(シャチの)ヒネリ滝

Data 住所 仙北市
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ
田沢湖の南部。国道46号から夏瀬温泉に向かう。玉川の左岸にある登山道で堀内沢へ。廃道を利用し、その後に遡行。シャチアシ沢に入ると険しい高巻きを繰り返す。片道5〜6時間。

コメント
シャチアシ沢にあるヒネリ滝なので、「シャチ」やら「シャチヒネリ」と呼んでいるので、ヒネリ滝と言われてもあまりピンと来ません。シャチの方がインパクトありますからね。

憧れを抱いてどれくらい過ぎたのかもう忘れました。今年(2016年)の秋に単独で行こうかなと先輩方のレポをじっくり読んでいました。
分かったことは
@自分でも頑張れば何とか行けそう
A距離が長く日帰りギリギリ
B時間短縮となる盗伐林道を見つけるのが大変
といった所。

陽の短い秋の季節、複数回挑んでいる方でも日帰りでは日没ギリギリになってる事を考えると、初心で迷いながら向かうならば単独での日帰りは難しい。
最初から一泊で向かえば余裕持って行けるだろうけど大荷物背負って行動するのは面倒。
来年の夏にでも計画立てるかと今年は諦めていたのですが、WATAさんが再訪問する計画を立てていたので迷わず便乗させた頂いた。経験者がいるのは心強い。

堀内沢の取水堤までは車で行けるようだけど、通行止めになっている時が多いようで、調べる時間もないので確実に行ける夏瀬温泉に向かう。
角館方面からのアプローチとなり、踏切を渡りフラットなダート道を進み、夏瀬温泉の一番手前の広い駐車場に停めます。ここはトイレもあるし駐車場の奥が登山道のスタート地点になるので便利です。
すぐに橋を渡り玉川の左岸沿いの登山道を東へ。ちなみに西に行くと抱返り渓谷です。明瞭な登山道でしたが途中から道が消えたり現れたりと朧な道になる。あまり踏まれていないようだけど、とにかく左手に玉川を見つつ歩いていれば堀内沢に出合います。
コンクリの橋を渡って右岸に。ここからはダートの車道になるので歩きやすいです。
もう少しで取水堤という所で車が停まっている。ここまで車で来れたのねーとか話していると「雪田爺だ!」と声が上がる。栃木の滝で有名な滝メグラーが偶然にも同じ日にこのヒネリ滝に挑んでいるとはビックリです。
既に出発しているようで姿は見えない。どこかで追いつけるかしらとワクワクしながら取水堤を過ぎて、ここからは堀内沢に入渓。
次に目指すのは廃道である盗伐林道。まずは右岸の歩きやすい所を選んで進み、右岸に岩壁が出たら渡渉して左岸へと移ったりしながら遡っていく。
やがて右岸に巨木が乱立し、地面をシダが覆う"もののけ姫"に出てくるような幻想的な一角が現れる。この辺りから盗伐林道へと右岸斜面を上がっていくようだと見渡していると雪田爺さんを発見! いつもHPを見させて貰っている有名人に会えて感激です。そしてここからは6人でヒネリ滝を目指す。
さて盗伐林道への乗り方ですが、その巨木とシダの一面から堀内沢を右手に見ながら真っ直ぐ進んでいくと正面に岩壁が現れます。
それに沿うように、来た道を戻るかのように緩やかに北東へと登っていきます。この九十九折りが盗伐林道の始まりとなります。うまく乗れればゆっくりと高度を上げていってやがて平坦な道へと急カーブして道は真っ直ぐ南に進むようになります。
仮にそれが分からなかったとしても、シダの斜面を30mほど強引にでも登っていけば必ず平坦な道は見つかると思います。
完全な廃道となっていて歩きづらい盗伐林道ですが、それでも堀内沢を遡行するよりは断然に早いです。この林道に乗らなければ日帰りは無理だと断言します。最初から一泊予定であれば沢を進むのも良いでしょうが、沢と言うよりは川である堀内沢の序盤は水の勢いが強く遡るのは困難だと聞いています。
殆ど高度を変えずに南進し、軽快に距離を稼いでいきます。1.6km、50分くらい進んで正面に岩壁が見えた所で草斜面を下り堀内沢に戻りました。
ここからは林道というアシストはありません。純粋な沢登りです。何度か渡渉をして歩きやすい場所を選んで進んでいきます。水量と勢いが強く渡渉が厳しいと先人のレポに記載されてましたが、特に危うい点はなく遡ります。
右岸から朝日沢が入ってくるのが見えると、左岸にはテン場が現れます。一泊予定であればここを拠点にするのが良いと思います。あまりにも綺麗なテン場でして、ここに泊まりたくなってしまいました。
次いで左岸からイワイ沢が滝を伴って現れます。ここは要注意。赤ペンキで「シャチアシ」と書かれている大岩が目に付くと思います。これはダミーです。間違いです。この沢を登ってもヒネリ滝はありませんので気をつけて下さい。でもイワイ沢F1も中々カッコいいので見ておきましょう。
ここから400mほど進んでようやくシャチアシ沢との出合いです。
さてここからが本番だ。気合いを入れます。
シャチアシ沢の出合いも滝になっていて、F1は斜瀑。ここは20〜30mくらい戻った所にあるルンゼから取り付いて左岸からの高巻き。落ち口上に下降する所が非常にいやらしい。おそらく崩落してスムーズに戻れなくなったのだと思います。
F2、シャチアシ沢の最大の難所です。噂で聞いていたズルズルの斜面とご対面。パッと見は問題ないかなと思ったけれど、踏んでみると超大有りだと分かります。
中腹までは大丈夫。例え滑ったとしても「アレェー」と取り付き点に戻るだけで怪我はしないでしょう(打ち所悪けりゃ危ないけど)。
とにかくツメがヤバい。ヌルヌルの草付き斜面は危険過ぎる。斜面は角度を変えて滑ったら滝壺一直線だ。太い立木までの5mくらいの距離なのだが掴むものがないからしっかり踏んでバランス取っていかないと簡単に滑落してしまう。
とにかく誰か1人でもそこを無事に突破すれば立木にロープを張って後続は安全に登れる。
今回、この為にナイフ(アイスハンマーは高くて買えない)とアイゼンを用意してきました。 ナイフを地面に突き刺して上半身を確保し、アイゼンで草付き斜面をしっかり捉えて越えようと思ってました。
先行していた、のじやんさんが何も装備を持たず、でも慎重に足場を確保しながら無事に草付き斜面をクリア。そのバランス感覚と滑落への恐怖心を払拭する精神が凄すぎです。
自分は下ろしてくれたロープを掴んで安全にF2を越えられました。
ちなみに右岸の大高巻きでも越えられるようです。
F3は右岸から。最後は岩壁になったけど滑り台のように滑って降りられた。左岸も行けるが一歩が怪しいトラバースがありました。
次いで深い釜の登場。以前はなかったと言ってました。新たに生まれたのか、今日が水量多いだけか。右壁をうまくへつれたけれど滑れば全身ボチャンです。濡れても大丈夫のようにカメラを防水パックに入れてきて良かった。
F4、これがラスト。もうヒネリ滝は見えています。右岸の小尾根を藪コギしながら上がっていくとついに滝前です。
巨大ですよ。スケールの大きさに震えるものがあります。最初は一本で落ちてきて、下部はエビの尻尾のように広がっていて、壮観です。
真正面、右岸、左岸、ヒネリを加えた滝だけあって角度を変えると全く違う形の滝へと変貌するのが面白い。自分的には右岸から見るのが好きだけど、ヒネリを楽しむなら左岸ですね。
そして飛沫を楽しむなら当然ながら真下です。今日は水量が多いのでしょう。何気にたまにヒョングッてくれます。跳ね上がった多量の水玉が自分めがけて飛び込んでくる。愉快爽快、ビシビシ感じる威力を全身で受け止めると、楽しくて楽しくて自然と笑っていて「ヒャッホォウ!」と叫んでいました。

山の中で日没を迎えるのは危険なので、頃合いを見て撤収。帰路のF2では立木から滝壺に向けて懸垂下降。何度もやってる懸垂に抵抗は無いですが、滝壺に直接降りるのは始めてでやや緊張。
ドボンと滝壺に入った後、プカプカと浮かんで足が着かずに焦ってしまった。ロープを引っ張らないとダメよとアドバイスを頂いた。勉強になります。
盗伐林道を終えると日没を迎えヘッドライトを装着。暗い中で取水堤に到着。ここから夏瀬温泉まで1時間掛かるのですが、雪田爺さんの車に乗せて頂いた。本当にありがとうございます。

今回はWATAさんの企画に便乗し、道中では誘導して貰い、ロープを出して頂いたりと先輩方に大変甘えてしまった滝巡りとなった。お陰で憧れのヒネリ滝に出会えて感激です。
思い起こす事はない。満足だと写真を眺めていてハッとした。腰を捻った記念写真を撮るの忘れていた。
シャチヒネリでコシヒネリ、それを目標にしていたのに……。いつか再訪しようと誓った次第です。

6:00 夏瀬温泉 出発
6:40 堀内沢を渡渉。右岸へ
6:50 取水提 堀内沢入渓
7:15 盗伐林道に乗る。
8:10 堀内沢 再度入渓
8:40 朝日沢 通過
9:10 イワイ沢 通過
9:35 シャチアシ沢 F1
11:30 ヒネリ滝 到着

他写真
訪問日 2016/10/15

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