不動滝
(称名川 一の谷)

Data 住所 立山町
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ 百選「称名滝」の上流。大日岳の登山道を利用し、大日平山荘の脇から藪こぎの後、谷筋を下りて称名川を遡る。右手から入る支流の一の谷に滝はある。徒歩6時間前後。
コメント この感覚は本当に久しぶりでした。滝を見て、飛沫を浴びて、「滝ってすごい……」と純粋に興奮した若き頃。その衝撃や感動がきっかけとなり、今も滝を見続けている。
こんなお馬鹿なHPをご覧になってる貴方も滝好きなのでしょう? だとしたら、あったはずです。滝巡りを始めるきっかけとなった滝と感動が。
この不動滝と対面した時、そんな衝撃がフラッシュバックされたかのように戻ってきました。
「初めての興奮」を再び得られるとは夢にも思わなかったし、二度と得られぬモノだと分かったいました。それなのに、この不動滝には滝の素晴らしさを再度教えられました。

待ちに待った今年のビッグイベント。WATAさんのイベントタイトルをお借りすると、
『"F" Dead or Alive』
その言葉通り、最強であり、そしてかなりしんどい行程でした。
大日平山荘に向かう登山道を利用するために称名滝の駐車場に停めます。夜間はゲートが閉まっており朝の6時に開門(夏以外は7時)なので、その時間に合わせて入場。
立山は流石の人気ですね。第一、第二駐車場はすぐに埋まってしまって、人も車も沢山あってビビります。驚いたのはトレランする人の多い事。20〜30人は僕らの先に登って行ったと思うけど、その半分はトレランの格好だった気がする。趣味としてこれほど確立されているとは思いませんでした。
まったり準備をして7時すぎに出発。今日は長い1日になります。
称名滝に向かう車道を歩き、展望台が見えてきたぞって所で登山道の開始です。
称名滝の上に向かう訳ですから、350m以上登るのは確実で中々の急登。早速息切れするし汗出るし、しんどい登り。でも整備されている道ですから安心です。
牛の首まで登ると対岸にザクロ谷が見え、更に登っていくと平坦な大日平の湿原が現れます尾瀬のように木道になっていて開放感バツグン。登山って気持ち良いねと思える一時で、ここは歩いていて楽しいものです。
さあ休憩ポイントの大日平山荘に到着。ザックをドサッと下ろしてベンチに座って一息入れる。山小屋って凄いのね。自販機あるしカップラーメンも食べられる。もちろん割高ではあるけれどその存在が有り難い。普段行ってる沢なんて人に会うことが珍しいですからね。そんな訳で350円の三ツ矢サイダーを購入しました。冷たくてオイシーです。
山荘の裏手には不動滝の展望台があります。午前中は逆光でよく見えないけれど、下降ルートの確認。称名川に下りるための右岸斜面は緩やかで、これならば行けそうだと安心感を得られた。
いざザックを担ぎ、気合を入れます。

山荘を出て大日岳に向かう登山道の木道を進む。ほんのちょっと行くと湿原が広がるので、その手前の右手にある笹藪に入る。
目指すは下降路となる谷筋。豪雨時には川となって称名川に流れ落ちる水の為の道。ここだけは藪は自生しておらず、スムーズに下りられるはず。
最初こそ腰あたりまでの高さの笹ですが、40〜50mも進むとあっさり背丈を越えていきます。物凄い密度で掻き分けるのは疲れるし、5mも仲間と離れると存在が消えます。声を掛けたり、なるべく離れないように一列になって東へ東へ。
途中から笹だけでなくハイマツも参加してきて、より一層進行を妨げてきます。笹だけでもしんどいのに更に太く固いハイマツには手を焼いて思うように進めず時間だけが過ぎていく感じでイライラしました。
尖った枝に刺さって頭部から出血というトラブルがあったので、ヘルメットを装着する。落石から身を守る為のヘルメットだと思ってたのですが、このような事故もあるのですね。気が引き締まりました。

藪が邪魔して一向に進まない。体力と時間は奪われ、距離は稼げない。藪は進行方向を妨げるように迫ってきている。向かい風ならぬ向かい藪だ。色んな所で藪こぎをしてきましたが、今までで一番密度の高い藪には本当に辟易。
ようやく下方の藪が薄れて、何となくだけど水が流れたような跡が見えた。そしてその跡を辿って下降すると岩がゴロゴロと積まれた谷筋となった。木道から谷筋まで直線距離では250mくらい。宮崎県の綾の照葉大吊橋と同じ長さ。普通に考えれば10分も掛からないはずだけど、実に1時間14分も費やしてしまった。枝を折っては体を突っ込み進んだけれど、あまりの酷さで心が折れなかったのは仲間がいたお陰かな。単独では引き返していたと思います。
谷筋を下っていく。藪がなくて快適だし、谷筋の脇にある藪を掴んでバランス取れるので滑落の心配もない。さっきまで敵だった藪が今度は味方になってくれています。
中間辺りでは大岩があって、登り返しが面倒かなと思うところには安全の為にロープを下ろしました。慎重に行動すればロープは無くても何とかなるレベルです。
あともう少しで称名川だという所の岩の狭間から水が湧き出ていました。岩清水です。非常に冷たくて、まろやかで疲れが吹っ飛ぶ旨さです。

無事に称名川に着地した。下流を見ると称名ゴルジュの頭が見える。そしてそこから霧が吹き上がっている。あそこでは水流が激しくぶつかっているのだろうと想像出来る。
僕らが向かうのは上流だ。称名ゴルジュを終えた先は平坦であり穏やかな様相で安心して歩いていける。水深は膝に掛かる程度の深さ。水流はやや強めかな。雨が降れば途端に修羅と化すのだろうけれど、今日は優しい。
歩きやすい所を選んで進んで、渡渉の時はスクラムさせて頂いた。体の線が細い自分は水流に持っていかれるイメージが拭えず苦手意識を持っています。電車では吊革を持ってないと安心して立っていられないようなバランスの悪さなので、肩を組んでのスクラム渡渉はほんと助かります。

そして不動滝が目の前に。
不躾で節操のない自分が、この滝と対面した時に出た言葉は「観音様?」でした。不動滝なのにね。
滝って"V"や"U"の凹んだ所に落ちているケースが多いと思います。水流が岩盤を削っていったんですよね。
でもこの不動滝は凸の膨らんだ所に滝があるんです。すっごく珍しいと思う。それでその岩盤の部分が千葉県の鋸山にある岩に彫られた百尺観音みたいに見えたんですよ(という話を同行の○でんさんに言ったら、「もっこり滝」と命名してました。流石のセンスに感服ですwww←ファンになっちゃった)
滝の流れで現れるご尊顔。不動明王は怒った顔だけど、ここは違う。慈愛に満ちてる気がして、だから観音様のように見えたんですよね。
左右には岩盤が広がっていて壮大な景観を作っている。滝の落差は100m以上は確実で、更に横幅も10m以上はあって、とてつもなく巨大な水柱が直立不動で僕らを見下ろしている。
その存在感と迫力には「滝ってすげえや」という至極シンプルな言葉でしか言い表せない。
全国各地にある不動滝。ここは総本山だと思います。

さあ滝を楽しもう。周辺はゴツゴツの岩ばかりで寝転がるような場所ではないですが、遮るものがないのでどこからでも見える開放的な空間です。
右手から近づいてみるとラッキーな事に虹が出ている。左岸斜面を上がっていくとより大きく見えて嬉しい。
接近を試みる。音は優しく心地良いくらい。素晴らしいミスト。肌に刺さってちょっと痛いくらいの飛沫、痛気持ちいいってやつです。大きく息を吸うと細かな水の粒子が入ってきてむせてしまった。ああ、こんな風にむせるくらいの飛沫は久しぶりた。涙が出そうになってしまった。
気付けばハイテンションで、一度浴び、二度浴び、やめられない止まらないで三度浴びでしまった。

帰りの時間が近付いてきて、荷物を片付けながら滝を横目に見る。帰らなきゃいけないのか。すごく寂しい。
途中、何度も振り返った。やっぱ凄い。改めて写真を撮りたくなるし、飛沫で濡らして貰いたくなる。
思い返せば昨今は滝から去る時、別れの挨拶をして背中を見せたら振り返る事はあまりなかった。
もっと滝前に居たい、強い未練を残して去るのも滝に感動を覚えた若者だった頃の行動でした。

帰路の谷筋の登りは中々に疲れました。後半は藪が迫ってきて、それを掴んでのゴボウの登りに握力を使い切りそうになりました。
谷筋を終えてからの藪も当然ながら面倒だけど、帰りは追い風ならぬ追い藪になるのでわりかしスムーズに掻き分けられた。
そして木道、次いで大日平山荘に到着。展望台から夕日に染まる不動滝を望む。明るい時間に登山道に戻って来れて一安心。
あとはヘッドライトを点けて明瞭な登山道を下るだけ。書くと簡単だけど、とにかく長かったなぁ。足の裏にマメが出来て痛かったし。
無事に駐車場に到着。夜間はゲートが閉まっているのでこのまま車中泊。車内に入ってしまった虫に悩まされましたが疲労には勝てずすぐに寝入ってしまいました。

まとめ
@ 大日岳の登山道の拠点となる称名滝の駐車場は夜間通行止めのゲートがあり、夏は6時にならないと入れないし、19時以降は出れない(7・8月以外は7〜18時)
A 藪こぎが最大の難点。
B 藪地帯に突入後、谷筋を見つけるまではほぼ東に移動し、急斜面を避ける。
C 大日平山荘に宿泊の予定にすれば安心。
D 水の補給は山荘と谷筋の終盤の岩清水で確保出来るので無理に詰め込む必要はない。

7:15 称名滝駐車場 出発
7:30 大日岳登山道 入口
8:45 牛ノ首
10:20 大日平山荘 休憩
10:45 出発
10:46 笹薮 突入
12:00 谷筋に乗る
13:00 称名川 入渓
13:35 不動滝 到着
15:40 出発
16:00 谷筋
17:40 笹薮
18:20 大日平山荘 休憩
19:00 出発
20:20 牛ノ首
21:45 大日岳登山道 入口
22:00 称名滝駐車場 到着

他写真
訪問日 2016/08/06

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