれど、ようやくこの中津川渓谷で予定の日程で予定通りに向かうことが出来ました。

今回の私の目的は、不忘滝への訪問と、中津川渓谷を最後まで遡ること。ついでに前回認識してなかった渓谷内の滝を収めることの三つかな。
下流部の白滑八丁と黒滑八丁は今回もお預け。遡るのがメインの沢ヤさんではなく、滝を楽しむ滝ヤさんなので、滝に出会ってる時間を重視すると全てを満喫するのは難しいですね。

今回の合流は裏磐梯ビジターセンター。夜中に来ると案内ないし真っ暗だし(トイレに行くにも外灯無いので懐中電灯が必要)本当にここであってるか心配だった。

ふたつぎさん、あっきーさん、サモハンさんとまだ真っ暗の中でご挨拶。時間が惜しいのですぐに移動開始。
道中は前回とほぼ変わらないので、端折りながら進めていきます。詳しくは2018年神楽滝をお読みいただけると幸いです。


林道入口向かいに駐車。
ここに三日置きっぱなしにした。

計画ではグランデコスキー場に戻ってくる予定なので、スキー場の駐車場に止められないかと向かったところ、第二駐車場はゲートが閉まってて無理で、第一駐車場は物凄く広いのだけど一台も止まってなくて、ここに止め続けていたら不審車扱いで通報されそうな予感がしたので諦めた。

しかし、帰りの際にグランデコスキー場の方に聞いたら「自由な駐車場なので気にはしません」的な事を言ってました。そうであれば一台だけでもスキー場に置いておけば楽できたのにとちょっと残念に思いました。

さて林道を適当に歩き、堰堤で入渓。
最初の緊張する場所、銚子口に到着。


左岸をへつって落ち口に向かうのは問題なし。個人的にきつかったのは落ち口上から右岸の岩壁を上がるところ。
前回はザックを置いて身軽の状態で越えたけれど、今回は重いザックを背負って挑んだ。全然踏ん張り効かなくて落ちそうになってめちゃ怖かった。
この時点で、自分なんかおかしくね? って先行きが不安になった。


前回の泊まり装備は軽量なツエルト(280g)今回はテント(1.5kg)。更に一日分増やした食料が入ってるしタイツやダウンジャケット入れたりして前回よりも重量マシマシなので、行動が思い通りにいかないのでしょう。
靴も新しいの買ったばかりでまだ慣れなくて、それも影響あるのかな。新調したのだから慎重にならないといけませんね。


観音滝を通り過ぎて、お次の難所、二階滝に到着。


ここは元々、ロープが垂れていて、それを利用すれば安心して登れたのですが、今回はロープが落っこちていました。
自力で上がらないと行けないのですが、銚子口での不安が拭い切れず、滑ってしまうのではないかと思うと体が強張ってしまい動けなくなってしまいました。なんとか越えられましたが本当に怖かったです。

お次は筋滝と出合う。


この滝は「ふくしまの滝」の本に掲載されています。滝を包む苔が魅力的ではありますが、中津川渓谷には他にも魅力ある枝沢からの滝が落ちていますが、どうしてこれに名前が付いているのか不思議ではあります。

さあ、初日のビックイベントである神楽滝へ到着。曇っているのは残念だけど、前々日まで雨予報だったことを思うと、降ってないだけ感謝です。


この神楽滝の巻きは権現滝との中間の尾根を登るのですが、巻き道の起点は神楽滝側にあります、権現滝側から取りつき始めましたが藪が濃かったり急斜面だったりで苦労しました。

高巻きを終えて、夫婦滝、静滝を越えていき熊落滝が見えた所で本日の行動は終了。薪となる枯れ木が少なくて探すのが大変だったけど、なんとかメラメラする炎を見ながらラーメンを食べました、うまし!


6:00 林道前 出発
7:10 堰堤上
8:10 銚子口
9:20 観音滝
10:10 二階滝
12:30 神楽滝・権現滝
14:30 出発
15:15 夫婦滝
16:20 熊落滝 手前にて幕営



9月21日
この日が本番の日。不忘滝へのアタックです。
サラッと書きますが、私では無理でした。右岸側から泥斜面を上がっていって、側壁まで行きたかったのですが、一段グッと上がる所と、それを越えた先の草付きが急斜面で掴む所が全然なくて、怖すぎてギブアップとなりました。なにかもっと出来る事があったのではないかと今でも悔しく思います。


その後、不忘滝を見るために右岸からの巻き。前回はスムーズに巻いた枝沢の滝ですが、今回は滑りまくる。荷物が重すぎて思い通りに動けないのが問題。やはりテントではなくツェルトに戻るかな。


なんとか不忘滝の落ち口に到着。落ち口ギリギリから動画を撮ってみる。ここからの姿は圧巻。やはり迫力ありまくる。
今度は盛夏に挑みたいです。そうじゃなきゃ絶壁に囲まれている不忘滝は寒そうですから。


不忘滝の落ち口より


悔しさの溜息を吐いて、不忘滝を後にします。
すぐに支流から高い滝が登場。「ふくしまの滝」本に載っている下雨降滝です。


滝を楽しみために来ている滝ヤさんであり、沢ヤさんとは違う。良い滝が出ればザックを下ろし三脚を立てる(自分は三脚持ってきてないけど)。
中津川渓谷は滝の宝庫。無名の支流の滝、本流の小滝、いずれも特徴的で目を見張る滝があります。全てを楽しんでいると時間がいくらあっても足りない。でもこの下雨降滝は綺麗すぎてつい足が止まっちゃいます。
時間が押している気がしますが、美しい滝を目の前にするとテンション上がってしまうのは滝ヤのSAGAですね。その為に沢登りしているのですから当然です。

そして筋滝。その脇に雨降滝。
この雨降滝は中津川渓谷での最大落差だと思います。あいにく、水量が少ないので見劣りしますが高さがあるだけで迫力は増します。


筋滝と雨降滝


やはり時間は危うい気がする。明るい内にヤケノママまで行けるか不安になる。
筋滝は少し戻った左岸斜面の藪を利用しながら高巻く。その後、胸まで浸かるプチゴルジュを終えると景観が変わる。


周囲や沢床が赤みがかってきて、レッドカーペットを歩いている気分。
そして朱滝が現れる。


この三日間、ほぼ曇りでした。でも驚いたことに朱滝についた途端、雲が退いて青空になり、太陽が射して、大輪の虹が描かれました。

一度目の訪問では夕方に到着したと同時に虹は消え、二度目の訪問はお昼の訪問なので虹は現れず、三度目にしてようやく完璧な虹が見れました。

時期にもよりますが南西向きの滝なので、虹が現れるのは14時過ぎだと思います。
私たちが到着したのは14時40分。もうちょっと前から虹は現れていたと思いますが、徐々に上がってくる虹を存分に楽しみました。


時間は16時を過ぎた。日没後に幕営地を探すようになるだろうと覚悟しました。それが大変だと分かっているものの、朱滝が素晴らしすぎてその後のことなど気には出来ませんでした。

朱滝から下流に戻り、最初に現れる左岸の枝沢を登り詰めて高巻き。平坦な場所になったら上流に向けて北進。藪の少ない所を選んで進み朱滝の上流に。

ここからは私にとって初めての景色なのでワクワクです。


ゴーロではなく小滝群が続きました。朱滝から上流は赤みがない岩盤モリモリの渓相。

楽しんでいたかというと、そうではなく焦りが方が強かったです。なにせ日没ギリギリ。もう日の入りの時間は過ぎたはず。なんとか視界が広がっている間に幕営地を見つけなくては。

この小滝群はテンバ適地ではない。ヤケノママに行けば平坦なゴーロになるから頑張って進む。

ヤケノママまで数百メートル残した地点で、辺りは色を失っていく。
懐中電灯つけなあかんなぁと思った矢先、焚火跡を発見。そこをよく見ると右岸に整地されたスペースがあったので、これ幸いと荷を下ろす。

暗い中でテントを張って、晩御飯の準備。焚火はどうする? 薪を集める体力など残っていない。

お腹いっぱい食べられればいいやと焚火は諦めたのですが、周辺には薪が沢山置かれているではないか。しかも大薪と小薪としっかり分けて置かれている。

前日にここで泊まった方の残りだろうか。有難く利用させて頂きました。ありがとうございます。

おかげさまで焚火を見ながら暖まりながら晩御飯を食べられました。

ふたつぎさんがここまで背負ってきた芋焼酎を一口頂いた。お酒は全般的に美味しいと思ったことがないけれど(カルーアミルクは美味いよね)、この中津川渓谷で頂いたお湯割りはサイコーに美味かった!
苦労してでも酒を背負う価値が、よく分かりました。

7:00 熊落滝・不忘滝
9:40 出発
11:40 不忘滝 俯瞰
12:30 不忘滝 落ち口
13:30 筋滝
14:40 朱滝
16:05 出発
17:10 朱滝 上流
18:50 ヤケノママ手前にて幕営



9月22日
今日は下山の日。目覚めた瞬間、体の強張りがえげつない。特に肩がやばい。痛みで腕が頭より上がらない。まぁ、今日は歩くのがメインだから大丈夫かな。


片づけ終わってザックを背負う。食料をたくさん食べて、重量は減っていると思うのだけど何も変わらない。むしろ初日よりも重い気がする。体力が低下しているからそう思うのが一つ、汗や湿気を吸った泊まり道具が重くなっているのも原因の一つ。全く楽にならなくて朝からしんどい。

歩き始めてしばらく進むとヤケノママに到着。右岸の赤茶けた岩壁から湯気が出ている! 素敵な観光地です。


ついでという事で、このヤケノママから中津川に左岸から入ってくる支沢に滝マークがあるので、ザックを下ろして空身になって散策。10mないくらいの滝だと思うけれど、今日も滝が見れて嬉しかった。


支流の滝
(名前があったら教えてちょ)

滝を見終えて、ヤケノママに戻る。
この上の高台は地熱で暖かいらしい。とりあえず近づいて岩盤に触れると仄かに温い。そのまま斜面を登って行って中間の白く変色している部分を触れると結構な熱さ。これは凄いと感激し、岩盤に背中をくっ付ける。
わぉ、天然の岩盤浴じゃん。
斜度がきついので踏ん張らないと滑落しちゃうけど、背中がジワジワ熱くなってとても良い癒しでした。


さて観光を済ますと、気合を入れて遡行開始。
上流域で難しい箇所がある訳ではないが小滝が連続している事と、距離が長いことがシンドイ要素。
それでも前半は景色が気持ちを上げてくれる。綺麗な岩盤は特に印象的だった。


二俣を左に。奥の二俣も左に進む、進路を西に変えていくと、景色があまり変わらない小滝の連続が待ち構えていた。太ももをしっかり上げないと進めないので、筋肉の消費が激しい。


稜線が見え始める。遡行の終わりは近い。詰めの藪漕ぎは大変のようで、いくつか枝分かれする終盤の沢は水量が多い流れの方を選んで進む。すると湿原と池塘が現れた。


湿原

ハートに見える面白い池塘

この先が登山道

湿原の藪は低い。そのまま藪が薄い所を探しつつ進むと、ほとんど藪漕ぎなく登山道に着いた。
久々の人の雰囲気に、もう危ういところはないんだなと安心できた。

ここで大きく深呼吸をすると、緊張の糸が切れた。

あ、切れた。自分でもそれが分かった。正直、これはまずい。
車までまだまだまだまだ重い荷物を背負って歩かなければならないのに、途端に力が抜けていく。
ザックが先ほどよりも重く感じた。当然ながら歩みは遅くなりがちになる。


木道を歩くのは楽しい。見渡す山々は爽快だし、湿原は生命力に溢れていて心が晴れる。
しかし、疲労がやばい。全然楽しめない。


ロープウェーまでの道のり。西大嶺の登りは本当にしんどかった。辛すぎて一言もしゃべれなかった。
西大嶺からの標高500m程の下り、集中力が欠けてて何度も滑って転倒しそうになった。

そして辿り着いたグランデコのロープウェー。最終が16時で、着いたのは15時15分前後。これに乗るために踏ん張って歩いてきたのだ。間に合って良かった。


ロープウェーの山頂駅には切符売り場が見当たらなくて困った。係員に聞いたところ、麓の駅でお会計してちょって事で有難く乗り込む。
サクサク下っていく箱。山の斜面に登山道が見える。 最終に間に合わなかったらここを歩いていたのかと思うと肝が冷える。本当に間に合ってよかった。
ロープウェーを下りてお会計して、あとは車道を歩く。


そして車と再会。

帰ってこれたよ〜、怪我無く戻ってきたよ〜。
乾いた服に着替えると気分は爽快だ。

近くの温泉は夕方の時点で終了しちゃってたので、だいぶ遠いけど喜多方の道の駅「喜多の郷」にある日帰り温泉でしっかり体を洗った。

そして皆様と解散。

私はその後、のんびり行動。明日も滝巡りできるので今夜はまったり車中泊の予定。
って事を嫁さんにLINEで伝えた所、「明日も滝に行くなんて聞いてないから帰ってこい」と怒られてしまった。
言った言ってないの水掛け論になっても軍配は嫁さんに上がるのは確定なので、大人しく帰宅しましたよ。
あと一日、滝と遊びたかったなぁ〜。チッキショー!(小梅太夫ばりに叫びました)


6:40 出発
7:00 ヤケノママ
7:20 支流の滝マーク
8:15 二俣
8:35 奥の二俣
11:20 登山道
12:35 西吾妻小屋
13:05 出発
13:45 西大嶺
15:15 グランデコロープウェー 山頂駅
16:10 林道手前 到着



2018年9月24日

神楽滝からの続きです。

朝、気温はそれ程下がらず、凍えるような寒さはなく明るくなってから起床。
山泊の朝はどうもグダグダしてしまう。焚き火起こして、朝ご飯食べて、片付けしてると7時になってしまった。もっと早く出発しないと時間が勿体ないですよね。

朝の打ち合わせで、不忘滝を遠望だけでも見れるなら見ようという話でまとまり、右岸に向かいます。

幕営地のちょうど対岸から、とりあえず右岸に入ってみると、踏み跡と思われる草が生えてない斜面があり、それを辿っていくと水が流れ始めました。中津川に合流する時には伏流になっていたようですが、斜面を上がるにつれて明確な枝沢に変わっていきました。

枝沢はグズグズな斜面ではあるけれど、藪がないので気軽に上がっていけます。

優しい斜面を標高で30〜40mくらい上がると、枝沢は高さ10m程の滝となって行く手を阻みました。不忘滝の崖上まで高巻くにはまだまだ高さが足りない。この滝の上に行かなければなりません。

滝の真下に立つと左手(南側)に泥斜面があって、踏み跡が続いているのが見えたのでそちらへ向かいます。踏ん張りは効きづらく滑ってしまうので、四つん這いのような感じでジリジリと上がって行きました。

すると目の前には岩壁が見え、階段状に上がっていけるように見えました。この岩壁の上に行ければ枝沢の滝の上に行けるのは間違いないのですが、取っ掛かりだけがホールド乏しくよく滑るため登るのに凄く苦労しました。

滝を越えて、再び枝沢の水流の中を登っていきます。もう北に向けて進路を変えても良い高さまで上がってきたけれど、枝沢以外は藪が濃すぎて突っ込む気になれません。

どうしたものかと思いつつまだ登っていくと新たな側壁が現れました。不忘滝を形成する側壁は二段になっている事が分かりました。

現在は段と段の中間地点にいます。枝沢をそのまま上がっていけば上段も越えられるようなので、とりあえず更に登ってみましたが水が減るのと反比例して藪が増えてきたので一旦ストップ。このまま上の側壁をも越えてしまうと超大高巻きで滝が見れないと判断し、せっかく登ったけれど枝沢を下りました。


中間地点まで下がって戻ると上段側壁が立ち上がってる縁だけは藪は薄くなっているのが見えました。


この上段側壁に触れられたのが幸運でした。左手で岩壁を触り、なぞるように進んで行くと藪こぎを強いられずに北上出来て、久しく聞いていなかった中津川本流の水の音が耳に入ってきました。というかこの轟音は熊落滝だろうと分かります。

相変わらず岩壁を触り続けて進みます。時折アップダウンがあるけれど、藪が薄いのでわりかし気軽に進んで行くと、対岸に直瀑が見えました。

岩壁からは水が染み出てきて、それが下方にある崖に吸い込まれていきます。この染み出した枝沢は熊落滝の下から見えた、右岸側にあった二本の水量少ない枝沢の滝でしょう。

水と共に斜面を下りていき崖っぷちに向かう。不忘滝の姿が大きくなってきます。やや右手、南へ太い木を頼りに進むと全体像が見えました。

くり抜いたように滝を覆う岩盤は綺麗に垂直に伸びている。滝壺には白煙が怒涛のごとく乱れ飛んでいるのが分かる。遠くからでも迫力が伝わってきます。

岩盤は上から見るとまさしく"C"の形状をしていて、開いた口の部分は熊落滝の落ち口になっています。

下から見上げても、上から覗いても凄い威圧感。高さ40mと言われている不忘滝なので、今自分は50mほど垂直壁の崖っぷちに立っているのだと思うと怖くて足が震える。
左手で掴んでいる木を離すことが出来ない。右手でコンデジを操作するのが精一杯でしたが、どえらいもんを見れて感激でした。

高さの恐怖で心臓がバクバク鳴る中、取り囲んでいる上段の岩盤まで戻り安全な場所で一呼吸して、再び左手で岩盤を触りながら落ち口を目指します。

二本目の枝沢を通過したら上段の岩盤は途切れるので、あとはなだらかな尾根のような斜面を下って行って、不忘滝の上流にある5m滝の前に着地出来て、無事に高巻きを終えました。

快適な中津川の遡行を続けてると、右岸から綺麗な滝が現れました。この辺りの右岸壁にはフレッシュな水が滴り落ちているので、ペットボトルに補給します。沢登りは水に困らないので安心です。

更に進むと右岸から水量は少ないが高い滝が二本、本流に20m程の滝が現れました。筋滝です。

この滝には驚かされました。朱滝の為の通過点としか考えてませんでしたが、本流と枝沢で構成されるワイドビジョンな三本の滝は、想像よりも大きくて幅広で、この滝の為にここまで遡ってきたとしても存分に満足して帰れるくらいトキメいた滝でした。

中津川には脇役がいない。どれもが主役。さすが沢ヤさんに愛される名渓です。

筋滝は右壁を直登するのが一般的なようですが、自分にはとても登れる気がしないので、少し戻って左岸の斜面を上がり高巻きました。

踏み跡などはなかったですが、適度にある藪を持ちながら上がれるので安心の巻きです。

ここから渓相が朱滝の準備に入ります。周囲の岩肌が赤くなってくるのです。胸くらいまで浸かったミニゴルジュを抜けると更に火山の雰囲気が出てきます。
地形図にもある右岸の滝マークを過ぎると左岸にピンクテープと笹藪の中に踏み跡が見えました。

そうそう、これが昨年の下降したルートだ。懐かしい。

ここまで来れば朱滝までもう難所はない。のんびり進んでいく。

朱滝到着の前にまた一つ、見覚えのある光景が目の前に。焚き火をして寒さに耐えたあの夜の場所に着きました。そうだ、ここだ、この岩に寄りかかってジッとしていたんだ。

こんにちは、昨年の耐えていた自分。今年は軽快にここまで来れたよ。

そして朱滝の滝前。
対峙して分かる事。朱滝は別格。


ここまでの道中、中津川で出会った滝はどれも素晴らしい滝である事は間違いありません。神楽滝では滝満足ゲージが100%を振り切ったのでもう下山しよっかなって心底思ったくらい感動しました。

朱滝に会えずに下山になっても充足してるからまあいいやと思っていました。でも違うんですね。朱滝はこれまで遡行して出会ってきた中津川の滝の、どれもが霞んでしまうような迫力と美しさも持っています。やっぱり中津川の主瀑は朱滝なんですね。

昨年は自粛した裏見に挑戦。左岸から滝壺の淵を進んでいくと簡単に裏に入れました。

細かな粒子が崖から飛び跳ねて滝壺に落ちていくのがよく分かる。楽しい空間です。今日も青空がある良い天気で気温も上がっているので、裏から飛沫を浴びまくっても極端に寒くないのも幸いでした。

目標にしていた裏見が出来て、やっと宿題を終えました。

時間を見ると12時30分。どうやって下山するか三浦さんと協議する。

このまま遡行して中津川を詰めて、西吾妻山からグランデコスキー場のゴンドラを利用して楽して下山が一番の希望でしたが、ゴンドラの最終は16時のようで、とてもじゃないけど間に合わない。スキー場を歩いて帰る事になるでしょう。

それでも構わないけど、どうせ歩いて帰るなら距離は短く早く帰れる方が良いと言うことで、昨年と同じ神社登山道を利用して中津川レストハウスに向かう事にしました。

まずは朱滝を高巻くように左岸の高台に乗らないと行けません。
昨年使ったピンクテープのある草付き斜面よりも、より上流にある細い流れの枝沢を選択してみました。対岸の右岸にも同じくらいの枝沢が中津川に流入しているので、それが目印となっています。

斜度は程々だけど浮いている岩が多くて落石が心配。30〜40mくらい枝沢を登った所で5mの滝が現れて、右側からやり過ごす。この辺りは傾斜が厳しく足だけでは登れない。木の枝や根っこを掴んでヨッコラショっと上がって行く。

この巻きの景色、なんか見覚えがあります。昨年もこの枝沢を下りて、滝が出て来たから諦めた場所でした。
登るのと降るのでは選択が変わる。下りる方が難しいんだなとよく理解出来ました。

無事に平坦な大地について、あとはGPSを頼りに神社登山道に向かう。権現沢に下りる手前の激藪地点では昨年に自分が巻いたピンクテープが見つかって、そのお陰で藪漕ぎが少し楽になった。この辺りのルート取りや時間の予測は出来ているので気軽に行動出来た。昨年の苦い経験が活かされました。

あとはひたすら下山。林道に着いた頃に日没となり、闇夜の中をヘッドライトを点けて寡黙に歩く。
一度だけ、真っ暗のなかで左腕をポンポンと叩かれた気がしてかなりビビりました。あれは何だったのだろうか。

トンネル手前で斜面を下りて、中津川を右岸から左岸へと渡り、あとは観光路を利用して中津川レストハウスに到着。

そこから自分の車でグランデコスキー場の手前まで走り、三浦さんの車のあるアプローチ起点となった広場に着く。

どちらに下山するか最初から流動的に選択する予定で、その為に車を別々の所(グランデコスキー場と中津川レストハウス)に置きました。車が複数台あるとこのように行動状況によって下山路を選択出来るのは利点ですね。

昨年から行きたくて悶々としていた中津川、9月初旬に行く予定が雨で延期になったけど、無事に行けて良かった。そして物凄〜く楽しかった!

メインの滝に会うまでの道中とは、我慢と忍耐の連続と思っていますが、ここは違いました。主役を張れる滝がゴンゴン出てきて、その度にストーリーが変化して興奮しまくりました。

これと同じようにワクワクする映画があります。歴代のプリキュアのヒロインが一斉に集まる映画「プリキュアオールスターズ」シリーズを観てる気分でした。
『ぷいきゅあ〜 がんばえ〜!』

7:00 出発
8:30 不忘滝を俯瞰
9:10 高巻き終了
9:30 筋滝
10:40 朱滝
11:25 出発
13:50 登山道終点(吾妻山神社)
17:30 登山道 起点
18:45 中津川レストハウス



コメント 2017年

沢登りで一泊二日以上、難所も多くかなり危険であり上級者向けなので、自分では出会えないと諦めていた滝です。
でも沢登りをせず、日帰りで目指そうというプランを聞き、参加させて頂きました。

中津川レストハウスで皆様と集合。初めましての方と滝巡りするのはいつぶりか。
そこから出発して吾妻山神社の参道という名の登山道を目指し、地形図に描かれている実線と波線の道を利用して歩き始めです。
意気揚々と出発するものの、最初から躓いてしまいました。なぜか中津川に着いてしまった。引き返して林道を辿るも地形図に描かれていない道が沢山あるし林道が途中で消えたとかそんなハプニングで初っ端から時間を奪われて、とりあえず神社登山道の起点に到着。

ちなみにこの時点で藪漕ぎを強いられ、そのせいで長年使用していた熊鈴とガチャピンのカラビナを紛失してしまいました。愛着あったからとても悲しかったです。

ここからひたすら登山道を北上です。長いです、とても。急勾配の登りがしんどいです、マジで。でも道が一本道で迷いようがないのでとにかく歩いていれば良いのでその点は気楽でした。

およそ3時間30分かかって登山道の終点に到着。社があると思ってたのですが建物は何もなくてガッカリ。でも御神体(?)の温泉に触れられて嬉しい。

さてここから朱滝まで直線では1kmくらい。左岸の平坦な台地を行けば落ち口まではスムーズに行けるはず。

問題は藪の濃さと、台地に上がるまでの斜面の難易度です。
どちらも容易であれば時間短縮になるのは間違いないですが、どちらも難儀であれば中々に厳しい。
さあ、どうでるか? 正解は「どちらも難儀」でした。

まず、ここから流れを簡単に整理します。
@崖上の平坦な台地に乗る。
A台地から朱滝の落ち口を目指す。
B落ち口から朱滝の高巻き道を見つける。
C高巻き道を下降し、滝前へ。

登山道終点の目の前の北面は崖です。この崖の上のもう一つ上が平坦な台地です。予想以上に威圧感のある崖にビビりますが越えなければならないので行動開始。

まずは@の崖上に行かなければ何も始まらない。
見た限り、崖は2段になっている様子。とりあえず神社前の東から西に流れる権現沢を登っていく。ある程度登っていくと上部にある2段目の崖が見えてきます。権現沢の右岸が平坦になったのを頃合いとして、ここから沢を離れて神社の崖の方へ向かいます。
理想は高度を変えずに移動して神社の崖上に出られれば良いけど……
2段目の崖沿いに藪を漕ぎながら北西方面に進んで行くと、神社の崖が現れます。予想に反してスムーズにとは行かず、ちょっとしたガレ場を踏ん張りながら上がる。
無事に崖上に出られたけれど、平坦の台地はまだ遠い。西に進みたいが藪が濃いし斜面も急で向かう気になれず、藪の薄い急斜面を北に登って行きました。

これで2段目の崖上に出れて、なんとか平坦な台地へと踏み入れました。しかし神社からここまでは予想以上に時間が掛かってしまった。進退伺いの打ち合わせをして、14時までに滝へのアプローチが見つけられなければ撤退しようと決定。

さてA。落ち口を目指そう。でもここからの藪は非常に濃い。油断してると仲間が見えなくなってしまう。帰路の事を考えてピンクテープを巻き付けて進みます。

相変わらず藪というものには辟易する。今回も痛い目にあいました。

掻き分けた枝がメガネを飛ばし、慌てて探そうと枝から手を離したら、跳ね返って戻ってきた枝が右の眼球にヒット。猛烈に痛い。
幸いにメガネはすぐに見つかってホッとしましたが、なんか視界がおかしい。
周りが霞んで見える。というか右と左で見え方が違う。藪に衝撃を受けた右目だけで見ると滲んでいる。すぐ目の前にいる仲間の顔も朧にしか見えない。画像で見た事がある0.01の人の世界と同じ感じだ(自分の裸眼が0.2、眼鏡で1.0)
両目で見るとくっきりと朧が重なって距離感が全然掴めない。
そんな中、変わらずに進んでいると折れて尖っている太い枝に気付かず突進していき胸を突き刺された。ゲフッと一瞬息が止まった。
胸が痛くて、目が見えない。
あれ? なんかこんな状態に覚えがあるぞ。
彼女の事を思うと胸が痛くなり、周りが見えなくなって突き進んだ衝動。それと一緒だ。

はっ! もしかして私……、恋してる!? 「恋は盲目」ってことぉ!? 藪がこいって「濃い」ではなく「恋」ってことなのぉ?
んなこたぁない。そんなアホな事を考えられるならまだ余裕はある証拠かなと、痛みに耐えつつ朱滝に恋する自分は相変わらず藪に突進を続ける。

権現沢の右岸から伸びる枝沢(水線なし)を越えると藪は薄くなりスピードが上がりました。GPSで位置を確認しながら、ちょうど朱滝の真横に来れたと足を止めると、木に鉄板が張り付けられている。文字は消えているけれど昔の登山道だった頃の案内でしょう。今では道は完全に喪失していますが。

ここから西へ、斜面を下りていくと落ち口が見えました。ストンと切れている水際を見ると下腹部がキューってなりますよね。

Bに移ります。滝の姿を確認したらその付近に沢ヤさんが辿った高巻き道があるだろうし、それを辿れば滝前に下りられるだろうと予想していました。

しかし、だろう運転はやはり良くないです。

踏み跡が全然見えません。

落ち口付近から見ると周囲は絶壁で滝前に下りられる斜面は皆無。
下流側へトラバースをしつつ、絶壁を伺う。行けそうな小尾根を下りてみるが途中からストンと切れ落ちている。付近に踏み跡がないかと周囲を伺うがそれも見えない。

これではダメだと登り返し、トラバース。また下りてみる。それの繰り返し。

トラバースは平坦な台地と違って斜度もあるし、藪も濃い。ここに来て時間だけが虚しく過ぎていく。

150m程も下流側へトラバースをした頃、ついに当初から決めていた引き返しの時刻である14時になってしまいました。でも、それとほぼ同時に中津川に下りられそうな枝沢を見つけたんです。

散り散りになって下降点を探していた皆が集まって顔を合わす。下りれば滝に行けるだろうが、予想以上に苦労しているので滝に行ったのなら日没を迎えるのは必然。下りるならばビバークは覚悟しなければなりません。
自分の荷物を確認。パンが5個と非常食の菓子が1つ。あと塩飴が10個ほど。そういえば早朝に西友で買った納豆巻き(まずかった)とサーモン巻きを車内で食べた以降、道中では何も口に入れてなかった。でもお腹空いてないからまあいいか。

これならば自分はビバークして明日に下山してもシャリバテにはならず何とかなるだろうと判断し朱滝を目指す側に挙手。

6人の内、2人は下山を選択された。やむを得ないが出来れば全員で行きたかったな。

4人となって中津川を目指すべく下降を始めます。

しかし、見つけたと思った斜面は途中で崖になり、これまた徒労に終わる。

もう一度、下流側に向かいなだらかな枝沢を見つけ、ここを下りてみる。これでも無理であれば滝を見れずビバークという踏んだり蹴ったりの状況になっちゃうなぁと嫌な事を考える。時間的にもこれが最後のアプローチになるだろうと覚悟を決める。

枝沢は割とすぐに滝となって下りられず、左岸の小尾根に乗って下る。やがて小尾根も突端が崖となって進めなくなったので、その左に見える草付きのルンゼを下りる。

ここは岩盤の上に泥が乗った登り返しの難しい草付き斜面なので、ロープを下ろし帰路の為に残置。

30mロープを掴んで滑りながら下りていくと藪に突入。掻き分けて進むと目の前にやっと中津川が見えました。

最後は3m程の岩壁だったのでここでもロープを出して、ようやく平坦な台地からの下降アプローチを終えました。

あとは難しい所はありません。靴を沢靴に履き替えて遡行して、朱滝を真正面に捉えました。

左右に絶壁を構えた大きな滝。幾多の滝を乗り越えて来た沢ヤさんだけが見れる世界。人目に晒されることが一切ない孤高の戦士。

幅広の直瀑は中間で岩盤に当たって水を散開し、更に幅広となって滝壺に落ちる。その水滴は限りなく細かく、極上の飛沫を生んでいます。

やや強めの滝風と飛沫を全身に浴びると、爽快感に震えるものがありました。

幅広になる事で、滝の形はより一層素晴らしさを増しています。末広がりの姿は発展と繁栄の象徴で非常に有難い。力強く、かつ美しい。簡単に行ける滝ではなく、苦労を重ねて辿りつける朱滝は確かにその価値はありました。感動と快感に感謝。

喜びはマックスと言いたいけれど、全員で滝の感動を分かち合えなかったのは悔しいですね。

滝との対峙は終えた。でも自宅に帰るまでが滝巡りです。まだまだまだ終わりません。これからこの場で夜を耐えねばなりません。

滝前から50mほど離れた岸をビバーク地として、焚火のための枝を集めます。明るい内に寝泊りの準備をしたい為、慌ただしいです。

相変わらず焚火は難しい。というか昨日買ったばかりのライターがあっさり壊れたのにはショックを受けました。

地形図を印刷した紙を燃やし、でも火は起きず。タオル、軍手を投入してようやく燃え広がってくれました。
もしも火がつかなければ深夜の寒さを耐えるのは厳しかったと思うので想像するとゾッとします。いつでもどこでも焚火をつけられる練習をしないとダメですね。これは生死に関わるので滝巡りよりも最優先に時間を使って習得したいと思います。

闇が近づいてくる。エマージェンシーシートに包まり焚火前で目を瞑る。疲れているからすぐに寝入るがふと寒さで目覚めてしまう。時計を見ると20分しか過ぎていない。震えた体を起こし焚火に当たって温めて、再び眠る。でも長くは寝続けられない。疲労から足が攣ったり、持病のある左膝が痛み出して起きた時もありました。

見上げると星空、聞こえるのは中津川の流れと焚火の音。振り返ると月夜に浮かぶ朱滝。素晴らしい空間にいるのだと幸せを感じるものの、疲労と寒さに耐えるのが酷で楽しめない。長距離の飛行機、狭い椅子にジッと耐えている時と同じ気分です。

白い吐息が出る。10℃以下になっているのかな。薪が足らずに何度かヘッドライトを利用して探し歩くのもしんどかったです。

丑三つ時になると月が朱滝を照らしました。もしかしてムーンボウが撮影出来るんじゃないのと思いましたが、カメラを取り出す気力は失せていました。今思えば頑張って撮影すれば良かったなと後悔が募りますが、あの時はジッとしているだけで精一杯でした。

朝、周りが見えてきて、活動出来る頃合いに。でも震える体は焚火前から動けず、下山開始は6時頃になりました。

心配だった右目はとりあえずでも寝れた事で回復したようで無事にはっきりと見えるようになって一安心。
視力が回復したのは朗報だけど、体力はそうは行かないものですね。

草付きの登り返しは泥が予想以上に踏ん張りが利かず、苦労しました。

藪の掻き分けもしんどい。神社登山道はとにかく長く、我慢と忍耐の歩き。あまりにも眠く、歩いていても夢見に入っているような状態でふらふら。休憩時はすぐに寝入るがハエが取りついてきて落ち着いて仮眠も出来ないうざったさ。

それでも4人、全員無事に駐車場に帰ってこれました。到着は日没前。丸一日の仕事になっちゃいました。

解散して、日帰り温泉に入る。鏡を見ると肋骨が浮いていて2キロも痩せていました。ここまで苦労するとは、ホント予想以上でしたね。

今回の計画を立てて頂いた三浦さんに感謝の意を示します。苦労しましたがとても楽しい二日間でした。


追伸
脇腹にダニというお土産を朱滝から頂いた旨、お伝え申し上げます。


6:30 中津川レストハウス 出発
7:25 吾妻山神社 登山道 起点
11:00 登山道 終点(権現沢との出合・吾妻山神社)
12:15 平坦な台地
13:25 朱滝 落ち口
15:25 中津川へ下降開始
16:40 朱滝

――滝前でビバーク――

6:10 滝前 出発
8:15 平坦な台地
11:20 登山道 終点(吾妻山神社)
16:45 吾妻山神社 登山道 起点
18:00 中津川レストハウス

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