不動滝(滑河内)

Data 住所 早川町
評価(5段階) ★★★★★
難易度(5段階) ◆◆◆◆◆
現地へ 身延山の北西部。県道37号の滑河内の掛かる不動橋の上から仕事道を利用し遡っていく。ゴルジュや滝の越え方で到達までの時間は大幅に変わる。
コメント 達也「きれいな直瀑だろ」
達也「ウソみたいだろ」
達也「不動滝なんだぜ、これで……」

遂にお目にかかれた夫婦の形態を持つ滑河内の不動滝。
2015年に挑み、ゴルジュや滝の高巻きに苦労して、残り200mという所でタイムアップ、無念の帰宅(悔しいから甲府でラーメン食ってやった)
そして2016年、相見える滑河内。戻ってきたぞコノヤロー。

小さな不動橋を通り過ぎると大きく左へ沢に向かって上がっていく砂利道をほんの少し走ると堰堤の横の広場で終点になるのでそこで駐車。
途中までは導水施設への仕事道がご丁寧に設けられているのでそれを有り難く利用します。新設された橋を渡り、昨年と同様に鉄骨の手摺りを掴みながらサクサクと進む。
導水施設を通り過ぎて、堰堤の上で仕事道は終わり、ここからは沢を進んで歩いていきます。ここまでの滑河内は導水施設に水を奪われていたので、仕事道から見える水の流れはチョロチョロで、この先大丈夫かと不安になりました。でも堰堤の上からは十分な水量が復活しますので不安は取り除かれます。「安心して下さい、流れてますよ!」と滑河内は言ってポーズを取っています。
この沢は「滑」の名称を貰っている通り、よく滑ります。ステルス等のゴムソールは踏ん張りが利かなくて大変そうでした。かく言う私はフェルト底であり、あまり滑りはしませんでした。滑河内に対してはフェルトの方が相性が良い感じです。
水の中を歩いていくのはかったるいので逃げられる所は岸上に積極的に逃げて歩きやすい所を適当に進みます。
やがて釜を持った滝が現れます。ここは左岸の枝沢の脇にロープが垂れ下がっているので安易に利用して高巻き。
そして次に出現するのが、難所。ゴルジュでございます。
ここをどうやって越えていくかが問題です。
熟練の沢ヤさんは当然ながらゴルジュの中に突撃する模様。自分はヘタレなので簡単に巻きを選択します。
2015年はゴルジュのだいぶ手前にある左岸小尾根に踏み跡が伸びていたので、それを利用して登って行きました。しかし途中から踏み跡がなくなり、それでも何とか進める所を選んでゴルジュ上に出れました。結果、超々大高巻きとなってしまい、2時間ばかり費やしてしまいました。
2016年も同じ事をやってはまたも時間だけが過ぎてしまうので、小尾根を通り過ぎそのまま沢を進みゴルジュ前まで来ました。
中々絶望的な景色が広がっています。深い釜の奥にはツルツルの岩盤に覆われた滝が見える。さあどうやって越えようか、無理なんじゃね? という諦めが簡単に出てくる。
ふと左岸の急斜面を見ると遥か上からロープのようなものが見えた。あれは本当にロープか? 近付いて手繰り寄せてみるとピンと一本の線が引かれた。
おいおい、ここを上がって巻いていくのかい? マジすか学園っすか。引いてしまう斜度です。とりあえずロープ掴んで登っていくと意外と足場はしっかりしてる。安易に残置ロープを頼るのは危険ですけどとりあえず問題ない感じなのでそのまま上がっていく。
30mは上がったかな。まだロープは先に伸びていて、ついでに高度感から恐怖心が出てくる。ここから木の根を掴んでよじ登っていくのだけど、もしも掴んだ根っこから手が滑ってしまえば奈落に真っ逆さまだという恐怖に支配されて萎縮してしまい、自分は先頭を離脱。あっきーさん、パンダさんが道を切り開いてくれました。
自分のチキンっぷりには情けなくなります。
BTTFのマーティ・マクフライが「誰にも…腰抜けとは言わせない!」と怒ってましたが、僕はチキンです。打ちのめされました。
木の根を上がり更に高度を上げていくと岩壁が立ちはだかる。昨年はこの岩壁の上を歩き越えているのだと分かる。
ここからは岩壁を右手に見ながらのトラバース。草付きで支えになるものが少なく、更に斜度はきつく遥か下まで望める状況。足を滑らせたらどこまで落っこちるのか、そう想像すると震えるものがあります。
トラバースを終えると急斜面のザレ場を斜め懸垂で沢に向かって下りて、最後は岩壁をまたも懸垂で下りてゴルジュ上に着地。こんなに緊張を強いられる高巻きは百四丈の滝以来かも知れない。
ゴルジュの先はわりかし穏やかで気ままな沢登りを1時間ほどで、次の難所、三段の滝が見えて来ます。
ここは右岸を小さく巻くのが正解ですが、昨年はこの巻きの模索に相当の時間を費やしてしまい、その結果タイムアップになりました。
今回はもう巻き道が分かっているのでノンストップで越える。ここも先ほどのゴルジュ高巻きと同じで急斜面だし崖上の際を進んでいくのでかなり怖いです。
あともう少しで不動滝のはず。次に現れるのは鉄分たっぷりの水を噴き出している岩壁と深そうな釜。
前回はここで13時を過ぎて、明るい内に帰れなくなるからとギブを決断した場所。今回はここを通り抜ける。まだもうちょっと時間の余裕はあります。
オレンジ色の岩壁から見事に噴き出す水はなかなか見物です。同行のお○んさんが「潮吹き滝」と何ともエロい命名をしていました。素晴らしいネーミングセンスに脱帽です。
その潮をビャシャビシャと顔面に浴びながら(ごちそうさまです!)通り過ぎて、次は8m程のすり鉢状の滝。ここは左の草付き岩盤が階段状になっていて岩壁沿いに進んでいくと越えられる。でも越えてから滝頭に下りるのだけど掴むものがなくて、matsuさんがハーケン打って支点を作りロープを下ろしてくれた。
で、次は6mと4m程の二段の滝。これを越えれば不動滝があるはずだけど姿は見えない。時は13時を迎えようとしていて、引き返さなければ怪しい時間になってきて焦りと諦めが交錯し始める。
6m滝は左壁をよじ登って越えられた。が、次がダメ。4m滝は越えられるイメージが持てない。ホールドが見当たらない磨かれた岩盤には手も足も出ないので一旦戻る。
こうなったらもう左岸からの高巻きしかない。どれだけ時間が掛かるか分からないけれど諦めるのは嫌なので登ってみる。
すると途中から踏み跡が現れ、それに従い上がっていくと不動滝の凛々しい姿が見えるではないか。
時間に追われ、悲壮感たっぷりのメンバーが歓喜の声に包まれる。
今泣いた烏がもう笑うってくらい雰囲気が変わった。本当にあと少しだ。
仕上げに10m程の岩壁をニタニタと笑いながら懸垂下降して滝前に到達!
男気を感じられる一本の直瀑はそれはもう堂々たるもの。瓦割りを行う空手家の振り下ろす拳かのように、とても見事にまっすぐに滝壺へ突き刺さる落水。その威力を持って生まれる飛沫は両岸に聳える高い崖の空間で舞い続ける。
それだけでも十分立派であるが、この空手家には嫁さんが付き添っているのだ。そう夫婦滝の形態になっているのだからたまらない。
三歩下がって男を立てるような慎ましい奥様を脇に添えた絵になる夫婦がここにいる。
押忍! 会えて感激です! 飛沫を浴びながらシャッターを切る。カメラが壊れないように適時タオルで水滴を拭わないといけないので忙しい撮影だ。
夢中になっていると時間が過ぎるのが驚くほど早く、既に14時を回っていた。
もう帰らないとヤバい。というか山中で夜を迎えるのは確定だ。問題はどこまで明るい内に進めるか。
残置していたロープを利用して登って回収。また新たにロープを下ろして懸垂下降。チキンっぷりを発揮した高巻きの下りもやっぱり怖く、それでもなんとか明るい内に難所は越えられてホッとした。
その後はヘッドライトを点灯させての行動。暗闇での沢歩きはなんとも難しい。ルートなんぞ覚えていないし、どこを下っていけば安全なのか暗くてよく分からないし、危険性があるわけではないけれど歩みは相当遅かったです。
やがて堰堤が見えてきて、仕事道に乗って一安心。無事に車まで戻ってこれたけれど、もしも同じコースを10回行ったとすれば1回はどこかでミスって滑落するのではないかと思えるほど怖くて危ない高巻きでした。
自分1人では到達なんて出来ない恐ろしい沢でした。皆さんに助けられて滝に会えました。
仲間に感謝です。ありがとうございました。

5:40 駐車場 出発
7:10 ゴルジュ 下
10:00 ゴルジュ 上
11:00 三段滝 下
11:40 三段滝 上
11:45 潮吹き滝(←○でんさん命名)
12:15 二段滝 下 
13:20 不動滝
14:10 出発
15:00 潮吹き滝(←おで○さん命名)
15:20 三段滝 下
18:30 ゴルジュ 下
21:30 駐車場 到着

他写真
訪問日 2016/06/18

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